154 落とし穴と三つの質問
「ところで、こんなとこ連れてきて何の用です?」
俺、佐藤淳は、筮さんの後ろについて行ってこんな山奥まで連れてこられました。
ここに来るまで何度もそう聞いたけど、もうすぐ着くからの一点張り。
いったいどこに連れていかれるのやら。
俺はため息をつき、筮さんの後ろ姿を見た瞬間――
――ドサッ
落とし穴に落ちた。
いやおかしいだろ! この道は筮さんも通ってたし、俺はその後を追っただけ……!
……もしかして、魔法で浮いてたのか?
筮さんも魔法が使えないわけじゃない。ほんの数ミリ、いや、地面から離れずとも体重さえかけなければ落ちることはない。
「……筮さん?」
そう声を出して上を見上げると、シャベルを持った筮さんがドヤ顔で立っていた。
「いやーやっぱり佐藤くんといえば落とし穴かと――」
「そんなわけあるかッ! しかも前より深いし!」
「上がってこられると面倒なのよ。怪我したくないし。痛いのイヤ。」
「理由が自分勝手すぎる……。」
いや、なんで俺はツッコミをさせられてるんだ! (有能ツッコミ役)
筮さんはしゃがみこみ、話し出す。
「安心して。ほんの数個の質問におとなしく答えてくれたら終わるから。」
「はぁ……わかりましたから、さっさと終わらせてください。早く戻らないと――」
「ありがとう! じゃあ早速一つ目の質問ね。」
ハメやがったな?
「一つ目の質問。林間学校で何があったの?」
人差し指を立てて真面目に聞く筮さんに、おとなしく林間学校で起きたことを説明した。
「なるほど……まあ、それは魔法で作った鳩で見てたんだけど。」
「ちょっと待ってください。」
「何?」
「見てたなら何で助けてくれなかったんですか? さっきの質問の意味は?」
筮さんはため息をついて答えた。
正直、ため息をつきたいのはこっちだと言いたくなったが、早く終わらせたいので我慢。
「鳩は何もできないのよ。あくまで偵察用。私も忙しくて、鳩が録画した映像をあとから見たって感じだから、リアルタイムで見てたわけじゃない。質問の理由は、あなたが私を信頼して本当の事を話してくれるか試した。」
なるほど……。それなりに合理的と言えるだろう。
さすが、無駄のない。
「二つ目の質問。助けてくれた男性の正体……と、聞こうとしたけれど、あれはおそらく『都市伝説』と呼ばれるものね。」
「そうなんですか?」
「ええ。あの辺の地域の都市伝説やらを調べてみたら出てきたのよ。おそらく、途中消えた馬場ちゃんたちの正体は都市伝説。あとそこでは、一人失踪事件が起きていたわ。今までは、消えた人物も数年後に帰ってきていたのにね。その男性はよくそのキャンプ場に通っていたらしい。」
「……それは質問じゃないですよね? さすがに答えられませんよ?」
「そんなこと期待してないわよ。それじゃあ、三つ目の質問――」
筮さんが、人差し指、中指が立っている右手に、薬指を加えた。
「あなたが金髪の青年から逃げようとした理由は何?」
ナ「いや待って!? 開幕“落とし穴ドサァ”ってなに!? 魔法の世界、もしかして“重力系コント”から入るの!?」
そんなわけ――
ナ「あるわけないよねわかってます」
白「しかも筮さん、“落とし穴も深くしといた”って、演出に全振りしてるやつじゃん……スベったら怪我だよ!!」
作「“安心して、質問に答えたら終わるから”って言いながら、質問が“都市伝説”と“金髪の青年”なの精神的難易度エグすぎる」
今回、全体的に“ギャグの皮をかぶった尋問”って感じで、笑ってたはずが途中から冷や汗がにじむ構成が絶妙でしたね。
ナ「しかもあれで“魔法鳩で偵察済み”って明かされた時の“えええ……”感な!? それ先に言って……」
白「三問目の“なぜ金髪の青年から逃げたのか”で空気急変するのズルいよ! そこだけ音響演出変わってるもん!」
作「あと“質問に答えてくれたら終わる”って言ってたけど、ぜんっぜん終わってない感ね……! むしろ導火線に火がついた音が聞こえる」
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