124 千年前の事件と筮の過去
天狗、鬼、龍の『天鬼龍盟』が対等な関係でいられたのは、1,000年前までなんです。
「千年? それはまた……。」
佐藤は頷き、言葉を続ける。
千年前には、ある事件があったと思われています。
その言葉を聞き筮さんは「事件……。」とつぶやく。
「ところで筮さんは、どこで妖の事を知ったんですか?」
「え? ああ。まあ、その話はこの話が終わった時に話してあげるわ。」
……わかりました。
ある事件については、先ほど言った三霊王の歴代の当主やその子にしか語り継がれません。そのため、俺たちは詳細までは知らないのです。
「なるほど……。でも、それでも結構知ってるみたいだけど、淳君はどうして知っているの?」
「ああ、俺は『鬼』の妖、分家筆頭家の長男です。」
分家筆頭、河東藤家――。
「筆頭家の長男だったとしても、そこまでは教えられません。」
「じゃあなんで――。」
「筮さんが言ったんじゃないですか? 『深く、首を突っ込むな』と。」
筮さんが目を丸くした。
そこに、あなたはいなかったじゃないの――とでも言うようにね。
人差し指を口元にあて、ニコッと笑って答える。
「昔の仲間に教えてもらいました。彼はいつも陸を『見守って』いますから。まあ、親の離婚でしばらく疎遠になっていたため、裏で『裏切者』なんて呼ばれてたみたいですけどね。」
そうだ。俺の話は終わった。
今度はお前の番だ。
「……そうね。今度は私の番だわ。私が妖の事を知ったのは子供の時。9歳とか10歳とかの時。お父様の書庫に入った……というより忍び込んだ。」
驚いたの。こんな生物が存在していたなんて、と。
こっそりその本を持ち帰って、自分の部屋で読んでいたわ。お手伝いさんにもバレないようにね。
その時は、読み終わったら謝って返すつもりだった。でも意外にバレなくて。
――それから、半年ほどたったある日。
お父様にバレたの。見上げた時のお父様の顔は、本気で怒っていた。
怖くて、手が震えた。
本気でギュって握りしめても、手の震えは収まらなくて。
その後、髪を掴まれて。
痛くて、ブチブチって音が聞こえてきて。
衣類をはぎとられて、下着姿でどこかの部屋に閉じ込められた。
だれもいなかったけど、埃っぽくて、暗くて、お腹もすいて。
餓死寸前のところで、お手伝いさんが見つけてくれて。
そこは、家からだいぶ離れた山にある小さな小屋だった。
そして間もなくして、お手伝いさんは解雇。その人は職を失い、家族と引き離され、首をつって息を引き取った。
「私を助けたばっかりに……!」
と奥歯をかみしめ、手を強く握る。
でも、あの時の私が居たから、今の私と、葵や光莉がいることだってわかってる。
その後、お手伝いさんの姿が見えないことに気づいた私は、お父様に聞いた。
そしたら、役立たずのお手伝いさんたちと一緒にここの山に送られて、役立たずのお手伝いさんの一人から助けてくれたお手伝いさんの死を聞いた。
「……役立たずさん達と一緒にここに連れてこられたのは、厄払いってやつでしょうね。」
ナ「……今回、情報量えっぐない?」
前回もそうだった気がするけど……大丈夫? みんなついてこれてる?
白「えぐいっていうか、心臓ギュッてされた……。」
作「ちょっと待って……あのふわふわ眠そうな筮さんが、まさかのあの過去??」
ナ「家から離れた山の小屋で軟禁されて、助けに来てくれたお手伝いさんが、そのあと……って……。」
白「しかもそのせいで“厄払い”とかいう理由で山に送られたって、もう人間不信になるわ……。」
作「これ読んで『眠気キャラ可愛い~』とか言ってた私の無知さ、今すごい刺さってる……。」
そうだね。
ナ「ていうか、“裏切者”ってワード、また出たよ!? どんだけ深い闇が潜んでるんだよこの物語!!」
いや最初に忠告したよ? 『結構闇の深い物語だ』って。
ナ「ほんとだ!」
白「しかも佐藤くん、あっさり『分家筆頭家の長男』とかさらっと爆弾投下するし。」
作「陸? 淳? 筮? 天鬼龍盟? 何層構造なんだこの世界……!」
ふふふ……物語はようやく、深層に足を踏み入れたばかり。というか! キャラまだ全員じゃないの忘れないでよ!?
ナ「次、どうなるの? いやホントにどうなるの!?」
白「筮さんの物語がメインで一冊書けそうな勢いなんだけど……。」
私は、全員の人生で本一冊書けるくらいの重さにしてるつもりだけど……。
作「お願い……もっとください。」
ナ「やばい……もうこの作品、全員分のスピンオフ読みたくなってきた……」
ようこそ。物語の沼へ。