151 星空と逃げ道 章終わり
「はぁ……。」
「何よ啓介君。ため息なんかついて。私が作ったカレーがそんなにまずかったの?」
林間学校でみんなが星空観察をしていた時、啓介は馬場に話しかけられた。
「それもあるけど……ていうか、カレーに何入れたんだよ。」
「何って……サラダ油といつのかわからないポケットに入ってたパイの実。」
「お前な……。そのせいで橘が倒れたんだろーが。」
「失礼ね。永来は喜んで食べてくれてるわ。『おいしい!』って言ってね。昔からずっと……漣用の『祝 カップル爆誕!』ケーキも食べてくれるわ。」
「おまっ、そんなん作んのかよ……絶対マズいだろ。」
「そう? 何も変なものは入れてないわよ? 栄養も偏らないようにサボテンとかトマトとかも入れて……あ、あと魚介類(生)も入れてるわ。」
星がきれいだな……。
「陸。」
星を見ていると、佐藤に声をかけられた。
「何?」
「もうすぐ夏休みだね。」
(夏休みには、筮さんの計画で夜の学校に忍び込まなきゃいけないんだよね……。)
「そうだね。」
僕たちは、もう一度この満天の星空を見上げる。
人工物のほとんどない夜空は、綺麗で、今まで見たことないくらい星が光っていた。
そんな夜の世界に吸い込まれて、お泊り会で見た森の中からの夜を思い出す。
ここも、あそこも、すごくきれいな星が見えるな。
あの時のお泊り会と言えば……。
「義妹……。」
「え?」
「義妹の事は……大丈夫なの?」
夏休みの期間中、ずっと一緒にいなければならなくなる。
「それは……」
と、佐藤は言葉を濁したあと、少しだけ目を伏せた。
彼は、義妹についてどう思っているのだろう。
「もし逃げたくなるようなことがあったら、うちに逃げてきていいよ。」
逃げ場がないなら、与えたい。
持ちつ持たれつつ。それがこの世界の鉄則だと、僕は思うから。
僕は、空を見るのをやめて、佐藤に向き直る。
「いつでも、逃げてきていいから。こういう僕だって、いじめから、前の学校から逃げてきて今生きている。逃げるのは悪いことじゃない。逃げたいのに、逃げさせてくれない方が悪なんだよ。」
佐藤の表情は彼の前髪に隠れ、見えなかった。
「誰かに手を引かれないと逃げられないなら、僕が引くよ」
はっきりと言った僕に、佐藤は少し、驚いているようだった。
そして、クスッと笑う。
笑っている顔は、見ていてこっちもつられてしまった。
佐藤の細められている目に、流れ星が映った。
「見て! 流れ星!」
クラスメイトの声が、耳に入った。
満天の星空に流れる流れ星の下で、佐藤の返事を待った。
「ありがとう。そうだね。逃げたくなった時に、逃げさせてもらうよ。他人に手を引かれないと逃げられないなんて、もう嫌だから。……それがたとえ卑怯だと言われてもねっ。」
ニッと笑うその顔に涙が浮かんでいた。
笑った影響なのか、それとも違うのか。人の心なんて、僕にはわからない。
ナ「もう今回、開始3行で口にしてはいけないカレーが登場して心臓に悪かったんだけど!?」
なんども聞くけど心臓――。
ナ「あるよ!」
白「パイの実(ポケット産)はまだしも、サボテンと魚介類(生)はもう食べものという概念を超えてるでしょ! 地質調査隊?」
作「しかも漣くんも永来君も、普通に食べてるし……彼らこそ真のホラー枠では……? ていうか味覚大丈夫なの?」
たぶん蓮くんは大丈夫。永来君はバグってる。ギャグ、そこからの『星空の下でのしっとり相談パート』で情緒が上下しまくって酔いました。 でも陸の「逃げたいときは逃げていい」ってセリフ、さらっと言ってるけど超ヒーロー発言。ラブコメだったらエンディング入ってるやつです。
作「ここに馬場さんが居なくてよかったと超思うよ。」
ナ「しかも流れ星のタイミングが完璧でズルいよ! 一言一言に星が演出つけてくる!!」
白「そのあと佐藤の涙が笑いすぎなのか本気なのか分からないって、陸の視点が逆にリアルだった……」
おそらく本気ですね。
作「次に泣くのは読者の番かもしれない(カレー食べながら)」
ナ「まあでも俺らは、ベッドの上でごろごろしながら次の展開待ちますか。」
作「ポテチでも食べながらね♪」
いや汚いわ!
白「私は太るからいいかな……。」