102 付け足された扉
明らかにおかしい。
前回はここまで気が回らなかった。
だが、決めつけるには証拠が足りない。
裸足のままでベランダを歩く。
角を曲がると、すぐに空の部屋につながるドアが見える。
……空には申し訳ないが、入らせてもらおう。
正面から入るわけではないのに加え、夜中なので良心が痛む。
夜の冷たい風を感じながらドアに向かって歩く。
ゆっくりとドアを引き、中を覗く。
(……やっぱり。この部屋には――。)
――何か隠されている。
空の部屋は陸の部屋のように四角ではなく、不自然な角がある。
まるで、そこに通路でもあるように。
部屋の中に入り、情報を整理する。
(陸の部屋の大きさと外から見たときの違和感。空の部屋に入ってすべてがつながった。)
前回屋上で手に入れた鍵は、地下室でもあるのかと思っていたが……。
隠し部屋ね……。
(……ん?)
その時気付いた。
振り返る。空が寝ているはずのベッドに視線を向ける。しかし、そこには――誰もいない。
(……空が……いない……!?)
そう。空が居ないのだ。
その時は、トイレにでも行ったのだろう、と軽く考え、そのままスルーした。
もしトイレに行ったのだとすればじきに戻ってくる。だから早めにこの部屋を出よう、と考え、ベランダに戻る。
陸の部屋に戻り、廊下をそーっと除く。
するとそこに、部屋にいなかった空の姿があった。
「ッ……!」
息を殺して、ばれないように廊下を覗く。
なぜなら空は、壁の中から出てきた……いや、今まで壁だと思っていた壁のような回転扉が開き、中から空が出てきた。
「………………。」
声が出ない。
声を出してはいけない状況だから助かっているが。
空はそのまま空の部屋に入っていった。
回転扉。なぜ?
中に何があるのか、気になる。
ゆっくりと、足音を立てないように近づく。
回転扉に触れると、扉の冷たさが感じられた。
ごくりと息をのむ。
音を立てないように、慎重に体重をかけ、ゆっくと押す。
回転扉は意外と軽く、簡単に開いた。だが、その扉はどこかにあるボタンか何かを押さない限り鍵がかかっているという仕掛けらしく、早くしないと閉じ込められてしまう可能性がある。
回転扉の奥、入って左側にあるドア。このドアの奥は見えない。
下から覗く。残念。暗くて見えない。
(仕方ない。この前屋上で見つけた鍵を試してみるか。)
今もポケットに入れてある。
ペタンと床に座った状態でポケットに手を入れる。
この場所には窓が無いから完全に真っ暗だ。何をするにも手探りである。
その時、物音が聞こえた。
回転扉の方からだ。扉を見ると、そこに立っていたのは空だった。
(眠ったわけじゃなかったのか……!)
ドアから挿す光細長いが優斗を照らし、少し眩しさを感じる。
「……いつの間にか、ネズミが入り込んでたみたいだ。」
汚い汚い、ドブネズミ。
作「漢字の書き取り飽きた……。」
ナ「もうやりたくない……。」
お疲れ……。
作「他人事だと思いやがって――」
白「お疲れ二人とも。これ、報酬ね。」
お菓子の箱?
作、ナ「いる!」
パカ……(お菓子の箱を開ける音)
作、ナ「………………。」
……え? どうしたの二人とも――って中身無し!!?
白「……ふっ、心で味わえ!!!!!」
無茶ぶりすぎる……。