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短編集

私の婚約者はポーカーフェイスな悪魔です

「ダメですよ。死なないでください」


 高熱で意識が朦朧とする中、私の手を握る一人の男性。


 いつもの無表情で病弱な私を励ますのは、私の婚約者。



 彼には私だけが知ってる秘密がある。

 それは彼が悪魔だということ。



 幼い頃、親同士に決められて婚約を結んでから打ち明けられた彼の秘密。血のように真っ赤な瞳に鋭い八重歯。子供の私はすぐに彼の言うことを信じた。


 彼は私が成人を迎えたら魂を喰らうと言った。だから甲斐甲斐しく世話をしてくれる。私の健康を願い、成人まで生きていられるように質の良い食材や高級な薬の手配など、それはもう尽くしてくれる。


 どれもこれも私を成人まで生かすため。


 でも、それでもよかった。魂だけでも大好きな人とひとつになれるのなら、それだけで幸せだから。


 大好き。

 あなたの温かい手が、紅く煌めく瞳が、不器用な優しさが、全部全部大好き。

 できたら年老いるまで添い遂げたかったけど、約束したもの。


 私の魂は、あなたに食べられるの。






 ――そして私は、18歳の誕生日を迎えた。


 彼のおかげで迎えることができた。今では病弱だった私も外を出歩けるほど元気になり、死体のように真っ白だった皮膚も健康的な色を取り戻した。


 それも全部あなたのおかげ。


 ようやく今までのお礼ができるのね。今日まで生きれて私は幸せだった。


 だから、どうか美味しく食べてね。


「ねえ、やっぱり魂を喰らうのは夜なのかしら?」


 白くきめ細やかなベール越しに微笑みかけると、彼はいつもの無表情を崩して僅かに目を細める。


「魂?何の話をしているのですか?」

「幼い頃に約束したでしょう?覚悟は決まってるけど、少し怖いわ。だから食べるなら一思いに…でも、決して私の存在を忘れてしまわないように、魂に刻み込んでね」


 そう言うと彼は何故か目を瞬かせた。そして愛おしそうに相好を崩した。初めて見る表情に胸が高鳴る。


「…ああ、子供の頃の話をまだ信じてくれていたんですね。ふふ、僕は悪魔なんかじゃないですよ」

「え?それじゃあ…」

「あれは君に生きる目的を持ってもらうための…子供ながらの精一杯のでまかせです。君が無事に成人を迎えたら結婚ができますからね。それまでに死なれたら困るでしょう?僕の愛しい人」

「え、え、ええっ?」


 驚き戸惑う私に落ちて来たのは誓いの口付けだった。



 ――どうやら私の体調が心配でいつも表情を強張らせていたらしく、結婚以来、彼のポーカーフェイスはなりを潜めている。

最後まで読んでくださりありがとうございます。


1000字で収めるのは難しいですね…!

文字数の都合により名無しの二人となりました。

不器用ながらもヒロインを想い続けるヒーローと、そんなヒーローを一途に愛するちょっぴり夢見がちなヒロインでした。


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― 新着の感想 ―
[良い点] ほんと、二人が羨ましいです。こんな素敵な御話をよめるなんて、“なろう”最高!
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