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149 いたはずの人


「あーもうセンセー、どこ行ってたんですかー?」


 疲れ果てている僕たちの空気に入り込む、彼女の声。


「馬場さん……?」


 頬を膨らませ、仁王立ちしている馬場さんは、僕たちがさっきまで一緒にいた馬場さんと全く同じだった。


「あ、みんな! そんなに疲れた顔してるけど、どう? 吊り橋効果は……。」

「あるわけないだろ! そんな事より馬場。お前どうやってあの林から逃げたんだ?」


「どうしたの啓介君。私は林には入ってないけど……だって虫が出そうじゃない。」


「え……?」


 吊り橋効果を期待してニヤニヤしている馬場さんに突っ込んだ安藤さんは、馬場さんの『虫嫌い』を今知ったような顔をした。

 信じられない、とでも言うように。


「……は? だっておかしいだろ。お前は、林の中から『バレてしまった』とか言って出てきただろ!」


「は? は私のセリフなんですけど? 何言ってるの啓介君。私は虫が大嫌いだから林になんて行くわけないでしょ? それに、けーすけくんとしゅんくんは喧嘩ばっかりで吊り橋効果が出なさそうだから行くとしたらビビりの橘さんが居る大和さん、橘さんチームね。」


 と、馬場さんは当たり前のことを言うように淡々と告げる。


「漣はなぜか私の気配に気づくからそこはいけないし。」


 馬場さんが居たのは安藤さん、佐藤、山本さんがいたチームだ。

 待って。頭がこんがらがってきた。


「馬場さん。」

「あ、あねぇ! 神谷先生も!」


 馬場さんの後ろに、山本さんと永来君が現れた。


 そこで思い出す。


(肝試し中、永来君は一度でも、馬場さんの事を『あねぇ』と呼んだか――?)


 今思い出せば、馬場さんも、一度も永来君の名前を呼んでいなかったかもしれない。

 いつも姉の事を『あねぇ』と呼ぶ永来君。弟を呼ぶときは必ず『永来』と呼ぶ馬場さん。


 『ちょっと』や『ねえ』なんて呼び方はしない。


 そこで永来君が橘さんに話しかける。


「橘()()、大丈夫ですか? 膝すりむいてるみたいですけど……。」


 先輩?


――あ、ああ。実は、さっき、疲れた橘()()がこの木にもたれかかったん()()()――


 背筋が凍った。

 思い出せば、おかしなことはいくらでもあったかもしれない。


――こっこ、この木! の、呪われてる!――


――………………ええ!? そうなの!?――


 呪いに対しての反応が遅かった――。


――永来は噂の事知ってたんだろ!? 俺が木に触れたときに『それは呪われた木ですよ』って言ったじゃないか!――


――それは! ……当たり前ですよ! だって――


 この後、馬場さんが被せるように発言していた。

 なんと言おうとしていたのだろう。


 橘さんが永来君に怒る。


「そう言えばお前、俺の後ろから声かけて驚かせてきやがって!」


「え? 何のことです先輩。人に声をかける時は、まずその人の視界に入るのが鉄則ですよ?」


ナ「え、こわ…“キャンプ場にいた、って本人に言われちゃった時の空気、たぶん全員1ダメージ入ったよね……」

 1どころか、クリティカル入ってるよ。

白「というか虫嫌いだから林なんて入らないって、超もっともらしいこと言われてるのが逆に恐怖なんだけど……!」

作「さらに『あねぇ』呼びでとどめを刺されました。あれ肝試し中一度も聞いてないよ!」

 今回の怪異は、ドッペルゲンガーを使ってあの世に連れていくタイプ。 まあそれは、天照、輝お兄さんの乱入で阻止されちゃったけど。

ナ「あと永来くんさ、確実に恐怖だよ! あの『だって!』の後、何を言おうとしたのだろう」

白「そのあと馬場さんが被せた発言も不自然に遮ってきたし……チームワーク良すぎかよ、記憶改変部!」

 失礼かよ。

作「ところで陸の『頭こんがらがってきた』って、今回唯一の視聴者目線で安心した……一緒に脳がくるくるしてるよ……」

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イイネ等、よろしくお願いします。 え? なぜかって? しょうがないなぁ、そんなに言うなら、教えてあげないこともないですよ。 モチベにつながります。
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