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107 春日星輝の誕生


「はぁ、はぁ、はぁ……。」

「はぁ、はぁ……あー疲れた! なんで川になんか飛び込むんでしょうね? 兄さま。」


「はぁ、はぁ……本人に……聞いて、ください。」


 結論から言うと、優斗は助けられた。

 土砂降りのせいで前が見えない川の中で探すのは大変で、気づいたら知らない場所まで流されていた。


「はぁ、はぁ……息は、ありますよね?」


「……えぇ。まあ、息はありますね。」


「体は、無駄に、頑丈ですね……。」


「そうかぁ?」


 クズ狩りではあまり体力を使わず、普段からあまり激しい運動をしない××。

 義兄とは反対に、普段から激しい運動や体力を必要とする行為をする義弟。

 よって、兄の方が息が切れている。


「あ゙あー。俺は月さん……さまに報告してくる……きます……。」


 逃げるつもりだ。絶対に。


「ビショビショ……。最悪……この服気に入ってたのに……。」


 そうつぶやく義弟。


「なら、ついてこなければよかっただけです。……正直、最悪はこちらのセリフですよ。助けに入ったのかと思えば一緒に沈むものですから。」


「いやー流れ強いし、前見えないし、泳ぎ苦手だし……ですし……。」


 「無駄に仕事を増やすな。」と小声で言う××。

 川に入ってすぐ自分の者ではないドボーンという音がして、何かと思えば上から義弟が降ってきた。

 ついでに川への入り方が悪くてお互いの頭がぶつかった。


 そして手探りで優斗を探しているとき手袋越しにぬめっとした感覚があり悲鳴をあげそうになる。

 気を取り直してもう一回優斗を探す。すると指先に何かが触れた。

 掴んで川の上に引っ張ると、優斗ではなく義弟。

 怒りで乱暴に放り投げる。優斗発見後、義弟が流されたのでもう一度川の中に入る羽目になった。


(無駄に仕事を増やしていただきまして、誠にありがとうございます……。)


 これは、簡単に言えば無駄に仕事増やしやがって……という意味である。


 その時、優斗から声が聞こえた。

「……ん……。」

 という声だった。が、二人はとても安心した。

 このまま目を覚まさなければ、後が怖いのだ。


「さぁーてじゃあ俺は月さまに報告に行くのであとはお願いしますね兄さま!!」


 早口で告げ、全力ダッシュで逃げるように去る義弟に驚き、止める前に姿が見えなくなった。


「……あいつ……。」


 久々に怒りがわいてくる。

 こちらに全部丸投げしたのだ。


 そしてすぐ、優斗が目を開ける。

 優斗はガバっと起き上がり、一瞬困惑に顔を染めたが、すぐに絶望に変わる。

 『どうして助けたのか。』『死ねなかった。死なせてほしかった。』と目が語っている。


「……どうして……。」


 一番最初に出た言葉はどうして、だった。

 ××ではない。優斗から出た言葉だ。


 このままだと優斗のペースに持っていかれる。それはダメだ。

 だから、強引にこちらのペースに引き込む。


「初めまして。あなたを助けた命の恩人の……」


 恩を売りつける形にした。相手方のご意向は無視。

 ただ、続ける言葉に迷った。

 本名はよくない。じゃあ、なんと名乗る?


『俺がクズなら、お前はカスだ!』


 ――今日狩ったクズの言葉がよみがえる。

 今思い出してしまったら、一生、生き残る言葉に成る。


「カス……。」

「カス……? えッ、一応初対面……。」


 口から出た小さな言葉を、優斗は拾った。


「ッ、カスガ。」


 思い付きだ。

 焦ってしまった。もう少し考えた方がよかったかとノイズが走る。だが、相手が納得すればそれでいい。


春日(カスガ) 星輝(ほしき)。……俺の名前は、春日星輝だ。」


ナ「いや、カスって……今思い出す言葉じゃないでしょ?」

白「まさか、この前白髪緑メッシュの子供が言ってた『春日さん』がクズの言った言葉が由来していたなんて……。」

作「はっきり言って、カオス!」

 何? 何何? え、今回は××くんを非難する会?

白「まさか。そんなことするわけないでしょ?」

 そうかぁ?

ナ「そうそう。俺たちがそんな非・人道的なこと――」

 お前にだけは言われたくない!!!

ナ「せめて最後まで言わせて!?」

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イイネ等、よろしくお願いします。 え? なぜかって? しょうがないなぁ、そんなに言うなら、教えてあげないこともないですよ。 モチベにつながります。
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