171 『返して』
『返してえぇぇぇェェエエェ!!!!』
後ろから聞こえてきた悲鳴のような声に驚き、振り返る。
壊れた機械のように、欠陥的な声。
「花子さん……っ!」
佐藤は一歩後ろに下がり、逃げようと体の向きを変えた。
その時、とても小さかったが、苦しそうな声が確かに聞こえた。
佐藤は視線を少し下に向ける。
そこには、千代、光莉が倒れ、身を縮めていた。
呼吸は浅い。光莉もつらそうだが、千代の方が苦しそうに歯を食いしばっていた。
そして優斗は、しゃがみ込んでいた。
心臓のあたりをギュッと掴んで。
何が起きた?
なぜみんなは動けないのに俺だけ動けてる?
――ジャリ……ジャラジャラジャラッ!
鎖の音。
闇から響くその音を聞き、佐藤は身をかがめる。
予想通り、花子さんが持つ鎖が飛んできた。
アレに捕まれば、首を絞められて死ぬ!
――コツ……コツ……コツ……
足音。おそらく花子さんのものだ。
見失ったのだろうか? それとも逃げられないと自負しているのか。
悔しくもその通りだ。
優斗、千代、光莉の三人が動けなくなっては、見捨てて一人だけで逃げることもできない。
――ジャリ……
また来る!
もう一度聞こえた鎖の音を合図に鎖を避ける。
このまま、別の場所まで誘導できれば……!
――ジャラジャラジャラッ!
なんかこの鎖……妙に長いな?
先ほど避けた鎖は、ずっと飛んできていた。
「……?」
不思議に思い、少し手を近づける。
その瞬間、後ろに気配を感じた。
驚き、勢いよく振り返るが、そこには誰も――
『返して。』
「――ッ」
後ろから声がして、また振り返る。
その時、死を感じ取ったせいなのか、すべてがスローに見えた。
後ろに立っていた花子さんは鎖を大きく振りかぶっている。
まずい。今から動いても間に合わない。
――シャラ……
鎖が、佐藤の体を無作法にグルグルと巻いていた。
早い。見えなかった。
どうする? このままだと殺される!
『死』その一文字が頭に浮かんだ瞬間、フワッと上から、ロープをかけられた。
花子さん。
首を絞めるつもりだ。
鎖は巻かれてるだけ。動けないわけじゃない。
手を動かして、首を絞める縄に手をかけようと、動かす。だが次の瞬間には、それすらも阻止されていた。
全身に巻かれている鎖が、佐藤の体を締め上げた。
これでは動けない。加え痛い!
肌を焼くような鉄の痛みに、声をあげる事すらできない。
助けて……誰か!
ナ「どうして佐藤くんしか動けないんだ?」
だ、だ……だからどうしたというのだね。
白「ね? ね……ねえ、じゃあどうして優斗さんだけ他二人とは苦しみ方が違うの?」
作「の……のりっておいしいよね……。」
ナ「どうしたのみんな……。」
な……ナレーターさんもあの場にいれば倒れてたと思うよ。白銀は死んでたかも。作ちゃんまんも……倒れてたね。
白「ね……ねえなんだ私だけ『ね』で始まらなきゃいけないの!?」
作「の!? の……のりは歯にくっつくと取りづらいよね……。」
※しりとり中