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僕は転移し魔女と出会う  作者: けんT
第1章 ランデブー編
17/21

17話 誕生日には真っ白な百合を 後編

遅れてごめんなさいm(_ _)m

フェアツヴァイフルング。

この男の名、通称フェア。

話を聞くところによると僕よりも2歳年上である19歳であり、性癖が女騎士というごくごく普通の、陽キャ系完全潔白男児だ。

陽キャという点に対しては僕とは相反する存在なのだが、まあ、何かと良い奴なのだ。

気配り上手、高身長、顔面偏差値81、優しい、ユーモラス、性癖、適性魔法、太陽のような金髪、星々のような(まなこ)、料理上手、焼き上手、イケメンボイス、ドッコイショー!

そう、この男、良いところを挙げたらきりがないのだ。

現代社会にこの健康男児が存在したのなら、ありとあらゆる女子から見惚れられ見惚っていたことだろう。

陽キャというと関連して陰キャも同時に、そして甚だ思うのだが、陰キャに優しい陽キャはいるのに、陽キャに優しい陰キャはいないのだろうか。

まあ結論から言えば、彼らはコミュニケーション能力が乏しいだけであって感謝自体はしているのだ。

ただそれを伝えるすべがないだけなのである。

なんともどかしいことだ。

そんな彼のことが少しはわかるようになった、6日経過。

エーデとも6日前以降会っていない。

そうそう人の前には姿を現さない。

まあ、6日前も偶然会ったようなものだし仕方のないことであるのだが、それでも少し思ってしまうのである。

もう一度会って話がしたい。

そよ風がなびく空の下で。


「畑仕事はどうだ?結構キツイだろー腰にくるし、手に豆はできるしで。」


「ああ、もともと僕は体力がある方だとは言えないし、痛いのは嫌いだ。そんな僕だから取り柄といった取り柄もない、何ら特徴のない素朴な男さ。」


僕は淡々と事実を述べた。

この文章に対して異議申立るかのように、


「だがハクは手伝ってくれるじゃないか。嫌だと思っていることでも一生懸命にやれる人は俺は素敵だと思うし、それはハクの優しさだと俺は思う。だからあまり自分を悲観するなよ。少なくとも俺はお前の良さを知っているしな。」


と言った。


「…ありがとう。たとえ気休めのように聞こえてもお前の言葉は本当だって思えてしまえるよ。」


風が草花達を揺れ動き花弁をさらっていく。

そんな一つ村はずれの畑を耕し、昼食がてら話を聞いていた。


「なあ、親にさ恩返しするにはどうすればいいと思う?」


「はあ?」


突拍子もなくそんなことを言った。

いやいや、いきなり何だと口に出す前に僕はひとまずとして話を聞いてみることにした。


「まあ取敢えず、理由から聞こうか。ほい、じゃあ過程からどうぞ。」


「うーんとな、…家は母さんと父さんと妹と俺の4人家族でさ、俺は小さい頃、ヤンチャだったもんだからそれはもう父さんも母さんもあまつさえ妹までもが手を焼いていたんだ。」


「意外だな、フェアの聖人君子ぶりは幼少からではなかったということだな。」


「聖人君子は性癖を喋ったりはしない。」


「ふ、…それで?」


「うん、それで俺が何も考えずに行ったヤンチャな行為で…母さんは手に火傷して傷ができた、一生消えないな。」


そうなのか、フェアのこの性格の根源は『罪滅ぼし』なんだ。

誰にでも分け隔てなく過ごす好青年。

だが、それはあくまでも何かを傷つけることが怖い、裏返しなんだ。

過去の彼とは性格がまるで反対の位置に座してる現在の彼、僕は過去の彼を知らないが『今の彼』は知っている。


「俺は未だあのことについて謝れていない。そんなあるはずもない空気の壁が建てられているかのように口から言葉を出すことはできないんだ。だから俺は善行に逃げた。逃げて。逃げて。逃げて。今も自分を正当化しようとした。俺は弱い人間だよ。」


さっきまでの彼とは違い弱々しい声を絞り終えると、彼は足にうずくまり丸まった。

僕の中の彼のイメージが崩れた。

奈落の底の深淵に、落下しても音も聞こえないほどの遥か地下に落下する音にならない音が自身に残響した。

だがそんな彼に対して今日この日までそんな重圧、と言っては悪いのだがよくぞ今日まで耐えたと称賛を送りたい。

本当に。


「僕から言えるのは一つだけだよフェア。」


「ん。……。」


すーと息を吸い込み、そして一気に言葉を爆発させる。


「いいか?人なんてな!クズ野郎ばっかなんだよ!」


「は?」


何言ってんだと言わんばかりの表情を向けられる。


「その点で言ったらお前もクズだ!どんな理由があろうとも一言ごめんなさいを言えばいいだけの話だ。なぜこの話がお前を苦しめているかわかるか?それは、お前に『勇気』がないからだ。謝った後の未来を想像するのが怖いからだ。そこから動かない限り、お前は!一生変わらないし、変えられない。」


気がつけば僕は困惑するフェアの胸ぐらをガッシリと掴んでいた。

だがそんな僕に対して彼は微笑んだ


「うん、なるほど、勇気か…。たったそれだけのこと。そんな些細なことなんだよな。」


「やることあるだろ?畑は僕がやっておくから行ってこいよ。」


「ありがとう。だけど大丈夫かい?まだ半分くらいしかできてないけど。」


「なんとかする。ほら行った、行った。」


そしてフェアは自身の家の方向めがけて、踵を返すように走り抜けて行った。

さて、僕は二人の分の量を耕すかと思い、作業に戻ろうとするのだが、もう遠くとなったフェアがこちらにも届く大声量で発した。


「ハクゥゥゥゥ!お前マジでぇ!大親友ゥゥゥゥゥゥゥ!」


そう言った彼は、再び駆け出してやがて姿は見えなくなる。

仲直り、というよりは長年あった母と子の淀みを取り除きに行ったのだ。

それはそうと。

いきなり友達を超えて大親友とか、順序を知らないにも程がある。

ただ。



悪い気はしない。



さて、この話のオチといったところ。

僕はその後、割とすぐに帰って来たフェアを迎えた。

聞くことによると。

一言『ごめんなさい』と伝えられたらしい。

フェアのお母さんは『こんなもの気にしてない』と言っていたらしい。

それから2日ほど経った頃、フェアの家の前を通る機会があった。

そこで白百合のような花が不器用にも家の隅の方に植えられており、そこから僕は笑みがこぼれた。


「不器用者め。」


結局プレゼント渡しているじゃないか、まったく、まったく、思春期って拗らせてはいけないな。

兎にも角にも。

これはきっといい話なんだろうな。

曇らせって僕、個人的に好きなんですよね(笑)

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