160 七不思議・二番
『てことは残りの……。』
『そうね。佐藤くん、千代ちゃん優斗ちゃんと、ここにはいないけど光莉ちゃん、あと私が魔法で作った鳩も渡しておくわ。』
『は、鳩?』
『そう。この鳩は致命傷程度なら一回だけ直せるだけの力を込めて作ってある。でも使い捨てだから、気を付けて。それに、死んだ人間を生き返らせることは不可能だから。』
絶対、舐めプしてる!
白鳳中高中等部三年、佐藤……月影、淳はそう思った。(舐めプ=なめプレイの略)
相手は七不思議だぞ? なめてかかれば命を奪われかけないのに? 二手に? ふざけてる!
……それに、六番に挑むチームには陸がいる。陸は一応、媿野家の次男なんだ。もし死なせれば……海斗に殺される。いや、海斗ではなく、先代媿野当主、おばあ様や現代当主である陸の父親から直々に罰を言い渡されるかもしれない。
「俺一人が死ぬだけで済めばいいが……。」
海斗たちにも連帯責任としてバツが下ればどうなる?
陸の父親はそんなことはしないかもしれない。だが、先代当主はどうだろう。
ただでさえ子供が少なく、俺も鬼から一般人へ成り下がったため、最近キレやすいと聞いている。
グッ……こうなったらさっさと終わらせて、六番の元へ急ぐ!
焦りを押し殺しながら、足を速めた。
「おーい。何やってるの佐藤くん。目的の七不思議二番の女子トイレ通り過ぎてるわよ?」
後ろから千代さんに声をかけられ、振り返る。
目的の女子トイレについたのか。
七不思議二番、トイレの花子さん。
王道の怪談だ。
確かここの花子さんは、このトイレで首つり自殺した女子生徒、だったかな?
捕まれば首を絞められるとか。つまり、これから始まるのは地獄の鬼ごっこって事か。
「あーやっと来た。」
すると、女子トイレの中から光莉が首を出した。どうやら、すでについていたらしい。
「中で何をしていたの?」
千代さんが光莉に問う。
「花子さんを呼び儀式の祭壇作り。」
光莉の説明によると、儀式の祭壇はこういうふうに作るらしい。
➀一番奥のトイレに首つり用の縄をかける。
➁縄の下に大きな白い盃を置く。
③トイレのドアを閉め、うち鍵をかける。
④トイレの前にスイレンの花を入れた花瓶を置き、その花瓶を囲むように12本のろうそくを立てる。
⑤13本目のろうそくを持ち、13本目にだけ火をつける。
ここまで出来たら準備は完成。あとはこういうだけ。
『花子さん花子さん。いらっしゃいますか? 私を黄泉へ、お連れください。』
「黄泉? どうして?」
「どうやら、花子さんはいじめられた上に地獄に落ちたの。それで、自分勝手な人間がいじめられた人間は黄泉の国へ行ったと勘違いし、連れて行ってくれと頼む人間を地獄に引きずりおろすんだとか。」
「な、なるほど……。」
ナ「“鳩を配布します。致命傷までなら一回だけ治ります”って言われた瞬間の佐藤の顔、誰かGIFにして……」
演技美味いね。さすがクズ。
ナ「酷すぎワロタ……」
白「ていうか“でも死んだら終わりね”ってサラッと釘刺された上に、“じゃ、挑んでらっしゃい!”って言われたら普通パニックになるよ!?」
作「しかもその状態で“トイレの花子さん”に向かわされるの、“命がけの鬼ごっこ”にしてはコメディ要素混ざりすぎてて脳が処理不能……最高」
ドМかな? おお……にらまれるのは好きじゃないんだよね……160話、ついに始まった“七不思議攻略戦”――だけど、空気が“儀式”に切り替わった瞬間の冷気、書いてるこっちも震えてくる……。
ナ「佐藤の“舐めプしてるだろ!”って内心ツッコミ、めっちゃ笑ったのに……その後の“陸が死んだら俺も終わる”の重さで静かに沈む構成すごい」
白「“自分の死より誰かを守れなかった罰が重い”っていう佐藤の責任感、ギャグの皮の下にちゃんと鋼入っててぐっとくる」
作「そして“鬼から人間に成り下がった”とか“先代当主が最近キレやすい”とか、軽いようで重い世界観の影がスッ……と滲んでくるのほんと怖い」
→この回、キャラのセリフひとつひとつが、“責任・血筋・死生”という見えない鎖につながってるのがすごく伝わってくるね。 それを淡々と運んでくるのが“花子さん”っていうのがまたニクい演出!