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小話1 喫茶店のマスター3
怪しい身なりの男が、怒鳴り声と共に立ち上がったのを見て客達がにわかに騒ぎ出す。矛先である女子高生は、一人を除いて目を見開いて驚く。
「な、何よ!? おっさん!」
「マジ、キモいんだけど」
「なんで、わざわざ挑発すんのアンタら」
三人三様の言葉。それが余計に勘に触ったのか、兄貴の男は我慢ならず拳を振りかぶった。
「聞いていれば、勝手なことを!」
だが。
「はい、そこまで」
そこへ、女性の声が入り込む。
「な、なにしやがる!?」
気付けば、兄貴の男と女子高生の間に黒髪のマスターが立ち塞がっていた。その手は、振りかぶった拳を楽々と受け止めている。
「女の子に手をあげるなんて、頂けないっしょ……頂けません」
「はあ? イッテぇ」
笑顔のまま力を込める、マスター。兄貴の男は顔をしかめ、背の低い男はオロオロと視線を彷徨わす。
「ここは、皆さんの憩いの場です。暴力沙汰はお控えを!」
「そう言ってる、マスターはどうなんだ?」と客達が心の内で突っ込んだ。
次回は、月曜の19時更新です。