148 滅銀浪の終焉と、見えなかった真実
攻撃された天照は、その攻撃を避ける。
天照は男性から距離を取り、戦闘態勢に入る。
「え、ああ。待って待って。こっちに戦う気は無いんだってば~。」
「……そんな事は関係ない。お前が人に害をなす怪異である限り、俺はお前を――。」
「あーそれだけは弁解させて! だって俺はこの子達を守って――だから話聞けって!!」
男性はヘラリと笑って言う。が、天照はそんなことどうでもいいようだ。
重要なのは人間であるかないか。今、人に害をなすかなんて――。
「神谷!」
天照は神谷先生に向かって叫んだ。
「来た道を戻れ! 出口は分かるな?」
「……は、はいっ!」
神谷先生は「こっち!」と言って林を指さす。
みんなは頷いてついて行った。
僕は、一瞬だけ立ち止まって、葉の陰から彼らを見た。
僕が見たのは、イヌ科の化け物――確か……滅銀浪? だったかな。
滅銀浪の首が輝さんの手によって切り落とされ、狼の群れが消滅したところだった。
狼の群れは、あっけなく散った。
まるで初めから、そこにいなかったかのように。
そして肝心の滅銀浪は、首だけになっても動いていた。
――でも、僕が見たのはそこだけで、そこからあとは見ていない。
神谷は思った。
もうすぐ別の怪異の異世界が終わって、あのザコ? の異世界に――って、あれ?
神谷を先頭に走ってきた陸、佐藤、安藤、鈴木、橘、大和は、一つ目の異世界を抜けた瞬間、空気が軽くなった。
(もう一つの異世界が――消えてる!?)
持ち主の滅銀浪? が死んだ影響か?
彼の説明だと、異世界は持ち主の意識と共に維持されているはず……だ、が……。
どっちにせよ――。
「終わった……疲れた……。」
神谷は、その場に座り込んだ。
他の者も同様に。
その空気を破ったのは、陸だ。
「で、でも先生。馬場さんと永来君は……。」
「? あの二人なら――キャンプ場にいるよ? ずっと。」
狼より怖いのは“認識のズレ”と“記憶の確信犯”――あと疲れてるのに話しかけてくる人……。
ナ「あのねぇ……終わったーーー!!!! ……と思ったら全然終わってなかったやつ来たよ!!」
白「ていうかさ、『馬場さんと永来君はキャンプ場にいたよ?』ってどういうこと!? 一緒に異世界いたよ! ね!??」
うげっ。まあ、察しのいい人ならもうすでに気づいてるかもね。
作「いやでも正直、あの二人ずっと静かだった気もするし……もしかして我々の【集団幻覚】だった説、浮上してない?」
うーん、まあ……そう、いなかったのか、忘れさせられてたのか。 本当にいなかったなら怖いし、いたのに気づいてなかったならもっと怖い。選べない恐怖が一番質悪いよね……。
ナ「天照くんも疲れてる中、いちいち『よし、あの人怪異!』って判断してるのすごいよ……もういっそAI入れてほしい」
白「『異世界に踏み込んでる疲労感MAXの中で刀振るう』って、ブラック企業の社員さんもビックリのタフさ……」
無事戻っても、どこに戻ったのか、が信用できないんですよね。 そして『無事だったはずのキャラが一番怪しい』説がここにきて濃厚に……。
ナ「最後に“空気が軽くなる”って描写があったけど、読者の心はまったく軽くなってませんが!!!」
うるさいな。
白「むしろ『あれ? この世界って……本物?』って疑ってるからね!? 読者に“後遺症”残してくる構成やめて!??」
作「しかも“動いてないはずのアレ”がまた動き出すオチ!? ちょっと待って、バグ再発してますけど!?!?」