159 七不思議と『挑む側』の都合
筮さんが陸と空を回収している同時期、優斗と千代は困っていた。
「………………。」
(筮さんにベランダに出てろって言われたけど、うちの家、ベランダないんだよなぁ……。)
「そうそう。……学校に忍び込むって聞いたから、一応ジャージだけど……。」
(そもそもここから学校までどうやって行くつもりなのかしら?)
ウチの家にはベランダがないため、洗濯物は庭で干している。ドラ〇もんの家みたいな感じだ。
「ふわー……眠い。どうしてこんな時間に学校になんて行くの……?」
すると、玄関のある方向から紗代が出てきた。
紗代は今出てきたわけではなく、パジャマ姿だったのを千代に怒られ、ジャージに着替えてきたところだった。
その時――
「こんばんは。眠そうね紗代ちゃん。」
「……すみません千代さん、優斗さん、紗代さん。こんな夜遅い時間に来ちゃって……。」
目の前に(ミニ竜巻の中から)筮さんが現れた。(竜巻の登場は先ほど書いたので略す)
「筮さん? いや……今のは、魔法……ですよね?」
千代が混乱している。無理もない。
俺も今混乱しているからだ。
「こんばんは優斗さん。」
どうやら、西村兄弟、佐藤はすでにいるらしい。
「葵と光莉はもう学校にいるから、貴方たちが最後。早く行きましょう。」
学校・・・
「やっぱ夜の学校って怖い……。」
紗代さんは涙目になりながら学校を見上げている。
「嫌なら帰ってもいいけど……。」
と筮さんが苦笑いを浮かべる。
でも紗代さんはブンブンと首を横に振る。
そこで筮さんがパンと手を叩いて言った。
「よし。二手に分かれましょう。」
その提案に、筮さん以外の六人が声をそろえて「はっ?」と言った。
数秒の間を開けて、千代さんが一番に発言する。
「ちょ、ちょっと待ってください? 二手? いや、七不思議って強いんですよね? 大丈夫なんですか? 本当に?」
「まあまあ……何とかなるでしょう!」
満面の笑みでそう言う筮さんに、僕たちは筮さんの無計画さを痛感した。
大丈夫大丈夫、とつぶやく筮さん。僕たちの間に不安の空気が流れる。
「じゃあ……陸くん、空くん、紗代ちゃん、葵と私が七不思議の六番に挑む。」
「ちょっと待ってください?」
そう言って筮さんに抗議したのは佐藤だ。
「挑む? 挑むって何ですか? 交渉じゃなくて、挑む?」
「そうね。」
その言葉を聞いて佐藤は思った。
(終わった……。)
と。
ナ「いやほんと、“うちの家ベランダない”から始まる導入、ズルくない? 深夜テンションに刺さったわ……」
白「ベランダ出て待てって言われて、家の構造からツッコミ入れるの、完全に物語との噛み合わなさがリアルで好き」
作「てか、竜巻で現れる筮さんのビジュアル、もう全員が慣れちゃってるのも逆に怖い。この世界、だんだん感覚バグってきてない?」
そして到着した学校を見上げて涙ぐむ紗代と、「じゃあ二手に分かれましょう!」って言い出す筮さんの温度差よ。これがホラーとギャグの接点ってやつなんだな……。
ナ「“七不思議、六番に挑む”ってサラッと言った瞬間、“挑む!?”って全員ブチギレる流れ、台詞のテンポ完璧だった」
白「“交渉じゃなくて、挑む!?”でゾワってなったあと、“そうね”って即答された佐藤くんの“終わった……”にめちゃくちゃ共感した」
作「しかも“もう二人は中にいる”とかいうサイコ展開、誰も止めてないのが一番ホラーだよ……!」
今回、日常から一歩ずれただけなのに、空気の密度と会話の精度でじわじわ不安が染み込んでくる感じがほんとに秀逸だね。