137 呪われた木
「何!? 何が起きたの!?」
「馬場さん! ……ん? 馬場さん? どうして馬場さんがここに?」
僕たちは今、叫んだ橘さんの周りに立っています。
僕たちの真ん中には、腰を抜かせ、目の前の木を震えながら見つめている橘さん。その木には、木肌に爪痕のようなものがあった。
そしてその橘さんの隣に、永来君が立っている。
「陸! 何があったの!?」
「佐藤! 安藤さん! それと、山本さんも!」
あとからやってきた馬場さん、佐藤、安藤さん、山本さんに事情を説明しようとする前に、橘さんが口を開いた。
「こっこ、この木! の、呪われてる!」
「「はぁ?」」
同時に不機嫌そうな声を出す佐藤&安藤さん。
「おお! やっと何かが!?」
と、目を輝かせる山本さん。
「………………ええ!? そうなの!?」
驚きの声をあげる馬場さん。
馬場さんは永来君に近づき話を聞く。
「ねえ、何があったの?」
橘さんはまだ震えながら、木から目を離せずにいた。そして、永来も同様に、風が吹いていないのに葉が揺れているその木を眺めていた。
「ちょっと? 何があったの?」
馬場さんがもう一度声をかけると、永来君は馬場さんに目を向け、少し眉を下げてから話し出した。
「…………あ、ああ。実は、さっき、疲れた橘さんがこの木にもたれかかったんだけど、実はこの木には……。」
「呪われた噂がある。」
永来君の言葉を遮ったのは、鈴木さんだ。
「……ある森に迷い込んだ者が”案内人”と出会うという噂がある。」
「ちょ、ちょっと待って!」
叫んだのは橘さん。「怖いからやめてよ……!」と言っているが、その言葉は鈴木さんには届かない。
「その案内人は、自分の知人の顔をしているが、よく見ると話し方や雰囲気が微妙に違っている。案内人は、その人が納得しそうな『言い訳』を言い、森の奥へと誘うが、その行き先は噂される呪われた木がある場所だ。」
「だからやめてって言ってるじゃん……!」
涙目で訴える橘さん。鈴木さんはまたもや無視し、言葉を続ける。
「呪われた木は、昔この場所で大量自殺が起きたために封印されたと言われている。その木に触れると、封印された魂が目を覚まし、触れた者を連れていこうとする。案内人に連れられてたどり着いた者たちは、絶対に木には触れてはいけない、けれどその時には既に遅い……木の方が静かに手を伸ばしているのだ。」
「その噂さっき、そこの永来君から聞いたから!」
「もし、その場から逃げる方法を見つけるなら、案内人の顔をじっくり観察し、その『偽物』部分を見つけることが鍵と言われている。でも、そのことに気づかずに案内人を信じてしまうと、二度と帰ってくることはないとか……。」
「さっき聞いたって……!」
橘さんはもう半泣き。
じゃあ俺呪われちゃったのかな、とつぶやいている。
ナ「“橘さんが木にもたれただけ”で、ここまで場が揺れるとか展開急すぎでしょ!?」
まあ……たしかにそうか。
白「いやほんと……“呪われた木”のくだり、笑ったはずなのにいつの間にかゾワッとしてた……」
作「『……あ、ああ』って一瞬詰まった永来くんの反応、地味だけどめちゃくちゃ引っかかったよね……」
そう、いつも一番怖いのは、『説明があるのに納得できない時』。しかも、この辺の話めちゃくちゃ難しいからね!?
ナ「そしてタイミング完璧に遮ってくる鈴木さん、まさかの“陰の語り部”だったとは……」
失礼! 今すぐプライド捨てて鈴木にスライディング土下座交わしてきなよ。
白「“呪われた噂がある”って一言、地味に背筋凍ったんだけど?」
作「永来の“あ、ああ”と鈴木の冷静な割り込み……これ“知ってる側”の動きだよね……」
……No、コメントで!!!
ナ「あと橘さんの“こっこ、この木!”って台詞、あれ演技力高すぎて逆に信じたくなっちゃうやつ」
白「佐藤&安藤の『はぁ?』の温度差も良かった(笑)」
作「山本さんだけ“ワクワクしてる”の、逆にリアルで怖かった……」
――空気が変わるって、こういう瞬間。肝試しの“ただの怖さ”を越えた先に、『何か』が待ってる。