第2話 最後のはじめまして
「……――はっ!? …………えっ!?」
気が付くとそこは最初に訪れる町、マリーノのハンターギルドの前だった。
「こ、ここは……?」
前世のものより既に見慣れた……中世ヨーロッパ的な街並みだと感じたことを覚えている。
死に戻る時はいつも女神の前から始まるんだったんだけど……。
「……戻った……のか?」
俺は……女神に能力を奪われた上に殺されたはず。
刺された胸に手を当ててみる……傷はないけどまだ鮮明に感触を思い出せる。
「……『ステータス』」
女神から授かった【ロード】の、死に戻りとは別の能力。
それは『死者から能力を継承する』こと。
【ロード】を失った今、使えるかどうかわからないが……。
「――あ、よかった……」
【ステータス】
個体名:久保田天仁
目の前に展開された立体ディスプレイを見て少しだけ安心する。
能力が発動したということは、継承した【ギフト】自体は生きていると言う事。
しかし表示される情報が少ないということは能力レベルは低くなっている。
以前【ロード】のレベルが上がったことで他のギフトレベルも引き継げるようになっていのだが――。
「ぴぃ~!」
「え?」
状況確認を続けようとしたのだけど……肩にいつの間にか――。
「なっ! 何だ!?」
「ぴっ!」
丸い顔に白い翼の生えたピンクの生き物。
何度も経験した死に戻りの中でも、こんな生物は見たことはない。
危険はなさそうだが……。
「えっと……」
「――ぁ」
そこに聞き覚えのある女の子の声が聞こえた。
そうだ、この世界に降り立つとすぐに彼女に――イセに出会うんだ!
何万回繰り返しても彼女との出会いだけは変わらない!
いつも俺を見かけた彼女は――!
「あ……あぁ…………あっ!」
……ジョロジョロと、何かがこぼれる音が……。
「……」
「……」
お、おもらししてる……?
そんなこと1度もなかったんだけど!?
「大丈――」
「あ、あなた! 駆け出し冒険者ね! 私が面倒を見てあげるっ!」
いつも最初に俺を見つけた彼女が明るい笑顔で言うセリフ。
何万回も聞き、そのたびに胸が張り裂けそうになっていたその言葉。
今は――泣き笑いしながらおもらししている彼女に、少しだけ戸惑っている。少しだけね。
……変わらない出会い、どこ行った……?
「ちょっ、ちょっとだけ待っててね!」
そう言って物凄い勢いでどこかへと走り去って行く彼女。
「……一体どういうこと……?」
この後『何だか弟に似てるっ!』とか言って色々世話を焼いてくれてそのまま一緒に行動する、というのが今までの流れ。
「ぴぃ~……」
今回の死に戻りはわからないことが多すぎる。
その中でも最もよくわからない謎ピンク生物を突きながらイセを待つことにした。
◇
「あ、あははっ! それじゃ……一応冒険者の基本的なことから確認するね!」
「う、うん! お願いします!」
どうやらおもらしのことはなかったことにするらしい。
「冒険者は……って、やっぱりこの確認いるかなっ?」
「? うん、頼めるかな?」
本当は何度も聞いてるから知ってるけど。
それでも彼女との会話を大切にしたい。
……これで最後かもしれないからね。
「でも――って、痛たたっ!?」
「あ、こらっ!」
謎ピンクが翼でイセを叩きだした!
「ぴぃっ! ぴぃ~っ!」
「えっ!? あああ、ごめんなさいっ! わかったからっ!」
そして何やら謝っているイセ。
会話でもしているのだろうか……。
「……コホン。ハンターは、魔物を倒したり素材を集めてお金を稼ぐ職業だよっ! ギルドは情報の提供とかしてくれる組織だよっ!」
「え? あ、うん……」
何だかいつもより簡潔な説明だ……。
もっとこう、『私は家族を奪った魔物を許せなくてハンターになったのっ!』的な会話が……あれ、この会話はもう少し後だったっけ?
「【ギフト】の確認は……必要?」
「うん、お願いしていい?」
ステータス測定器はギフトレベル5相当の情報が表示される魔道具。
自分の【ステータス】のレベルが低いうちはこの測定器に頼ることになるだろう。
「【ギフト】はね、1人に1つだけ貰える能力だよっ! 使っていけば能力のレベルが上がって強くなれるっ! レベル5で達人クラス、レベル7もあれば王宮勤めでウハウハねっ!」
「うんうん」
俺の場合は魔力上限が上がれば【ギフト】のレベルも戻っていく……はず。
魔法の『使い方』は覚えてるからね。
「基本の能力と言われる火、風、地、光、闇の属性と、珍しいユニークギフトって言うのもあるんだよっ! 私の【身体強化】もその1つ!」
同じユニークギフトでも、比較的多い種類もあるし唯一無二の物がある。
【ステータス】は前者、【ロード】は後者だ。
「ユニークギフト持ってるんだ! 凄いねっ!」
「うんっ! 誰でも使える無属性魔法の中にも身体強化はあるんだけど、私のは更に特別みたいなのっ!」
……むむむ。
いつもなら『どうして私の身体強化だけ別に表示されるんだろう』との会話があるはず……。
『きっとあなただけ更に特別な能力なんだよ、素敵だね』というナイスフォローをして好感度を稼いで来たというのに……!
「それじゃあ早速測定してみよーっ! さぁさぁ! 張り切ってどうぞ!」
「……わかった」
ドクンと心臓が跳ねる。
震える手を必死に伸ばし、ゆっくりと水晶に触れると――。
【ステータス】
個体名:久保田天仁
種族名:ヒューマン
魔力 :105
無属性1
ギフト:火属性1 水属性1 地属性1
光属性1 闇属性1
ユニークギフト:言語理解5 身体強化1
広域化1 鼓舞1 危機察知1
隠密1 隠匿1 ステータス1
魔力操作1 空間魔法1
「……どう?」
「あ、あぁ……」
やはり、【ロード】は……。
つまり……もう、何があってもやり直すことができない……。
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