最初に滅亡したのは某国です。(前編)
まだまだ暑い日が残る9月のある日の深夜、黄海に隕石らしき物体が落下した。
落下した隕石らしき物体は海に激突する寸前に6つに分裂して落下。
付近を航行している船は無く、遠く中国や某国で深夜偶々海を見ていた者たちの通報で、それぞれの国の軍船が調査に赴いたが何も発見できなかった。
隕石らしき物体が黄海に落下してから一週間程経ったある日の早朝、中国の黄海に面する沿岸部に巨大なモンスターが上陸する。
1体だけで無く6体もの巨大なモンスター。
海岸沿いで犬を散歩させていた親子の父親が上陸したモンスターの1体を見て、疑問の声をだす。
「なんじゃアレは? ヤドカリか? イソギンチャクか?」
取り乱す父親より子供は少し冷静で、モンスターを見ながら父親の問に答える。
「○ラーメンのカップみたいだね」
子供が言ったように、石油コンビナートの石油タンク程の巨大な大きさだという事を除けば、カップラーメンそっくりな形をしていた。
それも胴体らしき部分に赤地に黒の模様が入っていて、その黒い模様が何となく辛の字に見える。
そう某国の某メーカーの○ラーメンカップをそのまま巨大化させたようなモンスターが上陸して来たのだ。
ただ父親が言ったようにヤドカリのようにもイソギンチャクのようにも見える。
カップラーメンの容器の下部からヤドカリを思わせるような足が10数本伸び出ていて、忙しなく動くその足で移動しているのと、カップラーメンの上部の蓋が開かれイソギンチャクを思わせる麺ような触手が数百本蠢いているからだ。
モンスターは足早に沿岸部から近くの都市に向けて移動し、麺のように見える触手で進行方向にいる人を掴み上げ蓋の下に口があるのか蓋の下に掴み上げた人と共に引っ込むと、次にその触手が現れた時には人の姿は無くなっていた。
それが6体、人口密集地の都市に向けて逃げ惑う人を掴み上げ飲み込みながら移動して行く。
人だけで無く犬も猫もパンダも触手に掴み上げられ次々と食われていた。
モンスターの上陸に気がついた中国軍は素早くモンスターの周辺に陣取り攻撃を開始する。
沿岸の沖合に急行した海軍の艦艇は艦砲や機関砲を撃ちまくり、対地ミサイルを矢継ぎ早にモンスターに叩き込む。
モンスターの周辺に展開した陸軍の各部隊は歩兵の小火器だけで無く戦車砲や重砲を撃ちまくる。
空軍もまた爆弾やロケット弾などを満載した攻撃機や爆撃機を向かわせ、モンスターを攻撃した。
だがどれだけ攻撃を加えても、モンスターにダメージを与えるどころか掠り傷も付ける事が出来ない。
空軍は虎の子のアメリカの本物のデータをパクって作ったバッタもんのバンカーバスターを、モンスターの上部を覆う薄ペラに見える蓋に叩き込んだ。
だが、見た目が紙のように薄ペラに見える蓋なのに傷1つ付かなかった。
中国製のバッタもんで本物より著しく性能が劣っていたからかも知れない。
ただ此れで中国政府と軍は、モンスターに通常兵器では太刀打ち出来ないと気が付かされる。
あと彼等に残されている手は核兵器だけ。
しかしチベットやウイグルなら躊躇する事無く使用するよう指示するが、モンスターがいるのは人口密集地の沿岸部。
手をこまねいている訳にはいかない、モンスターは刻一刻と青島、塩城、煙台などの大都市に近づきつつあるのだ。
中国の国家主席がブルブルと震える手を核ミサイルの発射を指示するボタンに伸ばし押そうとした時、突然、空高くから6筋の光線が伸びて来てモンスターを拘束した。
国家主席が軍の高官が逃げ惑っていた中国人民やパンダが、雲1つ無い空を見上げる。
見上げた先には巨大な宇宙船が浮かんでいた。
黄海にモンスターを拘束した巨大な宇宙船が着水し浮かんでいる。
その宇宙船の上では中国の国家主席とオブザーバーとして出席している世界の主要国や近隣の国々の大使が、宇宙船の持ち主の謝罪を受けていた。
あのカップラーメンのようなモンスターは宇宙船の持ち主の宇宙人が率いるキャラバン隊の荷物で、運んでいた船の荷室の扉が故障し逃げ出した物。
途中でその事に気が付き引き返して来て、地上で暴れているのを見つけ拘束したと言う。
宇宙人は平身低頭で謝罪し、損害賠償としてダイヤモンドやルビーにエメラルドなどの宝石類、それにモンスターのドラム缶程の大きさのカップラーメンそっくりな卵を数千個差し出した。
モンスターの卵は乱暴に扱い刺激を与えなければ孵化する事は無く、数千年経っても腐らず保存食に適していると言い、食する時は上部の薄い膜を剥がして沸騰した湯を注ぎ3分間待てば食べられると言う。
国家主席は差し出された宝石類や卵だけでは不満ではあったが、通常兵器が全く太刀打ち出来なかったモンスターを軽々と拘束した宇宙人の科学力には敵わない、此処で下手にゴネると宇宙人が怒るかもと思いそれで謝罪を受け入れる事にする。
だが、オブザーバーとして出席していた某国の大使が不満の声を上げた。
つづく