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139 空白の真実


 僕と佐藤の上にある口は、ス……と引いて行ったが、また口を開けた。

 イヌ科の化け物が口を開いた瞬間、佐藤がしゃがんだ状態で後ろに飛んだ。


 今度はイヌ科の化け物は地面に激突し、地面にひびが入る。


「あッありがとうございます安藤さん。死ぬところでした。」

「礼は後だ。俺と淳がこいつを食い止めるから、先に逃げ――うわぁ……。」


 鈴木さんが安藤さんに礼を言っている横に、佐藤と佐藤に抱えられた僕がズササァァーーと音を立てて止まる。

 すると、僕を抱えている佐藤がボソッとつぶやいた。


「まずいな……この靴、裏側のゴムがだいぶすり減って来てるから滑る……。」

「何やってんの!?」


「そんなことより気づいた? 陸。()()()()()()()()。」


「え? ……ぁ……!」


 気づいた瞬間、鳥肌が立った。

 安藤さんが「うわぁ」と言った理由はこれだったのだろう。


 そうしている間にも、イヌ科の化け物は口を開いて襲い掛かってくる。

 今度こそダメだと思い、ギュッと目をつむる。

 すると、またなぜか後ろに下がった。佐藤が動いたわけではなかったが、なぜ?


「鬼桜! 助かった!」


 どうやら、安藤さんが佐藤ごと引っ張ったらしい。


「安藤さん……!」

「何してるんですか先輩たち! 早く逃げますよ!」


 少し離れたところから永来君が声をかけてくれた。

 そうだ。逃げないと。


 佐藤が僕を下ろし、足に力を入れ地面を蹴った瞬間、足が捕まれた。


「ああ!!」


 地面から足が離れ、手が離れ、逆さになり、髪が地面につく。だがすぐに髪すらも地面から離れた。


「助けて佐藤!」

「陸!」


 どうしてこの化け物は、僕ばかり狙ってくるんだ?


 佐藤に助けを求めたが、大和さんに止められ近づくこともできない。


『ゲヘヘ。やっと、ニンゲンが食べられる……。』


 化け物から聞こえた、化け物の下品な笑い声。


『ニンゲンはバカだなぁ。ニンゲンに変装したオレの事も見破れないなんて。』


 恐怖で声が出なかった。

 こいつが、山本さんに化けていたのだ。

 ……いや待てよ? そう思いもう一度考えた。


 そして僕は、こいつは本当に化けていただけなのかもしれない、と思った。

 なぜなら、声は似ても似つかない。もしかしたら、山本さんはキャンプ場にいるのかもしれない。

 一人、人数が余るのだから、一人でカレーの準備をする馬場さんの手伝いをしているのかもしれない。


『ニンゲンを食べて強くなれば、()()()()なんてへじゃないゼ。』


 あいつら……?


 大きく口を開いた化け物を見て、食べられる! と思った瞬間、聞いたことのない大きな音が聞こえた。


 聞いたことのない……音だったが、ドォーン!! だったと思う。


 気が付けば、僕は救出されていて、佐藤の隣に立っていた。

 だって信じられないことが起きていたから。


 突然目の前に現れた女性が、4メートル以上ある化け物を頭からかかと落としで地面にたたきつけたのだから。


「「誰……?」」


 安藤さんと佐藤が、同時につぶやいた。


ナ「淳君反射神経良いよね。いや、人間じゃないから当然か……?」

白「“助ける”って行動の速さが異常なんだよ……迷いとかゼロだったし……」

 まあでも、助けられずに食べられてたら『映像記憶能力』で一生残る記憶になるし……。

作「それが“自分の意思”じゃないとしたら――もっと怖いよね」

 自分の意思……というより、条件反射かな。

ナ「ていうか! かかと落としのあの人、何者!!?? 一人だけ異能バトルはじまってたんだけど!!」

 異能バトルなら人間じゃない佐藤とだってそうでしょ。

白「“助け”に入るにしても、空からってどういうこと……」

 空から……というより、木の上かな。

作「そして佐藤と陸が“もう助かって立ってる”描写、まるで映像のコマ飛んだみたいだった」

 そう、時間の“連続”が不自然に“飛ぶ”感覚。 この一話、実は“描かれなかった数秒間”がいちばん重要だったのかも。

ナ「化け物のセリフも気になった。『ニンゲン食べて強くなったら、あいつらもへじゃねぇ』って……」

白「“あいつら”って、まだ出てきてない『上位の何か』でしょ……」

作「ていうかもう敵のヒエラルキー出てきたってことは、肝試しは完全に戦場だったってことじゃん」

 つまり“肝試しの舞台”じゃなく、“噂と怪異の狩場”だったわけです――ようこそ、本番へ。

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イイネ等、よろしくお願いします。 え? なぜかって? しょうがないなぁ、そんなに言うなら、教えてあげないこともないですよ。 モチベにつながります。
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