八章 「光の剣」
次回より、本格的な物語のスタートです。
光属性。
闇属性と対を成すその属性を扱える者は少ない。
その力はすさまじく、最強の称号を得ている。
ギンは、九歳の時に光属性を使えるようになった。グリンはその時、ギンの才能を改めて実感したのだ。
しかし、グリンはそれを封印し、命の危険が迫った時以外は使用禁止とした。
それほどに、光属性の力はすごいのだ。
「光だあ?お前にそんな物が使えるわけ無いだろ。」
ホムラは楽観的だ。
「気をつけた方がいいでやんすよ。ギンさんの光属性、加減が効かないからなあ。」
トビマルの忠告にも、聞く耳持たずだ。
「ダメです、ギン様!それを使ったら・・・!」
クルルは、ギンが光属性を使うのを止めようとしている。
「大丈夫でやんすよ、クルルさん。ギンさんはあの時とは違う。」
ギンの周囲に、まばゆい光が発生する。
「俺が光をまとわせてられるのは一分が限界だ。ちゃっちゃと終わらせてもらうっすよ。」
ギンの魔法剣が光に包まれる。
剣は徐々に形を失っていく。
まるで、剣が光になるようだ。
光が剣を形作っていく。
「コイツが俺の、光属性だあ!」
ギンが剣を素振りする。
光はまるで光線のようにホムラに向かっていった。
「ぶった切る!」
ホムラは、カタナに炎をまとわせ、光を切り裂く。
しかし、光はカタナをすり抜ける。
「光は生物のみにダメージを与えるんすよ。」
光はホムラの身体に突き刺さる。
「がっがっがああ!」
ホムラは苦しそうに叫んだ。
ギンの姿は消えている。
ホムラは周囲を見渡すが、ギンの姿はどこにも無かった。
「どこへ消えた!」
ホムラのカタナはメラメラ燃え盛っている。
いつでもギンを殺す事が出来るように。
「戦闘の間に敵を見失うなんて・・・甘いでやんすねえ。」
トビマルは上空をちらりと見つめた。
ホムラも慌てて上を向く。
そこには、ギンの姿。
光の剣は、先程とは比べ物にならないほど巨大化している。
全長三メートルはあるだろうか。
「太陽の光を吸って、大きくなったっすよ!」
ホムラは大きく口を開け、呆然としている。
光の剣は、ホムラを斬った(というより、叩き潰した)。
ホムラは、地面にゆっくりと倒れ、気を失った。
「・・・勝ったっす。」
ギンはドラゴン、デビルゴブリンとの連戦の後。
ただでさえ、弱っている状態に、光属性の剣を使用したのだ。
肉体的な疲労はすさまじいものだ。
地面に寝転び、そのまま熟睡してしまった。
その姿を見て、トビマルとクルルは微笑んだのであった。
「はい。ギン様ですね。届けは受理致しました。」
役所の係員は、書類にハンコを押した。
(これで・・・やっと魔法道場が作れるんすね。)
ギンの口元は自然と緩んだ。
「それでは、10分程後に、係の者が道場まで案内致しますので、少々お待ちください。」
二人と一羽は、椅子に腰掛けてしばらく待つことにした。
ギンは、すっかり疲れがとれている。
恐らく、クルルが回復魔法で疲れを癒してくれたのだろう。
前方に、つまらなそうな顔をして歩いているホムラを発見した。
「残念だったっすねえ、ホムラ。」
ギンはホムラの所まで駆け寄る。
「てめえさえいなければ・・・、俺は何の問題も無く魔法道場を作れたんだ・・・。」
「見苦しいっすよ。お前は勝負に負けたんだ。」
ホムラはタバコをくわえる。
炎属性の魔法により、自然に火がついた。
「いつか・・・絶対に仕返ししてやる・・・覚えてやがれ。」
ホムラは去っていった。
ギンは、やれやれとため息をつく。
「ギン様。準備が整いましたので、ついて来てください。」
その道場は、広かった。
リビングや大きな浴室、キッチンまで用意されている。
庭も広く、池の中ではコイが数匹泳いでいた。
倉庫の中には、たくさんの魔法に関する書物や、道具が置かれている。
「こんなに凄い物件が無償で提供されるんですか?」クルルは驚きの声をあげる。
「ええ。もちろんです。昨今は凶悪な犯罪やモンスターが増えています。それの対抗手段となる魔法を育ててくれるのが魔法道場なわけですからね。」
ギンは、表札に「サタムーン」と書かれているのに気がついた。
「前にここを使っていた人がいるんすか?」
「ええ。サタムーンさんです。優秀な魔法道場の師範だったのですが、国からのミッション中に門下生も含めて全員失踪してしまいまして・・・。」
ギンは背筋がぞっとした。
魔法の腕を上げるのは常に死と隣り合わせ。
何が起きてもおかしくはないのだ。
失踪したサタムーン達も、自らの魔法の実力を計るような軽い気持ちでミッションを受けたのだろう。
「いよいよ始まるんすね。」思わず呟く。
ギンの場合、破壊神を倒すために魔法道場を作るのだが、内心楽しみにもしていた。
「どこにも負けない最強の魔法道場を作るっすよ!」
少年の決意。
新たな物語が幕を開ける。
次回予告 魔法道場適性検査