125 異世界へのゲート
そんな過去が……。この人、ただの眠そうな人じゃなかったんだ……!
※失礼
「……そこで、協力してほしいの。」
「はい?」
「私はあのクソジジイのハゲ親父に復讐したい。もちろん、監禁を止めなかったクソババア……んん!! お母様にも。」
真面目な顔に気圧されそうになったが、『クソババア』と『クソジジイのハゲ親父』という単語にそれまでの威厳がすっ飛ばされる。
「そのためには、まず故郷に帰る必要がある。私……いいえ、私たちの故郷、異世界へ――。」
「いせ……かい……。そんなものが、本当に……?」
だから、この旅館にいる人たち全員魔法が使えたのか……。
『たち』に当てはまるのは旅館の人物だけではなく、同じく魔法が使える光莉や葵も。
「帰る……って、どうやって!?」
「ゲートよ。帰るためのゲートを作るの。」
ゲートを作ること自体そんなに難しくはない。だが、それは一回きりの使い捨てだと筮は語る。
「向こうの異世界で帰るためのゲートを用意してくれるとも限らないし、複数作っても盗られる可能性は高い。別の場所に出る可能性もあって、それは危険。」
「じゃあどうすれば。」
そう質問すると、ノータイムで返事が返ってきた。
「使い捨てじゃないゲートを作るの。」
そのために私は、薬を作っていた。いえ、ゲートを作るためにいろいろ実験をしていた、と語る。
なるほど。優斗さんの熱が出たときに光莉が土下座していた理由はこれか?
筮さんは何やら不思議な煙のようなものが入った瓶を目の高さに上げ、ビン越しにこちらを見る。
その煙は淡い赤紫や紫、青などに染まっていて、幻想的としか言いようがない。
「もう少しで完成するの。素材はあと一つ。このまとまりのないモヤをまとめる素材が必要。」
「……なるほど。その素材集めを手伝えばいいんですね。」
「そうそう。」
「なんていう素材なんですか?」
「その素材は七不思議が持つ不思議な石。」
「七不思議ぃ?」
「そう。名前は、二番が持つ『深淵の裂け目』六番が持つ『夜明の境界』。他にも、一番や三番、四番と五番、もちろん七番も持ってるけど……。」
「ちょっと待ってください。まさか、七不思議全員分集めろなんて言いませんよね?」
「もちろん。集めてほしいのは七不思議二番、トイレの花子さんが持つ『深淵の裂け目』と、六番、学園の護り手『えみさん』が持つ『夜明の境界』。この二つがあればいい。」
「な、なるほど……。ん? 『えみさん』?」
聞き覚えのあるその名に、違和感を持つ。
「ああ、その七不思議がいるのは、貴方たちの通う白鳳中高にいるの。」
夏休みに学校に忍び込みましょう、と意気込む筮さんの前で、あの学校にそんなものがいたのか……と遠くを見つめる佐藤であった。
ナ「えっ……“異世界へ帰る”って、旅館から!??」
白「しかもそれを支えるのが“トイレの花子さん”と“えみさん”? 情報の渋滞!!」
正しくは『七不思議の』持つ石だけどね。
ナ(七不思議の……?)
作「いやもう“七不思議の石”ってパワーワードすぎる……。ひとつずつが別作品のラスボス感ある……」
そう? って感じだけど……。
ナ「あと『使い捨てじゃないゲートを作るために薬作ってた』って地味にヤバない?」
数年かけて作ったんだよ。
白「異世界技術すごすぎ問題。」
雑な感想ひどすぎ問題。
作「“眠気”と“神秘”の両立キャラ、筮さん強すぎるでしょ……。」
実際、強いし。
ナ「で、“えみさん”て……えみさん!? あの???」
どの????
白「まさかの学校内七不思議と繋がってくるとは……。」
作「夏休みに忍び込むんだ……その計画ぜったい平和に終わらないやつじゃん……。」