99 見えないものを見る者
99!? ……早ッ……!!
この話は長かったので二つに分けました。
(別の場所です。)
ある日、海斗によって遣わされた弁護士は、ゴールデンウィークに起きた誘拐事件の加害者、月影 藍華と話をしに来ていた。
「……初めまして。」
「……あら……。」
弁護士の方からあいさつしたにもかかわらず、園長先生こと月影藍華は視線だけを左隣に向けた。
驚いているのか、それともまた来たのか……とでも言いたいのか。
この場合は後者だろう。顔が物語っている。
「まあまあ、初めまして。月影、藍華と申します。」
藍華はようやく弁護士に目を向け優雅に挨拶をする。
事件当時は見られなかった一面。
施設の子供の手術費が必要だった、というのは本当だ。ならそれだけ焦っていたのだろう。
実際、冷静であれば魔法を使う不思議な少女、光莉にも説明できていただろう。
「……そこに、何かいるのですか? 私には何も見えませんが……。でも、藍華さんには確かに見えているんですよね?」
この会話を記録している記録係の目を気にしてぼかしながら伝えるように心がけてはいるが、この状態ではやりづらい。
だが、幻覚の可能性もある。
だが藍華は静かに微笑む。
「大丈夫です。聞こえていないので。……というより、何の会話をしているかわからない、が正しいですかね?」
「それは……どういうことだ?」
それは、例の魔法とやらに関係しているのだろうか。
「安心して。魔法とは関係ないわ。……それより、あんまり深く聞き入らない方が見の為と言えるわよ。」
この意味深な発言に首を傾げそうになる。
ただ、傾げそうになった瞬間、藍華の横、先ほど藍華が見ていた方向の空間がグニャリと歪み、フードを被った少年が霧のように現れる。
少年は藍華の首に短刀の刃を向けていた。 その目は、まるで獲物を狙う猛禽類のようだった――。
「!? だれだ!?」
「ご安心を。下手なことを言わなければ攻撃してきませんよ。」
少年の顔はよく見えない。
少年をじっくり観察していると、いきなり手を弁護士の方に伸ばして何か魔法をかけるかのように振る。
するといつの間にか、弁護士の首に蛇が巻き付いていた。
目元に大きな古傷がある、白い蛇。
蛇は威嚇するように「シャー」と鳴いた。
弁護士は息をのむ。
たったの数秒。この数秒は、今までで一番長く感じた。
「ごめんなさいね。戻してもらえる?」
藍華は隣にいる少年に声をかける。
すると少年はもう一度同じようにこちらに手を伸ばし、今度は引き寄せるように手を振った。
すると弁護士の首にいた蛇が霧のように消え、瞬きした瞬間に少年の手の上に蛇が居た。
少年は「どうだ!」とでも言いたそうな自慢げな顔で笑っている。
この自慢げな表情で、さっきまでの威圧感がスッと消えた。
少年は藍華に向けていた短刀をしまう。
威圧するのに飽きたのか、それとも疲れたのか。見た目の年齢を考えたらおかしくはない。
白髪緑メッシュの子供じゃん。
そうだ。二つに分けられたこの話は、本来話の終わりであるはずだったこちらの後書きではなく、次の話の後書きになりますので、ここに後書きコーナーはございません。(正直言って、ネタ切れである。)