16話 誕生日には真っ白な百合を 前編
「観測者。」
そう奴は観測者。
この世の理すらも見通す、得体のしれないナニカだ。
木々が揺れ生命の息吹を上げる。
日の沈まったこの時ばかりは辺りに誰もいない。
村についてないのだから当たり前なのだか。
「それで観測者、お前のことはよくわからないことが、僕はわかった。お前なんの用で僕に接触しているんだ。なんの用も無しで来たわけでもないんだろう?」
率直な疑問を口に出す。
「ん、なにもないよ。」
観測者は終始微笑みを絶やさず声にした。
何も無いのだと。
そう言って。
「いや何も無いわけないだろう。」
「だけど実際、何も無いわけがないわけが無いんだよねぇ。」
「ちょっと何言ってるかわからない。」
観測者はふふっと一言溢し、言葉を続けた。
「今日は顔合わせみたいなもんさ、あと女の子にうつつを抜かすのもいいけど…、まあいっか、君なら上手くやってくれるだろう。スケコマシさん?」
「僕は女ったらしじゃない!」
「黙りなさい、髑髏にするわよ。」
「ごめん冗談に聞こえない。それと急にツンデレのような喋り方をするじゃないか。」
「まあね、変幻自在なもので、ワタシ。」
背景にキラーンと出てきそうなほどに抽象的なポーズを取りながら言った。
まあ中性的な見た目でこれやられたら、男でも女でもイチコロなんだろうが。
白髪はショートヘアながらストレートを超えてドストレート侍だが、それすらも観測者を表せる言葉には不十分すぎるほどだった。
そういえば、白髪といえばエーデと同じ髪色だな。
とても綺麗で儚げな彩色。
「君そろそろ帰らなくて大丈夫?」
もうすでに日がなく辺は暗闇であったが、村の明かりだけが唯一、周囲を照らしていた。
「あ、話し込んでて気づかなかったッ!まずいまずいまずい!アリーベデルチ(それじゃあな)!」
「うん、アリーベデルチ(さようなら)。」
僕は必死に村まで駆け抜けていった。
人から見たら魔物にでも間違えられそうなほどの形相で。
さて後々家に帰った僕なのだか、エルフが仁王立ちをしてお出迎えしてくれた。
終始笑顔だったのが印象に残っている。
多分、彼女は怒らせてはいけないタイプの人なのだろう。
30分程、お叱りを受けた後夕食をとって今日は眠りについた。
ただエルフは一言。
「違う女の匂いがします。」
女の感というものは末恐ろしい限りである、逆に男には感というものはないのだろうか、いや人それぞれか。
とりあえずは誤魔化せた。
翌朝のこと。
ヘルムさんから今度は畑を耕してくれとのお達しが来た。
きっと、恐らくだが僕は対して役に立てなかったから戦力外通告なのだろう。
当たり前だ。
元の世界でも帰宅部とそう大差ない運動力だった僕が役に立てるなど浅ましいにも程があったのだ。
まあ、あそこまでハードだとは思わなかったが。
畑仕事できるだろうか。
不安が脳裏を過る中、畑に到着した。
そこには金髪の太陽のような青年が僕を持つようにして日陰で寝っ転がっていた。
「やッ、君がハクだね。俺はフェアツヴァイフルング、フェアと呼んでくれ!」
とても名の長い人だ、フェアと名乗った青年は腕を縦に交差させて伸ばすとクルクルと立ち上がった。
「フェア…。うん、よろしくな。僕の名は聞いてるかもしれないが白々白だ。」
「おう!よろしくなハク!それじゃあクワだ!」
刹那、何も存在していなかった空間から原子が元あった所に帰るように再生し、クワが出てきた。
「すっげ!?なんだそれ!?」
僕はクワ、というよりかはフェアを指さし、興奮冷めやまぬ様子で言った。
そんな様子の僕にフェアは鼻を高くして答えた。
「ふふん!なにを隠そう俺は珍しい魔法属性“空間”の持ち主だからな!」
「空間!?なんだその一単語だけでこの辺り全てを消失させそうな、破局、轟雷、跋扈の最強魔法は!」
「まあ、対して鍛えてないから物を出し運びする程度の能力に成り下がっているんだけどね。」
「いや、圧倒的宝の持ち腐れ。」
「ははっ!じゃこれである程度耕してくれ、無理はしなくていいからな!慣れていないだろうから。」
「慣れていないは余計だ。」
事実だが。
さてそれまで僕は畑を耕し続けた。
まあ、腰が痛むは足はつるはで大惨事で、僕は合ったが。
フェアは準備運動と言わんばかりの手慣れた手つきで土を耕し続けた。
まったく、自分が不甲斐ないばかりである。
そんな調子でなんとか自身に降りかかる疲労を耐え忍び昼食となった。
木の陰の中に入り、木に寄りかかる。
フェアはやはりと言うべきか、なにもない空間から握り飯を出していた。
僕も自前の、いやエルフに作ってもらった幼女弁当を取り出し、口いっぱいに頬張る。
「うめぇ~、ムシャムシャ。」
「ばべびぶぶっべぼばっばぼ?」
「ごめん、ちょっと何言ってるか分からない。」
「ゴクン、フェアそういえばさ、好きなタイプとかいるのか?」
急な話の切り替え。
「おうっ…唐突だな。それって何でもいいんだよな?」
「ああ、どんとこい、フェアの性癖が拗れまくっていて、そう、銀髪ロリでも俺っ娘でもケモミミっ娘でもそれ以上の異常性癖でも大丈夫だ。僕が受け止めてやる。」
「俺が異常性癖なのを前提で言うな。」
キレの良いツッコミだ。
「んーそうだなぁ、背の高い人…かな?」
「あら珍しい。それまたなぜ。」
「………なんか興奮しない?」
「お前の感性は僕には到底理解できないことがよくわかったよ。」
「冗談だって!オフコース!」
「少しばかり事実を言っていそうだな。」
「まぁまぁ、実は昔のことになるんだけどさ、背の高い女騎士に魔物から助けてもらったんだ、それが初恋でね。」
「意外としっかりした、下心なんて微塵もない理由なんだ。ものすごく意外だ、普段から女子に向かって、『ぐへへ君はきれいな座り方をするから元気な子供が産めそうだなうへへへへ』とか言ってそうな雰囲気なのに!?」
「えっまって、そんなこの世の変態を極めたかのような印象だったのか!おれ!?後よくそんなセリフ思いつくなハク!」
「…ふ。」
二人で笑い合った。
フェアと僕は友達と呼べる関係だろうか。
∠(`・ω・´)投稿完了




