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三十路OL、セーラー服で異世界転移 ~ゴブリンの嫁になるか魔王的な存在を倒すか二択を迫られてます~  作者: 瘴気領域
第四章 戦え! エルフの森

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第七十九話 ナイスヘッショッ!

 エルフの森に向けた街道を進む地を這う閃光号(ソーラーカー)の少し後ろを、軽やかな足取りで走る恐竜がついてきている。サルタナさんによるとあの恐竜は「地走り竜」と呼ばれるドラゴンの一種で、南方連合国という国では主に軍用として飼育されているらしい。


 乗騎としての性能は非常に優れており、食料の食いだめができ、水も馬ほどには飲まず、一日中休憩なしで走れるほどのスタミナがあるそうなのだ。欠点は気性が荒く乗り手を選ぶ性格で、竜に乗る騎兵たちは孵化した直後から家族のように大事に世話をし、絆を深めるのだそうだ。


「ご主人、前方にゴブリンの亜種。2体です」

「はーい、ミリーちゃん出番だよー」

「了解しました!」


 後部座席のミリーちゃんがお腹の袋から鉄の棒を取り出し、窓から身を乗り出してそれを構える。


「撃ちます!」


 ミリーちゃんの掛け声と共にドンと低い音が響く。続けてもう一発。100メートルほど先にいた2体の異形が頭から血を吹いて倒れた。ナイスヘッショッ!


 ミリーちゃんが撃っているのはガンダリオン研究室が新たに開発した携行用の小型魔法銃だ。小型といっても、地球のライフルに比べてもまだまだ大きいのだけれど。道中で魔物に遭うこともあるだろうし、どうせなら実戦試験がしたいということでリッテちゃんが持ち込んだのだ。


 ちなみに、この銃は重すぎてリッテちゃんではまともに狙いがつけられないらしい。さらなる軽量化を進めるか、あるいはパワードスーツ的な装備で射手の力を補うか、どちらの方向にするか検討中なのだそうだ。


 ショッピングセンターでは銃火器を断ったわたしではあるが、弾薬補給の目処が立つこちらならかなり使いようがある。弾丸はただの金属の塊で、火薬の代わりに魔力を消費するだけなのだ。


 おまけにミリーちゃんの地霊術があれば弾丸は自給も可能である。鍛冶場できちんと仕上げ加工をしたものと比べると精度は落ちてしまうらしいのだが、緊急時に弾切れにならないというのはかなりのアドバンテージだろう。


 なお、この銃はわたしには使用できない。発動句(キーワード)で発射する方式だとどうしてもワンテンポ遅れるということで、魔力を流して引き金を引くことで発射するのだが……結局わたしは基礎魔術の習得すら無理だったので、魔力を流すという工程でつまずいてしまうのだ。


「あ、サルタナさんちょっと停めて」

「はい、何かございましたか?」


 いま仕留めたゴブリンの脇を通り過ぎそうになったところで車を停めてもらい、降りて怪物の死体を確認する。光沢のある緑色の鱗に全身を覆われており、外皮は硬そうだ。


 戦鎚を抜き、コツコツと外皮を叩いてみる。岩ゴブリンほどではないがかなりの強度があるようだ。だが、この程度ならいざ戦鎚で戦うことになったとしても問題なさそうである。


「なるほど、魔物の戦力を確認していたのですね」

「うん、何があるかわからないから一応ね」


 わたしたちの目当ての人物であるプランツ教授がエルフの森から帰ってこれないのは、こういう怪物が原因である可能性もあるのだ。情報もなしにいきなり戦うなんて事態は避けたい。


「わわっ、これはトカゲゴブリン! こんな北の方まで来るなんて珍しいッスねえ」


 追いついてきたロマノワさんが恐竜の上で驚きの声を上げる。あら、そのトカゲゴブリンとやらはこのあたりじゃ珍しいものなの?


「これまで確認されてきた生息域は王国南部の瘴気領域周辺が中心ッスね。ハグレの群れでも流れてきたんスかねえ」


 それにしてはちょっと遠すぎるっすけど……と言いながら、紙束と筆記具を取り出してスケッチをはじめる。


 もしそのトカゲゴブリンの群れが本当に流れてきているのだとしたら、プランツ教授が帰ってこない理由に関わっている可能性が高い気がする。


 最悪の場合、すでに襲われて……いや、悪い想像ばかりしても仕方がない。エルフの森で何か研究心をくすぐられることに出会ってしまっただけかもしれないのだ。


 トカゲゴブリンの死体を後にして、さらに街道を進む。そろそろ北の雷鳴が聞こえる頃かなってところで停車して野営の準備だ。自動車という輸送手段が手に入ったことで、調理器具や調味料は以前に比べて充実している。


 とはいっても、生鮮品など持ち運んでられないから野営時の食事はやっぱり保存食だ。鍋にサルタナさんが精霊術で創り出した水を注ぎ、乾燥野菜を固めた保存食を入れる。以前はこれをお供に石パンをガジガジかじっていたのだが、今回はもうちょっとだけ工夫をする。


 石パンを発熱した火霊石に載せ、全体に軽く焦げ目がつくまで焼く。それからトンカチで叩いて砕いていく。こうして細かくしたものをスープに入れると、香ばしいクルトンのような感覚で比較的食べやすくなるのだ。まあ、クルトンに比べると圧倒的に硬いんだけど。


 当然といえば当然のことなのだが、街にいるときと野営のときとで食事のレベルが違いすぎるのが不満だったのだ。それを解決するため、学術都市の滞在中に野営食の改良を試みていたのである。


「よかったら、この干し肉も入れるッスか? スープと交換してもらえたらうれしいッス」


 ロマノワさんが干し肉をぴらぴらと振りながらやってくる。元々急な合流だったのだ。野営用の食料はお互い別々に用意していたのだが、食料同士の物々交換であれば食料切れの心配もないだろう。


「それ、どういうお肉なんですか?」


 ミリーちゃんが興味津々といった様子で質問する。ロマノワさんの干し肉は真っ赤な色をしていて、これまでの旅の中では見たことがないものだった。わたしも結構気になる。


「これはッスね。南方で食肉用として飼われているオオトカゲの肉を、激辛な香辛料で漬け込んで干したものッス。そのままかじると火を吹くほど辛いッスけど、スープに入れるとまろやかになって、おいしい出汁が出るッスよ」


 ほほう、そういうことなら試してみよう。とはいえいきなり全量で試して失敗してはもったいない。出来上がりかけていたスープの一部を別の鍋に移し、そこに細かく裂いた干し肉を入れてもらう。


 そのまましばらく煮ると、スープの色が赤く染まり、ツンとした刺激臭が漂ってくる。日本で東南アジア系の料理店に入るとこんな匂いがしていることが多かった気がするな。なかなか食欲の湧く香りだ。


 干し肉が十分柔らかくなった頃合いを見て、みんなでスープを分け合って味見をする。淡白だった野菜スープに肉の旨味が加わって、かなり奥行きのある味わいになったな。


 一口飲んだ印象では見た目ほど辛くない。むしろ肉の甘味が……あっ、いや、これは後から辛さが来るタイプだ。口から食道、胃袋までがぽかぽかと熱くなり、舌がちょっぴりヒリヒリする。ほどよい辛さで食欲が刺激される。


「むー、これは冷たいエールが欲しくなっちゃいますね」

「なかなか刺激的な味わいでございますね。不思議と後を引きます」

「気に入ってもらえたみたいでなによりッス!」


 この干し肉はヒットだなあ。もしロマノワさんが調味料の配合とかを知っていたら後で聞いてみよう。まったく同じものは作れないにせよ、野営食のグレードアップにつながる何かは作れそうな気がするぞ。

リッテちゃん「魔物の解説はボクの出番なのに!」

ロマノワさん「わわ、ごめんなさいッス。ぽっと出なのにでしゃばったッス……」

サルタナさん「そんな遠方の魔物までご存知だったとはさすがはリッテ様ですね」

リッテちゃん「当然です! そもそもなぜ我が師ガンダリオンが万象を識るという二つ名をいただいているかと言えばですね(後略)」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 石のように硬いと言えば堅パンがありますが、あれ砕いて少量の水で練って、小判大に分けて油を引いたフライパンで軽くあぶれば、食えなくはなくない?程度にはなりますね 泡立てた卵とか入れれば蒸しパ…
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