134 『幼馴染』の距離感
あの後、いろいろあって、『男子チーム』『妄想の餌食チー……ピザ配チーム』で肝試しに行くことになった。
ここでメンバーをおさらいしよう。
『男子チーム』
クール! 鈴木 漣
本好き! 山本 紅夜
帰宅早! 橘 志月
一軍男! 大和 昴
「雑!!」(By佐藤)
『妄想の餌……ピザ配チーム』
草食系! 西村 陸
裏切者? 佐藤 淳
鬼桜君? 安藤 啓介
腐女子! 馬場 輪音(不在……不在!!?)
「まあまあ。私のことは心配せず……。フフッ。さあ! 吊り橋効果期待大!」(By馬場)
という事になっております。
あ、あとついでに……。
『言い出しっぺ二人』
馬場弟! 馬場 永来
不在者! 馬場 輪音
さあ! 肝試しを始めましょう!
「うわぁー……いかにもって感じですね……。」
「本当について来てよかったの? 鈴木さん。」
どうやら、二人で組んで進んでいくらしい。ただ、それだとどうしても一人余るので、そこは三人だそう。
僕の後ろにいるのは、クールの鈴木さん。
「大丈夫です。それに、少し……気になる事がありまして。」
そう言って周りを見渡す鈴木さん。
肩書をクールからミステリアスに変えようかな……。
「僕たちが出発したのは二番目だから、前の方に行けば一番目に出発した橘さんと大和さんが居ると思うよ。不安なら合流してみる? それか姿が見えるところまで近づくとか……。」
「大丈夫です。それにここには……いえ、やめておきましょう。」
ここには?
「怖くないならいいけど……いや、ちなみに僕は怖いよ? 佐藤が幽霊はいるとかいうから……。」
「……やめてください。輪音の思うつぼだ。」
そう言って眉を顰める鈴木さん。
鈴木さんは溜息をついて言葉を続ける。
「下手すると『祝! カップル爆誕!!』とか言って家で待たれるんですよ。もちろん、ケーキを持ってね。……それがまずいのなんのって……。」
「呼び捨てなんだ……なんですね。」
「敬語は必要ありません。まあ、輪音とは幼馴染なので。」
「へぇー。そうなんですね。」
「はい。幼稚園から一緒で……というより、同じマンションに住んでいて、親も仲が良くて、腐れ縁的な何かがあるんだと思います。」
輪音はいっつも危なっかしくて……そう言ってため息をつく鈴木さん。
「そして、小学校に入って、一年二年は仲が良かったんですけど、三年からクラスが分かれて、まあマンションが一緒なので、帰り道とかで会うんですが……。僕らは学校が遠くて、どうしても二人きりになるんです。」
「? はぁ……。」
「四年になって、クラスが同じになって、そしたら、四年の中でカップルが誕生しました。一緒にいる男女は、からかわれるようになったんです。それでしばらくかかわりが無くて……。いつの間にか腐っていたという……。」
「あはは……。」
林の方を向く鈴木さんに、思わず苦笑いが浮かんでしまう。
喋ってる間に結構進んだので、この調子でいけば何事もなく戻れるんじゃないか……そう思い始めた。
ナ「“クール”って紹介された鈴木さんが、気づいたら“過去の語り部”になってるのじわじわくる……」
白「『ミステリアスに肩書き変更しようかな』って、陸くんのツッコミが地味に的確だった」
作「それにしても“輪音との腐れ縁”エピソード、思春期のもどかしさが詰まってて……読んでてちょっと切なかった」
作者に分かるの? まだ小学生……。……からかわれて距離ができて、それでも気にし続けてるって……青春の澱だよね。
ナ「『不在!!?』ってツッコまれてる輪音さんが全部もってってるのずるいよ……」
白「あと“男子チーム”の紹介の雑さが相変わらず最高(笑)」
作「『ピザ配チーム』なのに腐女子枠がいないとかいう混乱構成、やっぱり好き」
うふふ。まあ、いいでしょ。それで。
ナ「でもさ、そんな明るいテンポの中で、ふと出てくる『輪音はいっつも危なっかしくて……』って一言が刺さるんだよね」
白「そう、“好き”とか“気になる”じゃなく、“心配してる”っていうベクトルの感情が……」
作「しかもフラグみたいに(このまま何事もなく戻れそうだな……)とか言っちゃってるから、もう読者の警戒レベルはMaxだよね」
フラグは立てた、その上でどう動くかは――ご想像にお・ま・か・せ☆
ナ「………………。」
ナレーターさん?
ナ「本当に……大丈夫なの? ……佐藤くん……愛莉ちゃんに見られたら、まずいんじゃない?」