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九章 「魔法道場始動」

いよいよ、物語が本格的にスタートします。

さんさんと太陽の光が降り注ぐ。

春はもうすぐそこまで来ていた。


ポカポカと暖かい天気の中、ギンは魔法道場の準備を進めていた。


魔法道場の名前は、クルルやトビマルとよく話しあった。


その結果、ギンの名前から、「Silver Magic Training Hall」

略して「SMTH」と名付けられた。


今日は第一回目の門下生募集の日。

道場に入りたいという志望者を、自分の道場に相応しいかどうか判断するのだ。

ギンは二階の寝室にいた。

トビマルはビラ配りのために、連日王都を飛び回ってくれた。

その疲れが出たのか、今は爆睡していた。


師範、つまりギンの挨拶まであと30分程。

恐らく、入門志望者達は集まり始めていることだろう。

最近、魔法道場は星の数ほどたくさん出来ているので、一人も来ていないということも有り得るが。


クルルが階段を上ってくる足音が聞こえる。

入門志望者の対応はクルルが行ってくれていた。

恐らく、ギンを呼びに来たのだろう。


扉が開き、 クルルが部屋の中に入ってきた。


「ギン様。そろそろ時間ですよ。入門志望者の方々は応接間に集めておきました。」


「そっすか。それで何人来てたっすか?」


クルルは少し言うのをためらった。


「その・・・四人です。」


四人。

ギンが想像していたよりも多い。

こんな得体の知れない道場に、四人も来てくれたのはありがたいくらいだった。

「さて・・・。クルルは休んでていいっすよ。俺は挨拶に行ってくるから。」


クルルは頷いた。


「何か、面白そうでやんすねえ。あっしもついていくでやんすよ。」

いつの間に目を覚ましたのか、トビマルはギンの肩に乗っていた。


一階、応接間前の扉。


「この中に、入門志望者達がいるわけか・・・。」


ギンは緊張を隠せなかった。


恐る恐る、扉を少しだけ開き中を覗きむ。


「・・・は?」


ギンは思わず声を出してしまった。


一番最初にギンの目に映ったのは人間ではなかった。

鋭い爪に牙。

毛に覆われた身体。

紅く輝く瞳。


背丈はニメートルほどあるであろうか。


顔は狼。


身体は人間に近いが、毛が生えている。

人間と狼のハーフ、といった感じだった。


(何すか!アイツ!もはや人間じゃないっすよ。)

ギンはトビマルに囁いた。

(何事も見かけで判断するのは良くないでやんすよ。あっしだって、カラスだけど人間の言葉が話せる。あれは、恐らく悪魔の一族でやんすが。)


悪魔の一族。

ギンはそれを聞いて血の気が引いた。


悪魔の一撃は、数百年前にアグレイトという国の保有していた兵器が暴走し、世界中の人々が死んだ時に現れた一族である。

こことは違う異世界に生息していたのだが、時空間を越えて大量にこちらの世界に現れた。

全員が全員というわけでは無いのだが、血肉を好み横暴な振る舞いが多く、人間からは嫌われている。


今では大分格差が無くなっているが、一昔前までは世界中で悪魔の一族を差別化する政策がとられていた。

(ギンさん。彼らはあれで中々辛い一族なんでやんすよ。)

トビマルはしみじみとそう言った。


ギンは気を取り直して、他の三人に目をやる。


一番右に座っているのは十歳くらいの小柄な少年。

ボロボロの服を着ている。手は、マメだらけだ。

黒くボサボサな髪に黒い瞳。

狼の男の方をちらちら見ながら、怯えている。

気はあまり強く無さそうだ。


その隣に座っているのは二十歳くらいの男性。

タバコをふかしながら、用意されていたお茶菓子を口に運んでいる。

右目には龍の絵が描かれた眼帯。

眼帯では隠しきれずに、傷跡がはっきりと見えた。

金髪の髪に、黒い瞳。

はたして、どんな魔法を使えるのであろうか。


その隣、狼の男の左に座っているギンとそう年齢の変わらない少年。

黒髪に青い瞳で眼鏡をかけており、魔法に関する書物を一心不乱に読んでいる。見た目通りに、勉強熱心なのだろうか。

肩には大きなケースをかけていた。

(あの形状からして・・・魔法ヤリっすかねえ。初めてみたっす。)


魔法ヤリ。

分類的には魔法剣と同じだが、戦法などは全く違う。

突くことに特化しており、その大半は雷属性か炎属性だ。習得するのは中々難しいはずなのだが、この若さで扱えるということは相当な実力者なのだろう。


(・・・この四人が、今回の入門志望者ってことっすか。)


中々、個性的なメンバーだ。

一部、個性が強すぎるのもいるが。


(そろそろ、入っていった方がいいでやんすよ。ギンさん。)


ギンは覚悟を決めて、応接間の扉に手をかけた。

そして、開く。


四人の視線が一斉に集中した。

人前に立って何かを話すような経験をしたことがないギンにとっては、これだけのことでも緊張してしまう。


「え・・・えーと、今日は集まって頂き、ありがとうっす。俺がここの師範を勤めさせて頂く、ギンと申しますっす。」


狼の男は深々とお辞儀をする。

黒髪の少年は相変わらずびくびくしている。

眼帯の男性は、お茶菓子を食べることに集中しすぎていて、ギンの言葉など耳に入っていないようだ。

眼鏡の少年は、ギンを見ながら「中々・・・。」と呟いた。


ギンには一体何が「中々・・・。」なのか理解が出来なかった。


「えーと、早速っすが、面接を始めようと思うっす。」


ギンの魔法道場、「SMTH」は始動した。


次回予告 面接

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