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150 都市伝説の正体


「あーあ。バレちゃったねぇ……。」


 男は、異世界(ゼツリョウ)の林の中でつぶやいた。


「それにしても彼、アマテル……だっけ? 強かったねぇ。攻撃一つ一つは弱かったけど。ねぇお嬢。」


「そうね。」


 男に話しかけられた女は、クールに一言だけ返事をする。


 男は小さくため息をつき、地面に横たわる化け物に向き直る。


「お嬢の演技は相変わらずすごいですね~『あーんもうっ。なんでこんなに早いのこの化け物!!』って。いつものお嬢からは考えられません。」


「そうかしら。私から見れば、その時に化けていた少女、馬場輪音さんの声に少し似てしまったことが気がかりだったわ。」


「俺の演技もなかなかだったでしょうお嬢。永来君の『鉄則』である人の視界に入る、ができなかったのは反省点ですね。」


 男はケラケラと笑う。


「あいつらもちゃーんと俺たちのこと見てたら、偽物だって気づけたのに……でもまあ、俺たちは『噂』じゃあ――。」


 少しばかり欠点のある化け者なんでね。


「『その案内人は、自分の知人の顔をしているが、よく見ると話し方や雰囲気が微妙に違っている。案内人は、その人が納得しそうな『言い訳』を言い、森の奥へと誘うが、その行き先は噂される呪われた木がある場所だ。』って……だから俺らは『変装』特化の滅銀浪なんていうザコに勝てなかったのかな……。」


「バカね。負けるわけないわ。私たちは怪異の中でも特に強く、白鳳中高の七不思議に並ぶ――」


 風が吹く。

 林の空にかかる黒い雲が流れ、月明かりに照らされる。



「――『都市伝説』なんだから。」



 女の長い黒髪が揺れ、光の当たり方がかかわる――つまり、それが当たり前のように、青い髪に変わる。


 七不思議は学校内、都市伝説は地域全体に影響する。

 良く言えば土地神。悪く言えば支配者。


 怪異の性格によって、土地の治安も大きく左右される。

 事故が増えることもあれば、殺人事件が多発する場合も。


 人間への影響の大きさも、様々だ。


「それにしても心外ですね。俺ら都市伝説がこんなザコに負けると本気で思うなんて。」


「あら。この滅銀浪はそんな考えを持っていたの?」


「はい。俺らに勝とうとし、都市伝説の座を奪うために焦ったせいで天照や輝に目を付けられたそうですが。」


「とんだ迷惑ね。……それにしても、あなた、後悔はないの?」


「何がです?」


 男は滅銀浪を踏みつけにしながら女に目線を向ける。


「元人間のあなただから聞くのよ。人間に後悔はないの?」


 その問いに、男はケラケラと笑う。


「ありませんよ――人間に、いいところなんて、ないですから。」


 一瞬、悲しそうにしたものの、すぐにパッと笑う。


「でもここも、お嬢みたいな美しい人と出会える素敵な場所ですよ。」


「そう。それにしても、異世界(ゼツリョウ)を周りの風景と合わせて、違和感を無くすためにできるのは強い怪異の特権だけど、疲れるのには変わりないわね。」


「そうですね。」


 男は、滅銀浪に手を伸ばす。


――■■ッ! ……ボキッ、ゴキッ




「……よく、そんなもの食べられるわね。」


「何言ってんですかお嬢。都市伝説の座を守るために、強くならねば。そのために食べるんですよお嬢。なんせ弱くとも異世界(ゼツリョウ)が作れるのだから、そこらの地縛霊なんかとは違います! ほんの少しでも力を取り込めるのですから! お嬢も、俺がいないときはしぶしぶ――」


――ゴッ


「痛いお嬢。石投げられると痛いんですよ?」


「まったく、都市伝説の私が人間のあなたに好かれたのは想定外だったわ。」


 呆れたように言う女に、男はフフッと笑う。


「そういうものなんですかね、お嬢。」


 実際、この噂を知らず、知人と間違えて俺たちの罠にまんまとはまった人間は、お嬢も食べているのだから。



   ――都市伝説  化喰(ばくじき)仮面(かめん)


ナ「ちょっと待って! まさかの『全部演技でした~☆』って何その終盤のネタばらし!? ルパンかよ!!」

 ルパンじゃないよ!

白「『お嬢の演技、ちょっと馬場さんに似てたの気になるわ』って、自分で細かいミス反省してるのプロ意識高すぎて逆に怖い」

作「しかも演技反省会始まってるのに、直後に滅銀浪むしゃむしゃする流れ、温度差で風邪ひく」

 滅銀浪むしゃむしゃ!? つ、つまり今回、ホラーの皮をかぶった演技力検定準一級の猛者たちが暴れていたという事実。 『騙されたそっちが悪いんだよ』みたいなノリ、ホントにゾワッとするよね……?

ナ「あと個人的ハイライトは『石投げられると痛いんですよ?』でした。都市伝説なのにツッコミは人力」

 なんか……説明文書くのだるくて彼に言ってもらった。

白「『好かれたのは想定外だった』って言われて満面の笑み返してるあの男、ポン刀よりメンタル強ない?」

 ポン刀って誰!?

作「ていうか都市伝説の座って何!? 怪異界、階級制度あるの!? そのうち怪談連合杯とか始まりそう!!」

 あそうそう。私たちは怪異の中でも特に強く、白鳳中高の七不思議に並ぶ――のとこは、あの人たちが特別強いのではなく、怪異の中でも強めの種族、七不思議、と都市伝説、の中の一種って事。Ok?

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イイネ等、よろしくお願いします。 え? なぜかって? しょうがないなぁ、そんなに言うなら、教えてあげないこともないですよ。 モチベにつながります。
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