02話 星々の下で起こる出会い
異世界に転移した。
彗星が砕け、流れ、輝くさまを見ながら少し歩くごとに僕の心はなんとも言えぬ高揚と興奮に溢れかえっていた。
辺は野原が広がるばかりだが降って下のあたりに湖がある。
その湖は星々が反射し水鏡となり自身とこの世界がいかに小さく、まるで枯れ木のようだと思わされてしまう。
それほどまでに幻想的舞曲かのような独特の神秘を放っていたのだ。
「綺麗だ。」
つい言葉をこぼす。
星に見惚れている僕だったがさらに歩みを進めると、倒れている人影があった。
いや、違うな、倒れているわけではない、ただ空遍く星々を眺めているだけなのだ。
せっかくなら一緒に見よう。
僕は近づく。
アンダンテのように。
そして一言告げる。
「ごめんなさい隣…、いいですか?」
「えッ…あッ…ひゃい!」
女性だ。
黒い服に身を通し、足の先まで伸びた厚みのあるスカートには趣があった。
そして白髪を纏った挙動不審に僕を眺める、時雨のような美少女だった。
しまった、遠目だったから分からなかったが女性だったらしい。
だが僕は自身の言った言動には責任を持つタイプの人間なので、決して下心とかそういうのではなく、ただ純粋に彼女と一緒に星を見たいがために、僕は彼女の隣に腰を下ろした。
彼女は僕が隣に来ると緊張でもしたのか、寝転がるのをやめて体育座りの姿勢に持ち直して再び星を眺めだした。
さて恐らく異世界に転移したのだろう。
だが理解するよりも先に流星での衝撃がすごかったからか特に驚きはない。
至って冷静だが裏を返せば、狂気に呑まれているとも考えられる。
至って冷静、至って狂気。
それにしたって星が綺麗だ。
彼女が口を開く。
「あのー…。」
「なにか?」
「私…魔女ですよ。聞いてませんか、ここらへんには魔女がいるって。」
なるほどだったら納得だ。
服装についても髪色についても。
でも…
「いや?」
「え?」
「魔女さん、何か問題あります?」
「いや、でも、怖くないんですか?」
「全然!むしろ可愛いね!うん。抱きしめたくなる。」
「え…。」
時既に遅し。
「あっ………。」
彼女のカミングアウトに対する答えはこれだった。
正直、自分で言っておきながらかなり意味わからないと思う。
狂気に狂った男の発言はさぞかし絶対零度の寒さを呼んだ。
綺麗な流星と夜と水鏡と美少女と闇と異世界転移の相乗効果で気が狂ったのだろうが、僕は今まで性に対してはさほど敏感ではなかったがなぜなのだ。
ホワイ。
頭を抱えた。
黒歴史は現代でも作らないようにしたのに…。
僕はこの世界に来て初めて戸惑った。
見たくなどなかったが、僕は彼女に視線を向けた。
だが、彼女と僕の目線が合う。
彼女は露のように揺れ落ちるさまに、顔を赤らめ、耳の先まで火照らせていた。
見線があった瞬間には彼女は羞恥心が達したのか、口元を手のひらで隠した。
「そ…の………んっ…じゃぁ、だっ…抱きしめますか?…。」
「…。」
今なんて。
「え…あ……、ごめんなさい私なんかが出すぎたことを言って。私程度があなたに、…本当に。」
沈黙で返してしまったのは失敗だった。
本当にごめんなさい。
僕の身勝手な発言が彼女を傷つけてしまって本当にごめん。
「ん。」
だから僕は精一杯、彼女を抱きしめた。
彼女の頬は僕の胸に寄せられ、心臓の上には耳をつける。
初対面のはずなのに。
両者はこの温かさを手放すことはできなかった。
「…。」
「…。」
去れども流星は輝き続ける。
そんな澄んだ夜空の下で奇怪な、はてなマークの立つ音を聞いた。
テケリ・リ…テケリ・リ…。
いや違う、音に似ていたがこれは声だ。
なにか生物の声帯から出されている。
抱擁を外し、彼女は取り乱しながら言う。
「この声はショゴス!?まずい早く逃げなきゃ!」
「なに?ショゴスって。」
だがそれはもうすでに木々をなぎ倒し僕と彼女の後ろにいた。
ショゴスと呼ばれる者は虹色の輝きと腐った混合物を2乗したかのような悪臭を放った濃黒色のゲル状の生物だった。
「ぐっ!?匂いがっ。」
「できるだけ鼻を押さえて!」
そしてショゴスと呼ばれる化け物と相対した。
白々白は異世界に来て初めての命の危機を感じた瞬間でもあった。
読んでくださりありがとうございます。
不定期に投稿するのですかどうかご了承ください。
コメントとか欲しーなー。