103 隠された運命
「……いつの間にか、ネズミが入り込んでたみたいだ。さて、どうするべきか……。」
そう言う空は立っている。回転扉にもたれかかるようにして。
見下ろされているようで不快感を覚える反面、物凄く焦っている。
最悪、消されるかもしれない。いや、もうすでに――。
(この家の広さや家具、そして空の破壊活動など。それを考えると結構な資産家だろう。)
大丈夫。落ち着いて。
……いや本当に大丈夫か?
考えろ。考えるんだ。
頭を回せ! 舌も体も動かない!
「ま、いいけどね。どうせ優斗喋れないし。」
許された?
「……でも、喋ったらどうなるかなんて……言わなくても分かるよな?」
残念ながら、わからない。
口に出されてもいないのに、どう分かれと言うのだ。
なんとなく察してくださいじゃない。いくら考えたって、俺に『普通』が分かる日は来ないのだから。……いや、空の家も普通じゃないからこそ、余計にわからなくなる……!
という心の叫びと焦りは、先ほども言ったように口に出さねば伝わらない。
だが、俺にその手段はない。ありはするが、使えない。
空は一回ため息をつき、俺に近づいて目の前でしゃがむ。
俺と目線を合わせてくれたのだろう。
「言ったら死ぬんだ。優斗。死が何か、なんて、ここの説明は要らないな? 優斗。」
有無を言わせない迫力があった。
「俺の意思で消そうとするわけじゃない。監視されてるんだ。この前来た時も。もちろん今を含めた、全部。」
え、ヤダ。鳥肌立った。
感覚がマヒしてるせいで、恐怖心よりも生理的な嫌悪が先に浮かび上がってくる。
「いいな? 優斗。今回はいい。俺が言っておこう。」
だれに。
「………………。まあいい。二度目はないからな。このことを陸に話すなよ。俺も、友達を消したくないんだ。」
……?
…………ハッ。……よし。最後の一言は置いておいて。
つまり、このことを誰かに話したら殺されるのか……。
(別に……問題はないな……。)
俺のせいでこの兄弟仲にひびが入るのは嫌だ。俺にもきょうだいがいる。……気持ちは、分かるんだ。
ただその兄弟の内数人が死んでいる。
そんな俺にとって、死は甘く、生は辛い。
俺は死を空や陸のように重く考えることはできない。
死がすぐそばに迫っていると言われたら、俺は甘んじて受け入れる。
静粛に解ける闇は深く、終焉の香りや永遠の抱擁と共に訪れる。
ただ今は、空の忠告を無視するメリットはない。
陸に情がないわけではないが、ここの秘密を知らせ、兄弟仲にひびが入り、俺が死ぬのと……。
このまま黙り続け、現状を維持し続ける。――これのどちらが最善と選択と言えるだろう。
ほぼ一択である選択肢は、選ぶまでもない。
俺は、空を見上げて力ずよく頷いた。
優斗はどちらかというと、今も誰かに監視されている方が怖かった。
静粛に解ける闇は深く、終焉の香りと共に永遠の抱擁と共に訪れる。
簡単に言うと、こう ⇊
静かに消える暗闇の中で、終わりが訪れ、永遠の安らぎがもたらされる