小話1 喫茶店のマスター
『小話シリーズ第二弾』連載開始!
皆さん、ちょっとしたスキマ時間にお楽しみください!
とある商店街の一角に、その店はあった。
大きなビルに挟まれた、細い階段の先。「営業中」と書かれた縦長のプレートが、ドアにかけられている。
ここは知る人ぞ知る、噂の喫茶店。老若男女関係なく、多くの人々が訪れる場所。
「おいおい、本当にここであってるのか?」
「間違いないっすよ、兄貴」
陽も明るい、お昼時。
黒いスーツに身を包んだ二人組が、細い階段の前で会話をしていた。兄貴と呼んだ少し背の低い男は、手にした紙切れの地図と扉を見比べる。
「正直、こんな狭い場所に店があるとは知らなかった。通りで見つけにくい」
「看板を出してる訳でも無いっすからね。ほらほら兄貴! 見つけたんだから、褒めてくださいよ」
「調子に乗るな!」
「いでっ!?」
得意げに語る背の低い男に、兄貴と呼ばれた人物は、膝の裏へ蹴りを入れる。バランスを崩し、座り込む姿を見下ろしながら小さなため息をつく。
「……まあいい。とりあえず、中に入るぞ!」
「ラジャー!」
彼らはそう言って、店の扉を開けるのだった。
次回の更新は、月曜の19時です。
どうぞ、お楽しみに!