175 稲妻と祓い屋
前回のあらすじ。
遂に花子さんの鎖に捕まってしまった佐藤。
優斗、光莉、千代は動けない状態。絶体絶命としか言いようのないこの状況でも、佐藤は生への執着で誰かに助けを求めた。
あ、やば……死――
「……あ゙アァぁぁああッ!」
佐藤が死を悟った時、悲鳴に近い叫び声が聞こえた。
千代だ。
三人の中で、もっとも重症の千代が走り、花子さんに体当たりした。
花子さんにぶつかった瞬間バチッと何かがはじけた。
――バチッ……バリバリバリッ!!
電気。青い稲妻。
この稲妻は、天照が異世界への入り口をこじ開けたときのものと同じ色をしていた。
――そして、効果も。
『ヴア゙ア゙ァァぁあぁあ゙ぁ゙ァァァァアッッ!!!! あづいっ! 痛い! お前……お前……ッ!!』
祓い屋の敵は、怪異だけじゃない。
――妖にも同様に、稲妻の効果は訪れる。
「ウッ、アアァァ!!」
鬼の妖である佐藤にも稲妻は容赦なく襲う。
佐藤は自分を抱きしめるようにしながら横向きに倒れ、小さくうずくまる。
人間に寄せていた爪が、鬼特有の長い爪に変わる。
爪が肌に食い込むが、稲妻とは別の痛みがないと、おかしくなってしまいそうだったから。
説明をしようか。
思い出してほしい。優斗が三途の川を渡りかけたとき、そこにいたのは千代、紗代の母親だった。
母親の名は、『風雅』美湖。
林間学校で会った、狼の群れが見えない祓い屋の名は――
『風雅』輝――
――はいはい。若のお目付け役の、風雅輝お兄さんですよ~。
そんな風雅家のもとに生まれた千代は、もちろん祓い屋の能力を持っているのだった。
あの眼鏡は、母親が娘を守るために渡したもの。
風雅と言っても祓い屋の端くれ。紗代に、祓い屋の能力は受け継がれなかった。
眼鏡を取ると空気が重く感じると言っていたが、それは怪異が見えないだけで気配を感じているという事だった。
そう。怪異が見えない――。
だが、一度怪異を呼びだしてしまっているので、眼鏡を手放せば怪異が見えるようになるだろう。
『グッ……お前の顔、覚えたぞ……――。』
最後にそう言い残して、花子さんは黒いけむに巻かれ、消えていった。
しばらくして、光莉も起き上がり、優斗の心臓の痛みも引いたようだった。
だが、佐藤の痛みは花子さんにやられたのではなく、まだ痛みも引いていない。
(痛みはまだ引かない。だが、最初よりはマシになった……! 助かったはずなのに……この痛みはなんだ?)
佐藤の頬を一滴の汗が伝う。
大して動いてもないのに息が切れていた。
口元にかかる前髪が、呼吸に合わせて揺れている。
爪が食い込んだ部分から、赤い血が流れていた。
その二つが、自分は今ここにいる、と実感させた。
ナ「衝撃の事実!!」
白「千代さんが祓い屋の能力に目覚めてしまった……。」
開花した才能。その才能は、どのような苦悩を産むのか――
作「そんなことよりさ、今日昔の弟の動画見てたんだけど……」
急だね!
作「お母さんのスマホ借りてね。そしたら、弟は風船を二つ膨らませたかったみたいで、加える部分が唾でテカテカに輝いてる風船を加えた弟が、フ~って、力を込めて風船拭いたら、スポーンって風船が飛んでっちゃって、えへへ……って弟が笑うから面白くてかわいくってもう……。」
分かる。
白「私は弟居ないから分からな――」
ナ「ガチで分かる!! 弟ってかわいいよね!!!」
白「被せないでもらっていいですか!?」