115 『落ちこぼれの鬼桜くん』では『裏切者の』……?
・・・七月・・・
新しい月の始まりは、同時に新たな波乱の幕開けの合図でもあった……。
六月が終わった。
そして七月に入り、だんだん暑くなってきたころ……。
「はぁ……。」
学校では安藤さんがため息をついていた。
「どうしたの安藤さん。」
「おー。どーした鬼桜。」
僕と佐藤も一緒にいる。
ここは学校の教室。
「別に。七月大変だなと思って。」
「……確かに、学校では『七夕祭り』『野外活動』とかもあるし、七月下旬には『終業式』があるね。さて、鬼桜くんは夏休みには何をするのかな?」
佐藤の挑発的な発言に、安藤さんはもちろん反発する。
「は? ありますけど予定。何ならぎっしりすぎて忙しいくらいですけど?」
「ふーん。で?」
「は?」
まーた始まったよ。二人の口喧嘩。
クラスのみんなも慣れすぎて、談笑してるくらい。
「おー、また喧嘩してんのか? お二人とも。」
「西村さんも大変だよね。」
「淳も啓介も、馬場さんたちに変な妄想されない程度にしろよ~。」
いやそれより職員室に呼び出されない程度にしろよ、の方がよくない?
大変だよねと言われても、僕も慣れたし、そこまで気にしてないかな……。まあ、みんなは見てるだけだから分からないか。
「鬼桜くんはどうしてそんなにキレやすいのかな? そんなんだから『落ちこぼれ』なんて言われるんじゃないの?」
「は? 俺にも事情ってもんがあるんですよ。一般人に成り下がった『裏切者』の癖に!」
裏切者?
その言葉は、佐藤が転校してきてから一度も、二人の口から発せられたことも、聞いたこともないものだった。
「いつの話? いいね昔話。好きだよ、そういうの。」
だが、当の佐藤は昔話と笑い飛ばしている。
「ねえ。」
言っておくが、この声は僕のものではない。
僕が聞く前に、この声に先を越されたのだ。
「裏切者って何?」
声の主は、目をキラキラとさせたクラスメイト、有名腐女子の馬場さんだった。
馬場さんの一言は、クラスの空気を一変させた。
――まずい!
馬場さんはさっきまでクールの鈴木さんと本好きの山本さんのもとにいたはずだが!?
鈴木さんと山本さんの方に目を向けると、二人はいつも通り窓辺の席で話をしている。
はずだった。
「いいね。あの三人からは物語でしか見られないような話がどんどん出てくるよ。」
と小さく微笑む山本さん。先ほどの『裏切者』というワードの惹かれ、話を切り上げたようだ。
「確かに。どんな人生歩んできたんだろうね。」
これはクールの鈴木さんのセリフ。どんな人生って、いじめ以外はごく普通の人生でしたけどー!!?
……この二人にはずっと、本の話で馬場さんたちをひきつけていてほしかった……。
作「そういえば、この物語のエンディングって決まってるの?」
白「確かに! 気になるかも……。」
ん? ……ああ……。そうだね。ついでにいろいろ話しちゃおうか。
ナ「え?」
まずはエンディングね? エンディングは、陸が主人公の時はバット……の、予定。
ナ「陸が主人公の時?」
うん。本当はハッピーだけどね。
ナ「へー?」
でもそれは、白銀ノ聖桃蝶も……ナレーターさんも後書きからいなくなって、ナレーターさんが後書きに戻ってきた後の話だよ?
ナ「は!? ……戻って、くる……?」
うん。ナレーターさんが本編に出るのは一瞬で、すぐに死んじゃうの。(ニッコリ)
白「言っていいやつそれ!!??」
あ、でも言っとくけど、陸がバットエンドにしちゃうのはナレーターさんのせいだからね!
ナ「俺!? っていうか言いがかりじゃ……。」