第7話 覚悟
「さってとぉ! 次はどこに行こっか!」
「ん~……」
イセのおかげでこの街を襲う魔物の大氾濫はなくなったはず。
つまり、1か月もの時間的猶予ができた。
となれば……。
「あ、あのさ……」
「うん? なぁに~?」
「……に、人間ってさ……年中発情期、らしいよ……」
1か月も猶予があるなら……いいよね!
「……」
「……本当に前に進めなさそうね……」
……。
だから言ったじゃないかーっ!
「ふふっ! しばらくは……特別な時だけねっ!」
「……くっ!」
「その代わり……ちゅっ♡」
はわっ!? はわわわわぁ~!
「……キスだけはたくさんしようねっ」
「……うん」
……ところで、獣人さんの発情期の件は……?
「……もっかい……」
「もぉー、しょうがないなぁ~っ! ちゅー――」
その時!
扉を叩く音が聞こえた!
「お客様、そろそろチェックアウトのお時間です」
「……」
「……あはは」
むしろありがとう。
これで……前に進める!
◇
「それで、どうするの?」
「そうね~……」
自分の宿に戻り、謎ピンクを拾ってから街をぶらつく。
「ぴぃ~! ぴぴぴっ! ぴぃー!」
「あっはは! リムリムったらぁ~!」
謎ピンクがイセの頭を尋常じゃないくらいはたいているが、全く気にしていないイセ。
いつの間にかリムリムだなんて名前まで付けて……あ、放り投げた。
「あはは! リムリムよく飛ぶねっ!」
「ぴぃ~~~!」
投げられては飛んで戻ってきて、また投げられては……。
……さて、まじめに考えよう。
今後の1番重要なポイントは、およそ2か月後に始まる魔族の侵攻。
邪神復活を目論む魔族の人間の領土への侵攻だ。
これをしばらく阻止するのが、姫騎士ローズ率いるシュペールベルク王国。
何もしなければ更にその2か月後に……彼女は戦死、人間の国々もほとんど滅びてしまう。
なので、遅くとも2か月後までには他のみんなと出会ってローズの元にたどり着きたいと思っている。
もちろん、自身の【ギフト】レベルを上げながら。
ということで――。
「実はね、ここから南に行った先の森に知人が住んでるんだ。その人に会いに行きたい」
エルフの女性、ルビア。
冷静で聡明で、だけどほんとはとっても優しく寂しんぼなお姉さん。
自身の力を高めながら、いつも通り彼女に会おう。
問題は、イセが付いて来てくれるかってこと。
「魔物とかも出て危険な旅になるかもしれないけど……一緒に来てくれるかな?」
「へ?」
きょとんとした顔をして――。
「どうしよっかなぁ~! 一緒に行って欲しいの~?」
「うん……」
「どのくらい? いつまで一緒にいればいいの?」
……とてもいじわるな顔をしていらっしゃる。
そりゃあ、一緒にいれないならやり直したいくらい……いや……。
「で、できれば……ずっと……」
「ずっとって? その知人さんに会うまで? あなたの旅が終わるまで?」
「ずっと。できれば…………俺の死を看取って欲しい」
出会った翌日に何言ってんだ俺!
やばいやばい、俺の感じている時間と彼女の感じる時間は違うんだから――。
「――うん」
「ご、ごめん急に変なこと――って……?」
「決めたわ! 今決まった!」
え!?
「あなたがおじいちゃんになって亡くなるのを見送って、その半年後に私もたくさんの子どもや孫に見守られながら死ぬのっ!」
「イセ……」
「あなたがいない間に、あなたとの思い出をみんなに語りまくるのっ! 本にするのもいいわねっ!」
あ、これ……だめだ、泣きそう……。
「イセ……!」
「だから――」
俺も決まったよ。
【ロード】が無くなって、どこかまだ不安が大きかったけど――。
「それまで、ずーーーっと一緒にいようねっ!」
「ああっ!」
そのための、覚悟が――今!
******
「……ずっと、いっちょ……」
「ぴぃっ!」
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