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三十路OL、セーラー服で異世界転移 ~ゴブリンの嫁になるか魔王的な存在を倒すか二択を迫られてます~  作者: 瘴気領域@漫画化してます
第一章 降り立て! ドワーフ村!

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オープニングムービー

 怪物の咆哮(ほうこう)(とどろ)いた。


 大人二人分の高さはある巨体。およその姿は人間に近いが、右脇から二本、左脇からは一本の細い腕がだらりと垂れ下がっている。砂利(じゃり)を敷き詰めたような皮膚に全身を覆われており、頭部には目も鼻も耳もない。代わりにもなるまいに、口は上下にふたつ連なっており、(ねじ)じくれた牙が口腔を埋め尽くすように生えている。


 まさしく、異形であった。


 その異形と対峙(たいじ)するのはひとりの少女。夏物のセーラー服を身に着け、怪物の咆哮にわずかたりとも(ひる)んだ様子もなく、まっすぐにその美しい双眸(そうぼう)を向けていた。その両手には白銀に輝く大剣が握られ、ゆったりと下段に構えている。


 少女の背にかばわれているのは傷を負った赤髪の少女だった。年の頃はセーラー服の少女よりも数歳下、というところだろうか。足から血を流し、痛みに(あえ)いでいるのが見て取れる。


 周囲には崩れた土砂と岩石。そのあちこちに、全身を金属鎧で固めた戦士たちがいた。しかし、彼らももはや満身創痍(まんしんそうい)で地に伏している。この場に立っているのは、異形の怪物とセーラー服の少女、たったそれだけだった。


 怪物の口から呼吸音が漏れている。口が二重にあるためか、不規則で、耳にするだけで身が汚れる醜怪(しゅうかい)極まる音だった。


 一方で、対峙する少女は規則正しく息をついている。暴風の中でも(りん)と立つ、1本の若木の如く。


 どれだけの間、この静かな対峙が続いただろうか。どこかで瓦礫(がれき)が崩れ、がらりと音を立てる。


 ――ゴガァァァァアアア!!!!


 それが合図だったと言わんばかりに、怪物が少女へと突進する。矢のような、という表現でも足りない。常人の目では突然姿を消したかに見える圧倒的な速度であった。


 少女も怪物に向かって駆け出す。己の上背(うわぜい)さえ越える刃渡りの大剣の切っ先を地に擦るようにして。


 そして、怪物と少女が交差した。


 互いに背を向け合いながら、時が止まったかのように動かない。一呼吸、二呼吸……やがて、元より不規則だった怪物の呼吸音がさらに乱れる。


 怪物の身体が胴から両断され、どう、と崩れ落ちた。


 セーラー服の少女が振り返り、その黒く濡れたような前髪をかきあげる。その表情は怪物と対峙していたときと一切変わらず、涼やかなままであった。


 * * *


「うわー、つっかれたー。でもこれなら絶対バズるっしょ」


 暗い部屋でディスプレイに向かい、少女が戦う動画の編集作業を終えた女が首をコキコキと鳴らし、両手を突き上げて背筋を伸ばした。


 服装は上下ともにだるっだるのスウェットで、伸び切った襟元からは谷間が見える。そう、この女は巨乳を通り越して爆乳であった。


「で、これをアップして……っと。こんだけがんばったんだからなー、問い合わせがあるといいなー」


 独り言をつぶやきながら、鏡の前で金色の長髪を手櫛でなでつける。


「さて、今日の日替わりは何かな。おなかすいたー」


 金髪の女は、だるっだるのスウェットのまま、玄関を出て近所の居酒屋に向かったのだった。


挿絵(By みてみん)

 このプロローグは2021/7/20に追加したものです。

 それ以前に本作を読みはじめた方は、読まなくても本編の理解に支障はありません。

 が、「閑話3」まで読んでくれた方なら、にやりとしていただけると思います。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 動画かーいってなりました!ww
2022/02/22 17:42 退会済み
管理
[良い点] 応募ありがとうございます!第4話まで読まさせて頂きました。第1話から率直に面白いと感じました。特に主人公?の設定が妙に細かかったり、巨乳に対する主人公の反応など細かな所にちょっとした工夫が…
感想一覧
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