111 赤い瞳の迎え
『……ぇ?』
『何? 話しかけない方がよかったなら帰るけど?』
暇だから声かけたけど、かけない方がよかった? と聞いてくる方は、同姓でも見とれてしまうような美貌の持ち主。
成人はしてるだろうが、300歳と言われても驚かないくらい人間離れしていた。
フワッと揺れる真っ白な髪。染めたわけでも、年のせいでもない。雪のような色。赤味も黄色味もおびていなかった。
すべてを見透かすようにこちらを見下ろす赤い目。赤とオレンジの見たことのない目。
女性のようにきれいな顔立ちだが、しっかりとした骨格は、男のものだ。
(天の迎えか? だとしたら弟がよかった……。)
『失礼な。一応生きてる人間だよ。』
一応……。
……死にかけの人間を笑いに来たのなら、さっさと笑って帰ってくれ。お前の求めてる反応は出来ないだろうから。
服の質的に、貴族だろう。
デザインは……見たことないが、オーダーメイドできるほど金があるなら商人か……貴族か。
(どっちにしろ、ろくなやつじゃない。)
『おいおい。命を助けてもらうにしては、ずいぶんひどい言い草じゃないか。』
『………………。』
今俺の来ている服が、目に入っているだろうに……。
いくら汚れていても、貴族の、いいとこの坊ちゃんには見える。
他国に売るか、金になる使い道などいくらでもある。
ついでに魔力量も多い。奴隷としても、少年兵としても、戦争の道具としても使えるだろうに。
金に困ったことのない子供を一人迎え入れられるほど金に余裕があるという事か……。
『………………おい? 少年? 少年。少年! ……あー……。』
『ん……?』
『ああーー!!!!』
起きてすぐ、高い子供の声が聞こえてきた。
キーンと耳鳴りがして声の主を見る。そこはドアで、少年が一人立っていた。
少年は口元を押さえて目をぱちくりさせ、足元には握りしめていた花が静かに落ちていた。
そこらの花をむしり取って適当に持ってきたのだろう。
この部屋は、もともと住んでいた広い家と同じような大きいドアがあり、天井には大きなシャンデリアが輝いていた。
さっきまで寝ていたベッドは広く、実家に劣れを取らないレベルだった。
『やぁっと、起きたーー!!』
涙目の少年は走ってこっちに抱き着いて来た。
『うう、名前も知らないけど、キミは二週間寝っぱなしだったんだよ。』
そんなにか、と思った。
少年はバッと顔をあげ、こちらを目が合った。
その目は青い。だがその目は、完全な青目とは言えない不気味な目。
髪は白い。だが下に伸びるにつれ緑色のメッシュが濃くなっている。
角が生えた、少年。
少女のような笑い方をする、不気味な少年だった。
『あ、やっと起きたんだ。』
声の主は雪の日に合った白髪の男。
その男は、ドアにもたれかかるように静かに立っていた。
にゅうぅぅぅぅぅ……。(?)
白「にゅ?」(何?)
ナ「にゅうにゅにゅにゅにゅにゅにゅ『にゅ』にゅにゅにゅにゅにゅにゅにゅにゅにゅっにゅにゅ。」
(今日の後書きは『にゅ』だけで会話しようってさ。)
作「いや読みづらいわ。」
(にゅにゅにゅにゅにゅにゅにゅんにゅ。)
作「にゅにも変換されるの!?」
(にゅにゅにゅにゅんにゅんにゅにゅにゅにゅ!?)
ナ「にゅにゅにゅにゅ? ……にゅにゅ、にゅにゅにゅんにゅにゅ……。」
(そうなの? ……いや、そりゃそうか……。)