153 地下室と正座と、七不思議
「それで? 何の用です筮さん。」
佐藤がドアのない部屋で筮さんに問う。
筮さんは正座しながら佐藤の方に振り返った状態で佐藤を見上げている。
そして、佐藤は正座で振り返る筮さんを左手を腰に当てている状態で若干見下ろしている。
「はいはい。」
そう言って筮さんはスッと立ち上がる。その優雅でなめらかな動きに、一瞬見取れる。
筮さんは着物だけでなくドレスも似合いそうだ。
いや違う。今は筮さんの話を聞くんだ。
「二人とも、いえ、紗代ちゃんを入れて三人。ついて来なさい。」
そう言って歩き出す筮さん。
僕たちは混乱しつつも黙ってついて行った。
紗代さんもどこに行くのかは知らないようで、混乱しているようだった。
そんなこんなで連れてこられた地下室。……地下室?
こんな場所旅館にあったっけ? ……いや、地下にあるんだから知ってるわけないか。でもどうやってこんな場所作ったんだろう?
僕は一瞬考えて、わからなくなって、考えるのを放棄した。
筮さんが地下室の扉を開けると、そこに広がっているのは畳。
畳の匂いが充満する部屋に入って僕は一瞬混乱した。
僕が思い描く地下室とは別物だったから。
その広さは、道場……? と思うほど広さがあった。
体育館くらいは余裕であるだろう。
「わぁ……ん?」
そこで僕は気づいた。
この道場ほどの広さがある空間の真ん中に、一メートルほどの間隔をあけてちょこんと正座している人物が一人、二人……五人。
兄さん、葵、光莉、優斗さん、千代さんの五人。
空気が重い。
なぜなら、ここに正座している五人全員が下を向いて何かを覚悟したような顔をしているからだ。
「な、なんです筮さん。何をするつもり……。」
「何って……大事なお話があるだけだけど?」
サラッと言っているのが怖い。
「夏休み、白鳳中高に侵入し、七不思議、六番と二番に会いに行きます。」
僕たちも正座させられた直後、筮さんが単刀直入に言った。
「は、はぁ?」
僕は理解できず、そんな声をあげた。
他のみんなも同じような反応。
ただ唯一佐藤だけが、知っていたかのように目をそらした。
「詳細はあとで伝えるわ。みんな、もう仕事に戻りなさい。」
「ちょ、ええ……?」
みんな顔を見合わせたりして混乱しているのが手に取るようにわかる。
そんな中で、葵が筮さんに質問した。
「あの……もう戻っていいんですよね?」
「いいわよ。ただ、佐藤くんだけは残りなさい。」
「はぁ!? まっ、どうして?」
「いいから残りなさい。」(圧)
「はい……。」
いつの間に仲良くなったんだあの二人……。
ナ「やっと夏休みっ! ……って思ってたら地下に連れてかれて、五人正座で沈黙してるの見せられるの、完全に怪談イベントでしょ……」
白「“地下道場”ってワードだけでも異常なのに、“一メートル間隔で整列正座”が出てくるの、精神ダメージ地味に効く……」
作「しかも筮さん、着物で優雅に出てきたと思ったら“七不思議 六番と二番に会いに行きます”ってさらっと爆弾投下してきたからね!?」
153話、動きは少ないのに空気がどんどん圧縮されてく感覚が……! 冒頭の「話を聞くんだ」ってモノローグ、陸の“知ろうとする覚悟”として地味に効いてるのも最高かもね。
ナ「てか佐藤さぁ……“知ってました”って顔して目そらすの、知ってたけど態度に出すぎじゃない?」
白「“五人正座”を見せられてるのに“話し合い”じゃなくて“通達”なの、もはや戦国時代の軍議感」
作「あと筮さんの『いいから残りなさい。(圧)』に関しては一生忘れない。圧でキャラを動かすの反則だよ……最高……」
まあ彼女の圧は……生きてきた環境と教育かな?