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145 叫び声の向こう側


 僕は思わず耳を塞いだ。

 大和さんの叫び声がうるさすぎる!


「や、大和! もうちょっと、静かにしてくれないか!?」


 安藤さんの声は、大和さんには届かない。

 このまま叫び続けて大丈夫なのかな?





 別の怪異の異世界(ゼツリョウ)に入り、叫び声を頼りに歩き続ける神谷と天照。


「はぁ……叫び声が同じ声量でここまで長く続けられるとは……。楽器やってます? 肺活量が必要になってくるやつ。」


「さあ……彼は運動部だったと思いますけど? まあ、声の方に向かって歩いているので助かっていますけど……近くに行くとうるさそうですね。」


「俺は少し離れたところにいるので、その間に叫ぶのをやめさせてください。」


 天照はため息交じりにつぶやく。


「それにしても、どうしてこんなに大声で叫ぶんだ? 助けを求めてる?」


「どうでしょう。それは分かりません。天照くんはどうしてそんなに詳しいんです?」


 神谷は気まぐれに話題を振っただけだったが、天照は下を向いた。

 そのことに少し、神谷は意外性を感じた。


「知らなきゃいけない立場だから……ですね。」


「そうなんですね。」


 神谷は思わず、足を止めた。

 それはどんな立場なのか……聞く勇気はなかった。





「あーーーー……はぁ、はぁ……。」


「大和! うるさいぞ! そしてよくそんなに息が続くな!」


 ようやく息が切れてきた大和さんに、安藤さんが突っ込む。


「まあな! 昔吹奏楽部だった兄の楽器で鍛えてるから! 安藤の得意な楽器はなんだ!?」

「ヴァイオリンだ。」

「意外……。」


「ヴァイオリン、と、トロンボーンだ。」


「へー! なんでだ!?」


「それは……。」


 安藤さんが黙る。

 ここにいるみんなが、そのことを疑問に思った。


 すると、林の中からガサッと音がして、皆が警戒し、音の方を見る。

 林の木は相変わらず黒く、枯れ木のようだ。


 音はどんどん近づいてきて、張り詰めた空気が流れ始めたとき――。


「やっと、やっと見つけたっ!」


 林から出てきたのは、担任の神谷先生。


「神谷先生っ!」


 みんながパァッと顔を明るくし、安堵の表情を浮かべる。

 でも狼の群れはまだいるし、イヌ科の化け物も今は押さえてもらってるけど、すぐ後ろに迫ってきている。


「神谷先生、どうしてここに?」


 鈴木さんが神谷に問う。


「ここまで連れてきてくれた人がいたんです。その人は――あれ?」


 神谷は後ろに振り返るが、そこには誰もいない。

 さっきまで、後ろにいたはずなのに――。


「よかったねぇ~。先生が助けに来てくれたんだ~。」


 というキレ気味の間延びした声を聞いて、化け物を押さえてくれている男性の存在を思い出す。


「――って、ん? うわっ!!」


 男性は悲鳴を上げた、化け物から手を離して後ろに下がる。

 上から降ってきた、人型の何かを避けるように――。


 ………………あ。

作「何?」

 一回陸たちにもう一回だけ『ループ』を体験してもらうの忘れてた。

作「え? どういう事?」

 天照くんは強い怪異の異世界(ゼツリョウ)だって言ったじゃん。

ナ「言ったね。」

 強い怪異だから『同じような空間を作る』じゃなくて『本当にループさせる』が可能なんだよ。

白「……どういう事?」

 だから、今走ってもう一回ループするじゃん? そしたら大和が狼に攻撃するために折った木が本当に折れてるんだよ。

ナ「な、なるほど……。」

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イイネ等、よろしくお願いします。 え? なぜかって? しょうがないなぁ、そんなに言うなら、教えてあげないこともないですよ。 モチベにつながります。
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