表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三十路OL、セーラー服で異世界転移 ~ゴブリンの嫁になるか魔王的な存在を倒すか二択を迫られてます~  作者: 瘴気領域
第四章 戦え! エルフの森

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

96/126

第八十六話 停車し、銃声。続けて火柱

「ご主人、左前方20度の方向。距離212メートルです」

「ミリーちゃん、左の茂みの方だって! 300歩くらい先、見える!?」

「はい! 見えました!」


 ルーフの上で腹ばいになるミリーちゃんの返事が聞こえると、サルタナさんがバック走させていた地を這う閃光号(ソーラーカー)を停車させる。ここは学術都市へ向かう街道の途中。エルフ村から出てすぐのところだ。


 ドン、と銃声が響くと、ミリーちゃんが「命中しました! トドメお願いします」と声を上げる。


「任せてください! 『火球』!」


 リッテちゃんが車の窓から身を乗り出し、魔印を手に持ち何やら複雑な動きとともに発動句を唱える。すると、火の玉が出現してミリーちゃんが銃を撃ち込んだ方角へ、山なりにゆっくり飛んでいった。


 着弾すると、ちゅどーんとその場で火柱が上がる。


「トカゲゴブリン程度ならこれで黒焦げでしょう。さあ、次行きましょう!」


 自分の魔術が活躍してうれしいのか、リッテちゃんが大張り切りだ。周辺に他のトカゲゴブリンもいないので、サルタナさんに再びバックで進んでもらう。


 何をしているのかというと、街道付近に潜んでいるゴブリンたちを削っているのだ。ドライバーは安定のサルタナさん、索敵役はわたし……というかセーラー服君だ。


 ルーフには竹製の固定具に腹ばいになったミリーちゃんが伏せている。ルーフの上にわたしとミリーちゃんが乗る案もあったが、さすがにまともに狙撃できる体勢を取れなかった。


 マーシャルさんも同乗しており風を停めてもらっているが、セーラー服君の補助(チート)がない状態では一撃必殺というわけにはいかない。そこで、仕留め損ねたものはリッテちゃんの魔術でトドメを刺しているというわけだ。


 あれから二日間ほど物見櫓からの狙撃を続けていたのだが、魔法銃の射程が読まれたのか、撃てる範囲に敵が姿を見せなくなったためだ。そこで作戦を変更し、街道沿いに隠れるゴブリンを削っていくことにしたのである。


「いやー、見事な手際ッスねえ。これは筆が捗るッスよ!」


 紙束に何かをしきりに書き付けているのはロマノワさんだ。こうして無邪気に筆を走らせているところを見るととても裏があるようには思えないが……警戒心は緩めないでおこう。


 ロマノワさんが身分を詐称していることは間違いない。ロマノワさんの見た目は二十代そこそこ。50年以上も前の人気作を手掛けていたなんてありえないのだ。


 サルタナさんやプランツ教授にも意見を聞いたが、ロマノワさんはおそらく人間種で、エルフやドワーフのように見た目と年齢が大きく離れる可能性は低いということだった。


 ロマノワさんの身分詐称疑惑については、他にはマーシャルさんにしか話していない。ミリーちゃんやリッテちゃんには秘密だ。聞けば態度に表れてしまうだろう。純粋な二人に腹芸は期待できそうにない。


 サルタナさん、プランツ教授、マーシャルさんの3人に相談した結果、不審ではあるがいまは泳がせておこうという結論になった。基本的にはわたしを含めた4人のうち誰かが必ず目を光らせておき、監視をしている状態である。


 なぜそんな対応をしているかというと、狙いがまったくわからないためだ。ゴブリンに内通しているのなら何らかの妨害工作をしそうなものだが、そんな様子はまったく見られない。エルフ村に潜り込むための嘘なら、昔の大作家の名前を語るなんて正体がバレる可能性を高めるだけでメリットがない。


 わたしたち、旅の一行の誰かに接近したかったのだとしてもそんな嘘はデメリットしかない。そもそもリスクを負ってまでお近づきになりたいほどのバックボーンを背負った人間がひとりもいない。じつはリッテちゃんが王家の隠し子だったなんてことでもなければありえないだろう。


 というわけで、明らかに不審ではあるのだが、狙いがわかるまでは監視付きの放置という結論に至ったわけだ。


「ご主人、右前方30度の方向。距離187メートルです」

「ミリーちゃん、右の方だって! さっきよりちょっと近いくらい!」

「はい! 見えました!」


 サルタナさんが停車し、銃声。続けて火柱。手順が増えた分、物見櫓からの狙撃より効率が悪い。じりじりと進みながら続けているが、いま仕留めたのでやっと7体目だ。


「ご主人、まとまった数のトカゲゴブリンが近づいてきていますね。左方から11体、右方から13体、前方から7体です」


 うーん、30体強か。それだけならやれないことはないだろうけど、エルフ村に来る途中に探知できたものだけでも80匹以上潜んでいたのだ。後から増援が続いてはたまらない。


「そろそろ潮時かなあ……」

「あ、それならちょっと待ってください!」


 返事も聞かずリッテちゃんが後部座席を降り、街道の真ん中に立ってダンスをはじめる。なんだ、大勢の観衆に踊りを見せつけたくなったのか?


 なんてことはもちろんなく、なんらかの魔術だろう。


「はぁ、はぁ、お待たせしました! もう行って大丈夫です」

「承知いたしました。では発車しますよッ!」


 リッテちゃんが乗り込んだことを確認したサルタナさんがギアを入れ替えエルフ村に向かって車を走らせる。バックで進んでいたのはこのためだ。いざというときにとっとと逃げる用意だったのである。この街道は道幅が狭く、簡単にUターンはできないのだ。


 わたしたちが逃げ出したことに気がついたトカゲゴブリンたちが茂みから一斉に顔を出して追いすがってくる。そのうちの一匹がリッテちゃんが踊っていたあたりに差し掛かった、そのとき――


 ――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴーーーー!


 大地に魔法陣が輝き、凄まじい勢いの火柱が立ち上がった。数匹が炎に飲み込まれて姿を消し、熱波を浴びた周辺のゴブリンたちも顔面を押さえて地面を転げ回っている。


「設置型の中級魔術『大火柱』です。直撃ならオーガだって一発ですよ!」


 助手席でリッテちゃんがえへんと薄い胸を張っている。


 うーむ、長々と踊らないといけないから魔術は実戦では使いづらそうだと思ってたけれど、これはなかなか侮れんな。認識を改めるとしよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ