114 二つの兄弟の差
陸視点。
――ピーンポーン
と、インターホンが鳴って。
はーい、と返事をして玄関に向かった。
玄関のドアを開けて、そこには誰もいない……ん?
「優斗さん……?」
※××くん兄弟はピンポンダッシュして帰りました。
・・・
優斗さんはインターホンがついている塀にもたれかかっていた。
僕は優斗さんに駆け寄る。
「優斗さん? 優斗さん。」
優斗さんを軽く揺らす。
返事(?)はないので口元に耳を近づける。
「息は……ある。」
にしてもこんな雨の中……あれ、デジャブ? 前にもこんな状況あったような……。
僕は優斗さんを抱えて玄関まで運ぶ。
「にいさーん。」
僕は家の中に声をかけ、兄さんを呼ぶ。
しばらくすると「はーい。」と返ってきた。
「何? ……って、え!? 優斗!!?」
兄さんは目を真ん丸にして驚いていた。
「状況はなんとなくわかったよね兄さん。」
「あ、ああ。運ぶの、手伝うよ。」
「ありがとう。」
優斗さんを運び、兄さんにお風呂に入れてもらっている間に僕は急遽夕飯のメニューを変更して三人分のご飯を作った。
「はぁ……。意識のない人間ってなんでこんなに重いんだろうな……。」
「兄さん。優斗さんお風呂入れ終わったの?」
「……ああ。……今思ったけど、陸は母さん似だよな。」
「え? 初めて言われた。」
お風呂から出てきた兄さんとの何気ない会話。この平和は、いつまで続くかわからない。
というより、いつも父さん似って言われるから母さん似なんて初めてだ。
「まあ、父さん似でもあるけどな。」
といって笑う兄さん。まあ、僕らの親はもともと親戚だったらしいから、どっちにも似てるだろうな。
「優斗さんは?」
「いるよ?」
兄さんが見ているドアの方を見ると、そこからふらふらとした足取りで優斗さんが出てきた。
頭を押さえていて、顔色が悪い。(記憶を消した影響)
「優斗さん。顔色が悪いみたいですけど、大丈夫ですか? ……大丈夫には、見えないですけど……。」
本当に、大丈夫には見えない。大丈夫か? というのは建前というやつだ。
すると兄さんが小声で話しかけてきた。
「陸、優斗はどうしていつも以上にフラフラなんだろうな。」
「え? わからないけど……また熱でもあるんじゃない?」
……まあ、聞いてみるのが一番早いよね。
「優斗さん。食欲はありますか? 一応、優斗さん分のご飯も作ったんですけど……。」
優斗さんは小さく頷いた。
その様子だと食べるだろうが、そこまで多くは食べられないだろう。
ナ「……××兄弟との差が激しいな……。」
そうだね。でも、この話はさっきまでの哀楽兄弟との比較のための話だから、次からは全く別の話に変わるよ。
作「哀楽兄弟!!?」
白「喜怒哀楽の?」
そうだよ?
ナ「比較の為とかひどいな……。哀楽兄弟がかわいそうだぜ。」
そう? まあ……確かに、そうか……。……次からやっと、本格的なストーリーが動き始める……!
作「怖いからヤメてそういうの……。」