179 横断歩道
今から家族で二泊三日、出かけるので予約投稿になります。
もしかしたら投稿がない日もあるかもしれません。
「あっ……。」
少し強めの風が吹いて、道の向こう側を歩いていた人のハンカチが飛んできた。
「僕届けて来るよ。」
そう言って僕はエメラルドグリーンのハンカチを拾い、道の向こう側の人に届けに行った。
僕が届けに行った後、七不思議二番に挑んだ組が帰ってきていた。
「ただいまー。花子さん超強かった。」
「お帰り佐藤くん。鳩はちゃんと役に立ったようね。」
「ええ。ありがとうございます。」
と筮さんと佐藤の会話が聞こえる。
僕は小走りで落とし主の女性の元へ向かった。
「これ、落しましたよ。」
女性はありがとう、と言ってハンカチを受け取った。
「夜道は危ないから、すぐ帰るのよ。」
「はい。お姉さんも、気を付けて。」
女性はにっこりと笑って眉を下げた。
「私は今からバイトなのよ。そこにあるコンビニのね。」
そう言って女性は歩いて行った。
大人って大変だな、と思いながら、僕も道路を渡った。
車が来てるか確認もせずに――。
もちろん、横断歩道がないわけじゃない。バス停の近くにある。
でも車が来ていなかったから来るときはそのまま渡った。
「陸! 危ない!」
突然、悲鳴に近い声が聞こえて、右側からのライトに気づいた。
学校の方から、慌てた佐藤が走ってきているのが見える。
でも僕は、その場に呆然と立ち尽くしていた。
――
ドンッいう鈍い音がして。
目の前で、友達が倒れていて。
その友達から、鉄のにおいがしてくる。
僕は、その近くで、しりもちをついていた。
胸のあたりに、まだ押された感覚が残っていた。
その時また、ズキッと、頭が痛んだ。
『陸! 危ない!』
――ドンッ
まただ。
昔一度、同じ経験をしたことがある。
はぁ、はぁ、と自分の荒い息が聞こえて、視界が揺れていた。
佐藤を轢いた大型トラックは、すごい勢いで逃げて行った。
ひき逃げ。
また頭が痛んで、幼い自分の泣き声が聞こえた。
目の前に、同じ情景が広がっている。
今の情景と、昔の情景が、同時に浮かんで、どっちが今で、どっちが昔かわからなくなる。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……。」
他のみんな。筮さん、兄さん、千代さん、紗代さん、優斗さん、葵、光莉、その七人が駆け寄ってくる。
その中で、学校から出られない江見さんだけが、正門に掴まって心配そうにこちらを見ていた。
「陸! 大丈夫か!?」
「兄さん……。」
「佐藤くん! 大丈夫!?」
「千代さん……。」
佐藤……。
どうして、僕をかばったの? いやだ! 死なないで! おいていかないで……!
さっき、僕が飛びなさなければ――!
『おんなじだ。』
頭の中に、そんな声が響く。
目の前で、兄さんたちが佐藤の心配をしている中で、この声だけが、頭の中に響いた。
『お前は俺とおんなじだ。』
だれ……。
ナ「佐藤くんっ……!」
うわっ、号泣。
ナ「引かないで! そう言えば、『いやだ、死なないで、おいていかないで』は、前にも一度聞いたことがあるような……?」
気になるなら、0話から読み直してみれば。一度書いてるフレーズだから。
作「でも江見さんが学校から出られないってのが気になるな。」
え、そうなの?
白「確かに! 私も気になr――」
お前もうしゃべるrrrrrな!
白「巻き舌できたの!?」