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170 眼鏡の記憶


 噂が物騒になってる!


 気持ちは号泣中だ。だが泣いてる暇はない。


「キャアァァァァ!! なっは、花子さん!?」


 光莉が悲鳴を上げる。

 その隣で優斗が千代を地面に下ろしていた。


 そして二人は花子さんを遠い目で見つめた後、逃げるように猛ダッシュしていった。

 どこに出しても恥ずかしくないほどの、一目で分かる猛ダッシュだった。


「ちょっ、先に逃げッ!?」


 先輩二人が後輩を捨てて逃げだしてる!

 まあ仕方ない。自分の命は自分で守る。小学校で習うような当たり前の事。


 佐藤は振り返り、光莉に叫ぶ。


「魔法! 魔法でアイツぶっ飛ばして! そのすきに逃げる!!」


「は、はい! 先輩!」


 光莉が花子さんに向かってバッと手を伸ばす。

 暗くてよく見えないが、風が吹き、花子さんを飛ばしていた。


「よし!」


 光莉はガッツポーズをして走り出す。


 佐藤と光莉は全力で先に逃げた先輩二人を追う。




 先輩二人に追いついた光莉は、千代の持っていたロザリオがないことに気づいた。


「千代さん、あのロザリオどうしたんですか?」


「ああ、あれね……。」


 千代はロザリオの事を思い出す。


  逃げてる途中・・・


(これ全然効果なかったなぁ……。)

 千代は開いてる窓を見つける。

 数秒考えると、何か悟ったように無表情になる。


(よし、捨てよう。)


 ポイッ




「………………。」


 千代は黙り、渋い顔になった後、光莉から露骨に目をそらした。


「……効果なかったから捨てた。」


「捨てたんですか……!?」


「ちょっとそこの二人~? さっさと解決法見つけるよ~? じゃなきゃ死――」

「わざわざ笑って言うことないでしょ!?」


 千代が笑っている佐藤に突っ込む。

 その後、カタッと固いものが落ちる音がし、千代はあ、と声を漏らした。


 そこに佐藤が声をかける。


「どうしたんですか?」


「いや……。」


 ――眼鏡が落ちた。それだけ。


「さっき壁にぶつかったときに壊れたのかな……。」


「ずいぶん古そうですよね。買い換えないんですか?」


 千代は眼鏡を拾うが、佐藤の言葉を聞いて動きを止めた。

 暗い顔になり、眼鏡を大切に拾い上げた。


「……この眼鏡は、お母さんの形見なの。死ぬ間際に、渡された物。大切に扱ってたみたいで、少しねじが緩んだりはしてたけど、綺麗だった。まあでも、私もお母さんも、目は悪くないから、伊達なんだけどね!」


 壊れた眼鏡のレンズ越しにニコッと笑って、立ち上がる。

 眼鏡についた埃を落として、少し、悲しそうに微笑んだ。


「なんでか知らないけど、この眼鏡を肌身離さず持っていなさいって再三言われたんだけどね。……そのせいか、眼鏡をはずすとなんていうか……空気が重く感じるの。お母さんが怒ってるのかな……。」


 千代は眼鏡を撫でるように優しく触った。


 佐藤はその話を聞きながら、落ちていた眼鏡の破片を拾った。

 眼鏡にチョンッと触れると、眼鏡が静電気のようにパチッと弾けた。


 ……何だ? この感じ……昔触れたことあるような……?


 佐藤はそのことを少し疑問に思ったが、念のため、落ちていることを千代に言うだけで、拾いはしなかった。


白「母の言葉って重いよね……私はあんまり母上の言いつけを守ったことはないけど……兄は言いつけをよく守ってた記憶があるよ。……昔、破ったことがあるらしいけど。」

ナ「そうなの? 俺はおふくろの言いつけを守ったことはないよ? ……俺の親は、俺を産んだ時に死んじゃったしね。」

 ……ナレーターさん。今、俺にとって両親よりも大切な人がいるからねって言おうとしたでしょ。

ナ「ウッ! ……何で分かるの?」

作「私は、お母さんが居なかったら今頃死んでたな……きっと。冗談抜きにね。」

 ………………いっちょ前に感傷に浸れるようになっただけよかったね。泣きそうになる前に思い出すのをやめなさい。

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イイネ等、よろしくお願いします。 え? なぜかって? しょうがないなぁ、そんなに言うなら、教えてあげないこともないですよ。 モチベにつながります。
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