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小話3 ぼくは、オトナなんだ!
とある商店街の一角に、その店はあった。
大きなビルに挟まれた、細い階段の先。「営業中」と書かれた縦長のプレートが、ドアにかけられている。
ここは知る人ぞ知る、噂の喫茶店。老若男女関係なく、多くの人々が訪れる場所。
陽も暮れ始め、街は学校帰りや仕事終わりの車が道を行き交う。赤いテールランプが列を成し、ランドセルを背負った小学生達がワイワイ騒ぎながら、道を歩いていた。その輪から少し後ろに離れている男の子が一人。
「……」
地面を見つめながら、進んでいる。そんなし男の子に、話かける子はいない。どんどんと距離ができ、気づけば周囲に同世代の子はいなくなっていた。
「……はあ」
子供らしからぬ、疲れたようなため息をつく。そして横断歩道を渡り、向かいのビル間にある階段の前で立ち止まる。小学生の足では遠く感じる階段の先、そこには簡素な扉。男の子は自分に気合いを入れると、ゆっくりと階段を上り始めるのだった。
次回は、金曜の19時更新です。