167 えみの選別 章終わり
「な、今の一体どうやって!?」
雑草のせいで見えないけど、紗代さんは何とか避けたようだ。
「え? ああ……まあそこは、あなた方で考えてください。」
口調からして、絶対笑ってる!
「まあとりあえず――動けないようにだけ、しておこうかな?」
えみさんの三日月形に歪む顔が簡単に想像できるのは、なぜだろうか。
しばらくして、悲鳴が聞こえてきた。
「……ヤダッ……! ヤダ! ヤダ!! ヤダヤダヤダ! イヤッ! 来るなッ、来るな――イヤァアアァ!!」
僕たちは、動くこともできずに、その悲鳴を聞いていた。
紗代さん……!
「まずは一人。さぁて、次はどの子を狙おうかなぁ~!」
わざわざ、こっちに聞こえるような声量で言っている。
その時、えみは考えていた。
(うーん。やっぱり、面倒そうな人からお片付けした方が時間が無くても後々楽になるよね? ちょちょさんに探しに行ってもらって、さっきみたいに飛んでいったほうがいいのかな? でも、そうするとカラクリを見抜かれる可能性があるよね……。)
えみは少し顔をあげ、顎に手を当て、眉を顰めて考える。
四歳児のぴちぴちの肌は、皺ひとつなく水をもはじくような艶がある。やっぱりこういうとこは死ぬのが子供の状態で良かったなと思うポイントだ。
その時、えみの顔は暗くなり、下を向く。
陸がいる方向を雑草越しに睨む姿は、やはり大人だ。
(――やっぱり、人間じゃなさそうな人からがいいかな?)
そのためには、早くこの草むらから出よう。
日が沈むまであと……十分くらいかな?
えみは紗代に背を向けて歩き出す。
十分って事は……えーっと、一分が六十秒で……。
二分が……? 何秒なんでしょうか。ここに七番様が居ればすぐに教えてくれるのに……もう! わかりません!
五番が七不思議の六番ならこのくらいパッと計算できないと恥ずかしいよ、とか言うから!
それにしても、今の五番の物まねは少しうまくできました。これからは暇つぶしに物まねの取り入れてもいいかもしれません。一人でできますし。あ、でも、五番は関西弁? ってやつなので失敗かもです。
「みぃーつけた。」
ベンチと木の陰に隠れていた葵の後ろに、えみが陸の時と同じように移動しようとする。
同じように隠れている方向に手を伸ばし、何かを引っ張るように飛ぶ。
とその時、木がたくさん生えていてちょっとした林のようになっている方向から、火が飛んできた。
(――え!?)
その炎の塊は現在空中にいるえみに命中。
女児の体であるえみは軽く、簡単に吹っ飛んだ。
炎が飛んできた方向にいたのは、筮だ。
「……反撃開始ね!」
ナ「筮さんの反撃タイムキター!!」
白「お待ちかねの、ね。えみさんは強いやつから潰していこうとするところは頭いいけど、計算ができないところは年相応だよね。まあ、中身おばあちゃん(自称)だけど。」
教えてくれる人は七不思議七番くらいしかいなかったからねぇ……。そんな事よりこの前漢字五十問テストの話したじゃん。
作「ちょっと話変えすぎ。で、点数どうだったの?」
十点。
ナ「低ッ!! ……まあ、最高でも十二点だったから仕方ないか……。」
で、それを母親に見せたら――『意外と書けとるやん』って驚きつつも褒めてきたの! うれしいようで……照れくさいようで……でも、なんてもっと点数低いと思ってたのー!!?
白「まあ……仕方ないでしょ。」
どこが!?(キレ気味)
白「では、漢字書き取り五時間コースを――」
――ドタドタドタッ(狐塚キキ逃走の音)




