表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
111/245

110 義弟の


「俺は、裕福な家に生まれたんだ。」


 裕福な家、ではあった。でも同時に、権力を振りかざすクズの家でもあった。

 そんな家の長男に生まれた。


 初めは特に不思議に思わなかった。

 一般的、とまではいかずとも『フツウ』に近いのだと思っていた。


 でも違った。


 普通なんかじゃなかった。


「弟が()()()()()()()()()()()()()()()が。」


 そう。さっきまで一緒に過ごしていた義弟は、死人(しびと)だ。


「弟とは仲が良かったんです。隠し事をしたことなかったし、嘘もついたことなかった。」



 軽い嘘をついたことはあったが、その嘘は二日も持たずにバレて、喧嘩になる事もなかった。

 でも最初に噓をついたのは、義弟だった。


「うちの親、ほんッとクズなんですよ。カスでゴミで、世界の価値を落とす汚物。」


 さすがに言いすぎ……とは思わなかった。当然の報いだと。

 ただその男は、まだ生きている。


「父親は、ずっと家にいました。でも、俺はそれを知らなかった。家は広くて、ばったり会うなんてことはなかったし……。」


 酒に溺れ、豚のように肥え太る父を、ただ傍観していたのは、なぜだったのか。


「でも金はあった。家の働き手は、弟でした。」


 義弟が、働いていたのだ。

 ずっとずっと、つらい顔一つ見せず。無理に笑って。


「その方法は……ッ。」


 言葉が詰まった。

 出ない。言葉が、喉に引っかかる。


「……虐待、暴力で強要して、売春をさせていました。」


 重いだろう。

 出会って一日もたっていない相手から、こんな話をされると、反応に困る。


「……弟が死んで、次に白羽の矢が立ったのは、俺です。」


 そうだ。いつ思い出してもつらい記憶。

 きっと死ぬ瞬間まで覚えているだろう。


「逃げましたよ。必死に。でも、逃げきれなくて……。」


 実際には逃げ切れた。でも、ここですべてを話すのはよくない。


「そのあとの事はよく覚えていなくて、気が付けば、知らない場所の家の裏、暗い路地で、寝転がっていました。」


 その日はこっちでいうクリスマスだった。

 しばらくして雪が降ってきて、家の中から幸せそうな声が聞こえてきて。


 その時、知った。

 必要な物は、お金じゃないと。


 俺はずっと、父の愛を求めていたのだと。

 弟が死ぬ前に、気づいてやるべきだったと。


『見て見てーお父さん! 雪が降ってるよ!』


『おおーすごいな。』


『雪積もるかなぁ?』


 後ろから聞こえてきた声に気づき、静かに目を開く。

 自分の前にある家の壁に移る、子供二人と父親の影。


(………………いいんだ。これで……。)


 もっと早く気づいてやれなくて……ごめんな……。


 思い浮かぶのは、作り笑いであったであろう弟の笑顔。

 一瞬だけ流れた涙も、すぐに枯れて。


 重い瞼をゆっくり閉じ、肌に積もる雪も冷たさも、気にならなくなってきたころ『彼』はやってきた。


『寒そうだね。どうしてこんなところにいるの……なんて、聞く必要もないね。予想外だけど、()()()()()()()()だよね。』


挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

 はぁ……。

作「何?」

 なんだろう。筆が進まない……。

ナ「ほう?」

 前はいい時で一日2~3話書けていたのに……。

白「すごい!」

ナ「化け物かよ。」

 今は一日一話分のみ!

作「でも毎日投降できてるの凄いね。」

 今溜め書き二十話分以上ある。

ナ「化け物だ。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イイネ等、よろしくお願いします。 え? なぜかって? しょうがないなぁ、そんなに言うなら、教えてあげないこともないですよ。 モチベにつながります。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ