表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
119/246

118 私の事、スキ?


「お兄ちゃん。私の事、スキ?」


「……え?」


 皿洗いを手伝っていたら、愛莉が突然そんなことを聞いて来た。

 好きか嫌いかで言えば、嫌いだ。大嫌いだ。


 世界で一番――……こんなこと、本人には言えない。


 それより、返事に時間をかける方がよくないだろう。

 返事に迷いを見せるのは、一番ダメな質問をされている。


「……そうだな……好きだよ。」


 そう言うと、一瞬パァっと顔を明るくした愛莉だが、次の佐藤の言葉で固まる。


「義妹……()()()()()、ね。」


 日頃の恨みを晴らすように、無意識にやってしまった。

 とっさに口を塞ぎそうになるが、泡のついた手ではそれも叶わず……。


「……お兄ちゃん……。」


 自分より背の低い愛莉に視線を動かす。

 お兄ちゃん、そこ言葉が、どこか冷たく響く。


 愛莉の表情は前髪に隠れて見えない。


「うん! 私もお兄ちゃん大好きだよ!」


 意外にも愛莉は笑顔でそう返してきた。

 その返事に、一瞬恐怖心を覚えるとともに、ホッとしている自分がいる。


 その後、何事もなく両親が帰って来て、先ほど言った言葉が嘘にならないように親に数学の解き方を聞く。

 そのまま、何事もなく夜が訪れた。




「はぁ……。」


 無意識に出るため息。

 今は午後11時48分。


 教科書に一通り目を通し終わり、一度伸びをする。

 伸びをすると「ん……はぁ……。」と声がし、自分の声だと数秒して気付く。


 椅子から立ち、窓の前に移動する。

 カーテンを開けると、一切の曇りのない夜空が広がっていた。

 窓から覗くのは、月。


 窓を開けて夜風を浴びる。その風は、7月の暑さを帯びていた。

 ボーっと外を眺め、言葉を発する。


「……本読もうかな……。何も考えたくないし……。」


 ずっとしゃべらずに教科書に向かっていたせいか、少しかすれた声が出た。

 一度窓を閉じ、エアコンをつけて本棚を見る。


 本棚に並ぶのは、すべて読み終え、『映像記憶能力』で一言一句間違えずに覚えてしまった本たち。

 今なら、本も見ずに音読できる。本棚に並ぶのは――


 『夢想の地図帳』という本や、

 『君が忘れた未来』という題名の過去の選択と未来への葛藤を描いた哲学的な物語。

 『闇の書庫の記憶Ⅰ』

 『闇の書庫の記憶Ⅱ』

 『闇の書庫の記憶Ⅲ』

 これは、読むものに忘れ去られた秘密を教えると言われる不思議な本の冒険譚。他にも、

 『時砂の回廊 ‹前編›』

 『時砂の回廊 ‹後編›』時間を旅する者たちの視点で描かれる幻想的なストーリー。

 『音楽の影、声の残響』音楽を通じて人間の心を探る感動的なエッセイ。


 『永遠の迷宮1』~13巻

 『短編‐砂漠の音律 桜の響き 編』~全26冊

  (ほかにも、初夏の導き 編、暁に染まりし葉 編、白き雪の手 編など)

 『鏡に映る星々1⃣』~6⃣巻

 『沈黙する海』(エッセイ)

 『風の記憶』(短編)

 『夜を巡る旅』

 『隠された季節  第五の季節~(いち)』~(さん)

 『隠された季節  季節の叫び~㈠』~㈢巻

 『隠された季節  叫びの終着~㈠』~㈢巻

 『言葉の神殿』などもある。


 佐藤が手に取ったのは、昨日買ったばかりで未読の物――


 『星空のささやき➀』

    深夜、星空の下で出会った少年、ルイと少女、リリィが、『星を観る人々』の秘密のコミュニティに導かれる物語。

   このコミュニティは星々の動きを記録し、それが未来への道標となると信じている。星空を読み解きながら、少年と少女は自分たちの運命を探り出す。

   この物語は、希望と再生、そして星の儚さに隠された真実を探る、少年少女の物語――。


   大人気携帯小説、待望の書籍化――!


 佐藤はその本を手に取り、ベッドに寝転がってワクワクしながら本を開いた。


ナ「『隠された季節』が気になりすぎる!!」

 おう! うるせッ!!(耳を塞ぎ叫ぶキキ)

白「そう? 私は『鏡に映る星々』が気になったよ。」

 ふーん。(じゃあ短編で書いてみようかな……。)

作「私は……風の記憶かな。」

ナ「……作者小説読めるの?」

白「普通に考えて、小説を読み始める年齢は小4くらいでしょ?」

作「私は周りより読み始めるの早かったから。そう、俗にいう天才という奴よ!」

 いや自分で言うんかい!!

白「そうだよ! 自意識高い人みたいになっちゃってるよ!」

ナ「まあまあ、喧嘩するくらいなら俺が一番の天才という事に収めといてよ。」

 は?

作、白「は?」

 ちょっとそれだけは納得いかない。この変態が。

ナ「酷い! 冗談だよ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イイネ等、よろしくお願いします。 え? なぜかって? しょうがないなぁ、そんなに言うなら、教えてあげないこともないですよ。 モチベにつながります。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ