05話 異譚魔女
幼女から聞いた。
この世界における魔女のことを…。
神話の時代のこと。
昔々人間の少女がいたとさ。
その少女は親に捨てられ、信頼できる人は誰もいませんでした。
途方に暮れている少女は愛に飢えていました。
この世に生まれてから誰からも愛されたことがなかったからです。
寵愛も求愛も敬愛も恋愛も親愛も慈愛も恩愛も熱愛も何もかも。
少女は泣きながらポツリと言いました。
――――誰か愛して――――
すると目の前に褐色肌のそれはそれはもう大変美しい青年が現れました。
青年は少女に言います。
――――僕が君を愛してあげよう――――
青年の言葉に少女は大変喜びました。
だが少女は愛されていることを実感したいと思いました。
何故なら口先だけなら嘘でも虚言でも言えてしまえるからです。
――――じゃあ愛されていると感じることのできる方法があるよ――――
青年は自身の屋敷へ少女を招き入れました。
そこで何年も恋人のように、もしくは夫婦のように過ごしました。
やがて二人との間に子供ができました。
可愛らしい女の子でした。
だが子供ができてすぐ青年が姿を消しました。
少女は嘆き絶望しました。
そして湖に身を投げてしまいました。
唯一人の赤ん坊を遺して。
だが少女の混沌とした闇の想いが魔力としてはたまた呪いとして赤ん坊に刻まれました。
それからその一族からは魔法や魔術に適性のある女の子しか生まれてきませんでした。
その一族から生まれた娘は世界に災厄をもたらすとされ、今ではその娘たちを〝魔女〟と総称して呼ぶようになったのだと言う。
一通りのことを幼女は話し終えた。
「それと余談の余談に過ぎない話ですが、エーデさん、村の人に危害を加えたことがありますよ。幸い、死者は出ませんでしたが重症を負った人はいたということですよ。それでも本当にあなたは彼女を騙るのですか…。」
「…。」
嘘だろ。
彼女のあの涙や求愛行動は説明つかないほどの重症だった。
それに彼女はぼくを助けてくれた。
僕を置いて逃げることも容易だっただろうに。
その事実に対して僕は異議申し立てる。
「それにエーデさんはまだマシですが他の魔女は、ある国では戦争で使われ一国を滅ぼしています。そう、魔女というのはこの伝承から忌み嫌われるのもそうですが、何よりも実害が出ているんです。強すぎるんです。擁護しようがありません。事実、エーデさんはそれ以降、村に現れることはないですが、みんな怖いんですよ。魔女というものが。」
確かにそうだ。
だけど。
「そうだね。過去やったことは変わらない、それはそうだ。…だけど同様に彼女が僕を助けたことも不変の事実だよ。…変わらない事実なんだ。」
幼女は話を静かに聞くと言葉もない様子で言う。
「…すみません、その悪く言っちゃって…命の恩人なんでしたよね。」
「いやこちらこそ。僕の視点でのエーデを話しただけだから気にしないで。」
僕はこの話を聞いておばあちゃんの言葉を思い出すばかりだった。
重いな〜。
…はは(笑)