表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/14

一章 「ギン」

この物語、救世の魔石と同じ世界という設定です。しかし、救世の魔石の舞台となっているアグレイト国とは距離が離れているため、魔石は登場しません。 また、時代も二十年ほどこちらの方が昔ですので、ゼルやルーナはまだ生まれていません。

ホーセント王国。

人口は六千万人ほど。

東には森、

西には砂漠、

南には湿原、

北には雪原が広がっており、とても自然豊かな国だ。

また、優れた魔法国家としても有名。

子供の五割は魔法学校に通っている。


魔法学校は十歳から十八歳までの八年間、魔法の勉強をする。

自分にあった属性を見つけて、成長させていく。

それがたまらなく楽しい。

ホーセント中央魔法学校では十八歳になった生徒達で卒業試験が行われている。

会場は体育館。

密閉された空間に何百という生徒が集まるのだから、冬だというのに暑い。


生徒番号八十二、ギンも問題と格闘していた。


科目は魔法戦術、魔法科学、実技試験の三つ。

それぞれ百点満点で、合計三百点。


筆記試験の二科目で百三十点は取らないと留年だ。

それだけは避けたいところ。


(難しい問題っすね〜。)

ギンは自慢の金髪を掻いた。


(ま・・・。俺の実力なら百八十はいけるかな。)


時計の音がするだけで、部屋は静か。

外からは鳥の鳴き声。


(この鳥・・・。何て名前だっけ。)

ギンはそんなことを考える余裕があった。


前に座っている生徒は一問も落とさないように何回も見直しをしている。

まだ、終了まで10分以上ある。


ギンは昔の事を思い出していた。


ギンがまだ八歳だった頃。

破壊された街。


自分の家が燃えているのをギンはただ呆然と見ていた。


救助隊によってやけ焦げた家から運び出された女性。

ギンの母、スピカ。


ギンは大声で泣いた。


「僕が・・・、僕が強ければ、母さんをアイツから守れたのに!」



「終了!」

試験官の声により、生徒達は一斉にペンを置く。


「午前はここまで!今から一時間後、合格していると見なされた者は、実技試験を受けてもらう。落第者は帰宅だ。」


試験官数名は全員の回答用紙を片手に部屋からでていった。


「なあ〜、お前出来たかあ?」

後ろの席に座っていたギンの友人・リオスが話し掛けてくる。


「ん〜。微妙っすね。魔法戦術はともかく、魔法科学の方は・・・。」


「お前、頭良いんだからそんな心配いらね〜だろ。俺なんてひどいもんだぜ。」

リオスは深いため息をついた。




午後は実技試験。

試験官と戦闘を行い、攻撃魔法を一発でも与えられたら終了。

かかった時間により得点が決定する。


ギンもリオスも無事実技試験まで進むことが出来た。

すぐにリオスの番が来た。「見てろよ!5分以内でクリアしてやる!」


リオスは試験官に連れられ部屋に入っていった。

(リオス・・・。アイツ大丈夫っすかねえ。)


ギンは試験室の僅かな隙間から覗き込んだ。


リオスの魔法は主に水属性の魔法。

本来、水を持っている状態か、水辺で使うことで真価を発揮する。

逆に言うと、このような試験に使うには向かない魔法だ。

リオスは空気中の僅かな水分を塊に変えて撃ち込むが、試験官は片手でそれを止めてしまう。

「どうした?威力が無いぞ。」


リオスの額には汗が流れていた。

(あ〜。アイツ、5分でクリアとか言ってたのにダメダメっすね〜。)


結局かかった時間は十二分。筆記試験の点と足して、何とか合格できたようだ。


リオスはフラフラと部屋から出てくる。

「おい、ギン!あの試験官なかなかやるぞ!手に防御の篭手をつけてやがる!」

防御の篭手。

その名の通り、簡単な魔法は全てそれでシャットアウト出来る。

(なるほど。リオスの魔法が手で防がれていたのもそれが原因か。)


「とにかく、俺は合格したからよ!これでお前ともお別れだ!」


「軍隊に入るんすよね。まあ、せいぜい頑張ってくれっす。」


試験官がギンの名前を呼ぶ。


部屋の中に入ると、試験官が中央に一人、はじに三人いた。

「ルールは分かっているな。俺に一撃でも与えられればそこで終了だ。」


ギンは頷く。

背中に背負っていたケースの中から、大きな剣を取り出した。


「魔法剣。なかなか珍しいな。属性は何を使える。」

魔法剣は剣に炎や雷、水などの魔法をまとわせることにより力を発揮する。

試験官が聞いているのは何をまとわせる事ができるのか、ということだ。


「え〜と。炎と雷と風と・・・、それから光もつかえるっす!」


試験官の額に汗が流れる。炎、雷、土の三つはともかく、光属性を使える人間はほとんどいない。

(コイツは天才か・・・。)

試験官は汗を拭う。

「四属性を使える上にその内の一つは光・・・。この学校にそんな人間がいるとは知らなかった。」



両者は指定された位置につく。



はじに座っていた試験官の「始め!」の声でギンは動いた。


剣に炎が発生する。

しかし、試験官はそれを片手で受け止めた。

(防御の篭手・・・!)


ギンは炎は向かないと判断して、魔法の属性を変えた。


風が吹く。

試験官の身体が吹き飛んだ。


ギンはすでに、剣をケースにしまっている。


(風属性の剣により、移動速度を上げたのか!コイツ、出来る!)


かかった時間は四十二秒。当然、合格だ。



ギンは卒業証書を受け取り、建物から出た。



髭をはやした黒髪の男性が立っている。

年齢は四十歳ほど、長身でサングラスをかけている。

「・・・合格したのか。」

男は低い声で喋る。


「当たり前っすよ。俺はあんたの弟子なんだから、グリン。」


この男性はギンの師匠であるグリン。

母親を早くに亡くしたギンを引き取った父親のような存在である。


「・・・いよいよアイツを倒すのか。」

グリンはボソッと話す。


「ああ。明日にも行くよ。王都ガリアに。」


アイツ−。

ギンにとっては憎むべき存在。

母はアイツに殺された。












アイツを倒すために、魔法道場を開くんだ!


次回 旅立ちの前

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ