100 歪みの刃
え!? 100!!?
「ところで、何の用なんです?」
「……はい。ゴールデンウィーク、例のビー玉が割れる前に、パンッという小さな音が聞こえた――」
――ブブッ
ブブッという音が聞こえて弁護士の隣に少年が現れる。
それも、ただ隣に現れたのではなく、上、弁護士の斜め上の空中に現れたのだ。
少年は短刀を右手で持ち、左手を添えて弁護士の首めがけて短刀を下ろそうとする体勢だ。
今まで感じたことのない殺気に、腰が抜けそうになる。
「こら。」
――パンッ!
その瞬間、藍華が手を叩き、少年を止める。
少年は勢いを無くし、地面に足音も立てずに、フワッ……と、しゃがむように着地する。
そして間もなくして再びブブッと音がなり、藍華の斜め後ろに戻った。
どういう原理なのか、ではなく、アレはテレポート、と呼ばれるものなのだ、という事を考えるようにした。
余計なことを言うとまた殺されかけない。
「……これでわかったでしょ。余計なことを考えるな。考えたら――殺す。」
藍華はまるで、横にいる少年の言いたいことを代弁するように話す。
真面目な顔ゆえに、本気なことが分かる。人として、良心は持っていたようだ。
「……わかった。」
少年の手に短刀がないことを確認し、そう返事をする。
ただ、少年はダボッとした黒に近い暗めの色のフード付きマントを身にまとい、向こうの情報が何一つ入手できない。
弁護士の分かったという返事に、少年は微笑む。
口元しか見えずとも、そのくらいは分かるくらいに大きな笑みを浮かべていた。
(……アレは、少年じゃないな。)
少年なら、あんな笑い方はしない。
あの笑い方は、子供のふりをする大人の顔だ。
「……そうね。あきらめた方がいいわ。……でもね、ゴールデンウィークであった、優斗……って子、いるでしょ。」
「……いますね。」
「伝えておいてほしいことがあるの。」
「……ものによりますが……。なんでしょう。」
藍華はフッと笑う。
「”ありがとう”と……。」
「ありがとう? どうかしてますね。痛みに目覚めましたか?」
「違うに決まっているでしょう?」
……冗談だ。
「ただ、私は怒られたのよ。初めてね。今までは、本来の立場に立てているようで立てていない、そんな不思議な感覚だった。私は初めて立てた気がした――。」
わからない。
ぼかされている。肝心なところが分からない。
「妹としての立場に。やっと、兄さんに怒られ――」
少年が動いた。
今度こそ確実に仕留める――その殺気が、空気を凍らせた。
先ほどまでは添えられているだけだった。
最低でも一センチは離れていた刃が――。
――ゼロ距離で、藍華の首にあてられていた――。
「ッ――!!」
弁護士は思わず悲鳴を上げる。
ただ、藍華は落ち着いている。まるで、対処法を知っているかのように……。
(大丈夫……。落ち着いて……。まだ助かる……。助かるすべはある……。ただ、一歩間違えれば死ぬ状況――。)
――懐かしいわね。十代のころに戻ったみたい――。
藍華は一度深呼吸をして、口を開く。
「……まだ……核心には触れていないでしょう?」
まるで、今殺すのは違う、とでも言うように……。
案の定、少年はスッと引き下がった。
これ以上はダメだ。
神経が持たない。
そう思った弁護士は、本家である媿野家に戻り、今日の事を海斗に報告することにした。
待って!? 自分作者だけど、やっぱり白髪緑メッシュの子供怖い!!
作「そう?」
そうだよ!
ナ「ちょっといったん静かにして。」
え?
白「今無学のナレーターさんに漢字の書き取り練習させてる。」(スパルタ教師)
スパルタそう。
作「そんなに漢字書けないの? いや私も人の事言えな――」
白「じゃあ作者ちゃんも一緒にやりましょう。」
満面の笑み!!