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能登羽警部のバカミス事件簿  作者: 恒河沙
電車の殺人
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電車で乱射

「ちょっと、切符切ってよ~! 切られた切符集めるの好きだったんだよ~!」

「すいません、現在は改札に切符を入れるシステムとなっておりまして……。」

「え~~、じゃあ、最近の切符は切られないの?」

「はい。」

「つまらないねえ~、最近の鉄道は~!」

「能登羽警部! 捜査には切符を買う必要はないですよ!」


 神宮寺が改札で駅員に絡んでいる能登羽に声をかけた。


「そうなの?


 ところで、神宮司君。切符を切るはさみ持ってない?」

「持ってないですよ。


 そんなもの誰も持っていないですから、諦めてください!」


 神宮寺はそう言って、能登羽を現場に引っ張っていく。現場である電車の車両へと能登羽を入れた。


「こりゃまたひどいねえ~!」

「ええ、マシンガンで腹を32発撃たれています。


 被害者は佐竹哲夫、この駅の近くの光華高校に通う高校3年生です。被害者はそこの倒れている場所ではなく、こっちの背もたれが穴だらけの席に座っていたようです。」


 そうして、神宮司は背もたれがボロボロに破れ、被害者の血が滲む席を指さした。


「そして、マシンガンを乱射した犯人はもう分かっています。


 柳ウメ、85歳です。現在は署で事情聴取中です。


 ウメはマシンガンを杖代わりにして、ここから40分かかる倉間駅から電車に乗り込んでいました。どうやら、40分間、老人に席を譲ってくれない人たちにいら立っていたようです。」

「ちょっと待って、この電車は結構混むの?」

「はい、ちょうど倉間駅から込み始めるようです。


 そして、ウメはついに席に座っている被害者に声をかけました。しかし、被害者は席を譲らなかったので、ウメはマシンガンを乱射しました。」

「なんで?」

「なんでとは?」

「マシンガンを杖代わりにすることはいいとして、なんで、マシンガンを持っているおばあさんを前に、被害者は席を譲らなかったの?」

「そこは分かっていません。」

「だって、普通はマシンガンを持ったおばあちゃんがいれば、誰だって席を譲るよ。


 それなのに、席を譲らないなんてことあるかい?


 被害者は男だよね?」

「はい。」

「だったら、妊娠はしていない。


 病歴は?」

「特にありません。健康体だったそうです。」

「じゃあ、病人でもない。


 だったら、席を譲るはずだね。」

「でも、席を譲らなかった。さらに、ここが彼の学校の最寄り駅なのにだ。


 これは何かあるね。


 ちなみに、被害者に連れはいたの?」

「はい、いました。


 駅のホームのベンチに座って、血が付いている服を着た少年が、被害者の連れの霧島誠吾です。


 被害者とは同じクラスだったそうで、仲良くしていたそうです。」

「話を聞こうか。」


 そう言って、能登羽は車両を出て、霧島の近くへと近寄った。


「すいません。


 佐竹さんの友達の霧島さんでしょうか?」


 霧島は能登羽の顔をちらりと見た。霧島は顔を上げずに、友達の死を悲しんでいる様子だった。


「……はい。」

「今回は、なんというか、非常に悲しい事件ではありました。心中お察しします。」


 霧島は小さく会釈し、再び、悲しんでいる様子を見せた。


「少し、お話を伺ってもよろしいですか?」


 霧島はまた小さくうなづく。


「あの~、佐竹さんはどちらの駅からこちらに?」

「……倉後駅からです。」

「ここからどれほどかかるんでしょうか?」

「多分、30分くらいですかね。」

「それで、あなたはどこの駅で?」

「……倉前駅です。」

「それって、もしかして、倉間駅の1個前の駅ですか?」

「そうです。倉前、倉間、倉後と続いているので。」

「なるほど、そうなると、


 あなたは佐竹さんに席を譲りましたね?」


 霧島はその質問に一瞬動揺を見せる。


「どうやら、この電車は倉間駅で混み始めるらしいんですよ。


 実際、マシンガンを持っていたおばあさんも倉間駅で、席に座れずにいたそうです。そして、被害者は倉間駅の後の倉後駅で乗っていた。


 なら、被害者は経っていなければならないはずです。


 しかし、被害者は席に座っていた。


 ということは、友達であるあなたが席を譲ったのではないかと思ったんです。」


 霧島はしばらく黙っていた。


「……ええ、佐竹に席を譲りました。


 実は、席を賭けてじゃんけんをしていたんです。」

「なるほど~。


 そうなると、じゃんけんにあなたが負けて、被害者が座ったということでしょうか?」

「そういうことです。


 ……しかし、ずっと前からマシンガンを持ったおばあさんがいたことは知っていましたが、


 ……まさか、殺されてしまうなんて……。」


 そう言って、霧島は目に浮かべた涙を右手首で拭いた。すると、右手についていた血が霧島の目元に付いた。


「おやおや、目に血がついてしまっていますよ。」

「ああ……、


 最後に佐竹が僕に寄りかかってきたんです。その時の血でしょう。」

「ああ、ズボンが黒なので分かりませんでしたが、確かに血で染まっていますね。右の袖口も少し血が付いている。」

「刑事さん、この服を着替えてきてもいいですか?」

「そうですね。そのままじゃ、嫌ですよね~。


 至急、新しい服を用意させます。」

「……ありがとうございます。」

「神宮司君? この子に新しい服用意してあげて?」


 能登羽は神宮寺に声をかけると、神宮司はすぐに服を脱いで、全裸になった。そして、神宮司は能登羽に服を渡した。


「こちらどうぞ。


 返す必要はありませんので、駅のトイレで着替えてきてください。」


 霧島は小さくうなづき、ベンチを立った。そして、霧島は能登羽から服を受け取ると、駅のトイレへと向かっていった。


 その時、霧島はポケットに右手を入れた。


「霧島さん、待ってください!」


 能登羽に呼び止められた霧島は歩みを止める。


「私の推理を聞いてから着替えることにしませんか?」

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