19話 最近の若者 中編
僕は老婆に促されるままに歩みを進めていた。ぶっちゃけ怖い。心底漏らしそうだ。
『うちに来なさい』という突拍子もないこの状況に僕は困惑の感情でいっぱいだった。
だが困惑の状況にある僕に不可思議な思考が頭を過ぎる。
村から離れた方向、そう森側の道を巻き戻っている。
畑に戻るわけでもなく、とある森に浸された一軒家の眼前で止まる。そう、まごうことなきあの話を聞いた老婆の家であった。
ミスマッチなこのタイミングには偶然にしては出来すぎていると思わざるを得ない。
「おい、入れ」
そんな乱暴に言葉を言いドアを乱暴に開ける。
鈍感な僕はやっぱり後々になってこの状況を後悔する。だってもうこの人の雰囲気って、あれじゃん、人殺すような剣幕じゃん。
そう感じてもおかしくはないような雰囲気じゃん。
刺されてもそれは僕の責任じゃん。
というわけで中に入った。たいして大きくもない家なので大きさで言ったら一階しかないのだが、ひとつ大きく奇妙な違和感、その部屋はあまりにも―――綺麗だった。
娘が死んでそのままのような、あの頃の風景を想起させるような、自暴自棄になって部屋をグチャグチャにしてしまうとか、そういうことはまるでなかったように見受けられる。
大切にしてたことが一目でわかる。
大事にしてたことが二目でわかる。
忘れたくないことが三目でわかる。
一つだけ聞いてみることにした。
「あの……ひとつお伺いしても?」
「……わたしが質問を許可したか?」
結局聞けなかった。『 』と。
何をされるかもわからないこの状況で、さも自分は最善手を取っているかのように行動を起こして入るものの、やはりと言うべきか―――怖い。
恐怖。生物の生存本能とでも言うべきものだった。
「わたしが聞きたいのは一つだけだ……。お前は聞かれたことに対してだけ答えろ。それ以外の返答だとわたしが感じたら、……わかったか?」
「……はい」
言葉一つ一つの重みが違う。今までの人生の比ではない重さだ。奇天烈な発言でもしようものなら頸動脈がバッサリ断裂されそうな勢いだ。
「おまえは“アンデレ”という名前に聞き覚えはあるか?」
「あ、ありません……」
「そうか……」
僕はこの質問で終わりだなんて思っていなかったし、ある程度踏み込んだことを聞かれるのも覚悟していた。
だが案外あっけなく僕の予想はまるで違っていた。
「―――魔術=」
エーデから聞いた。
あの夜に聞いた。
一小節の言の葉。
「柱へと括らせる誓約」




