第9話 ルビアとの出会い~過去の話~
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百数回目の世界。
その世界で……魔族の侵攻が始まってから少しした頃――。
「森の奥にいるって魔女、魔族じゃないかって噂だぜ」
森に囲まれた小さな村。
そこの酒場で飲んでいると、気になる話が聞こえて来た。
「かもな。人目を避けるようにコソコソしてやがる」
「近いうちに村人全員で魔女を襲いに行くって話もあるぜ」
「……ならよ、俺たちだけでやっちまわねぇか……?」
「そりゃいいな! 結構いい体しててよぉ……正直見るたびにヤリてぇって思ってたんだ!」
「魔族かもしれねぇからな! 村のためにヤッちまおうぜぇ!」
「「「ギャハハハ!」」」
見るからにゲスの極みの男たち。
魔族と言うのも気になるが……見過ごすことができなかった。
「その話、俺も乗っていいか?」
「あん? 聞いてやがったのか……まぁ、いいけどよ」
◇
「やっぱよぉ、最初は俺にヤラせてくれよ!」
「ふざけんな、最初は俺だって決めただろう!」
森に入って数日、ずっとこの調子の男たち。
こいつらは……女性を何だと思っているのか……。
「おい! あそこ見ろっ!」
「魔女だっ! ギャハハ! 遂に見つけたぜぇ!」
見てみると……エルフ?
緑の髪、長い耳の美しい女性が木の実や果物を抱えて歩いていた。
「――え? こんなところに……? 何ですかあなたたちは!」
「うるせぇっ! おい、抑えろ!」
「任せろっ!」
道中の対魔物とは大違いの、流れるような動きで女性を組み伏せ……どんだけ手慣れてるんだ!
「やめっ! 放して――」
「お、おい! 魔族かどうかの確認をするんじゃ――」
「うるせぇっ! んなこたどうでもいいんだよ! いい女を犯せりゃな!」
もがきながら暴れるエルフを前に男がズボンに手をかけ――。
「ヒィッ!?」
「がははっ! 恨むなら、自分のエロい体を――ぷぎゃっ!?」
ズボンの男が頭から血を流しながら倒れる。
……。
限界だった。
初めて人を、自身の手で殺してしまった。
いや……こいつらは魔物と同じだ。
そう思えばどうってことなかった。
「おまっ! 何してんだよぉぉぉ!?」
「その薄汚い手を放せっ! この人は魔族じゃないだろうが!」
エルフを魔族と呼んでるのか正直わからない。
だが、どう見ても悪い人じゃないっ!
「わ、わかったからっ! その魔法を――ぐぎゃぁぁっ!?」
アースランス、土でできた槍を男の胸に突き刺す。
「くそ……くそぉっ! くらえ! 『ファイヤー――』」
「遅いっ!」
最後の1人が手をこちらに向け――る前に、心臓を貫く。
「……」
「……あ、あ……」
残ったのは……呆然としているエルフさんと血まみれの俺。
これで……良かったんだ。
「……怖い思いをさせてすまない」
「――あっ……えっと、ありがとう、ございます?」
「感謝しなくてもいいよ……こいつらは俺が連れて来たようなもんだし……」
ここに来た事情を説明する。
っていうかこいつら弱すぎて俺がいなきゃ来れなかったと思うし。
「……村でそんな噂に……」
「まぁ、ね。残念だけど、こいつらだけじゃないよ」
暴漢たちの【ギフト】をロードしながらエルフの美女、ルビアさんに答える。
うわ、こいつ【魔力操作】なんてユニークギフト持ってるんだが!
「困りました……ここから離れようにも……」
死んだ男たちじゃないけど、ルビアさんはとても美人で……。
きっと色々あってこんな人里離れたところにいるんだろう。
「ならさ、俺と一緒に来ない?」
「え……?」
ルビアさんの寂しそうな目に……思わず口にしていた。
「俺さ、こう見えてまぁまぁ強いから! 少しは守ってあげられるよ!」
「むむむ……」
腕を組みながら……何となく笑顔のように見えるルビアさん。
「じゃあ……お願いしようかな~!」
◇
その後の旅はかつてないほど進むことができた。
彼女の持つユニークギフト、【広域化】が非常に強力で……少ない魔力で広範囲攻撃を可能にするもの。
そして暴漢から手に入れた【魔力操作】のおかげか、俺の【ギフト】レベルもどんどん上がっていった。
そして――魔族の侵攻を食い止めていた国が敗北し、いくつもの国が滅びた頃……。
「『死に戻り』、それと『能力の継承』……」
「うん、それが俺の本当の【ギフト】だよ」
人間の住む唯一の街。
そこで……俺は人に初めて【ロード】のことを話した。
「不思議な【ギフト】ね……初めて聞いた……」
「うん……」
実は女神に直接貰った、とはさすがに言えなかったが。
「……私ね、【ギフト】が嫌いだったの。この力のせいで……うまく制御できない【広域化】のせいで、生まれ育った村から追い出されちゃって……」
「……」
「人間に村が襲われた時ね、魔法を発動したら……全部吹っ飛ばしちゃったの!」
笑いながら言う彼女だが、その目はやはり寂しそうで……。
「けど、その【ギフト】のおかげであなたに出会えた! だから……今は好きよ」
「……そっか」
好き、という言葉に思わずドキッとしてしまった。
「……だからね、また何度でも会いに来て……もう、ひとりぼっちは嫌だから……」
「ルビア……」
それは……つまり……。
「ふふ! 『君の能力が必要だ!』なんて言われたら、きっとついて行っちゃうから~!」
泣きながら笑う彼女。
「……約束よ? 何があっても……何回でも……」
その顔は……未来永劫忘れることはないだろう。
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