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美味しい信仰心


『中も確認するかい』


「無理無理、食べられちゃうよ…!」


『いやいや、真白は神だよ』



蜘蛛人を見送って穴を覗きながら行きたそうな銀流を必死に止める。クモの巣に引っかかる未来しか見えない…!

そんな風に銀流とじゃれていると、後方の茂みががさりとなった。



そこには一人のエルフが立っていた。

青年で、背が高くて、耳が長い

彼は私達を見て固まるが、即座にその場に跪いた。


「大変申し訳ありませんでした!!我らの逸れた魔法でお怪我はなさいませんでしたでしょうか!!」


えーと…勘違いされてる?首を傾げると不意に身体が高揚した。

なんだろう、なんだか、とても……美味しい?


『我らも今ここに来たばかりだ。怪我はしてないから特に気にするな……真白?』


不思議な感覚は、目の前のエルフからしていた。

近づくと、より高揚して歓喜が身体にみちる。


そんな私に対して、エルフは顔を真っ赤にしてプルプルと震えていた。

手を伸ばせば届く、そんな位置まで近づき。更によろうとするとエルフはバット立ち上がって後ろに引いた。


「け、穢れた我が身で姫様に近づく訳にはまいりません!それ以上寄られるのは何卒ご容赦ください!」


だけど捕まえてその手を取る。

するとぶわっと身体中がゾクゾクするほど神気が充ちて行った。


ああ、これ神気だ。という事は彼は私を信仰してくれているのだ。恐らくすっごい崇めてくれている。


『真白?どうした?』


すぐ後ろに銀流も来てくれて、エルフは今にも泣き出しそうになっていた。

そんな彼を見てにこにこと笑う。


「貴方の祈り?すごく美味しいの。貴方の名前は?」


「っ…、ベティです…」


「ベティ。私は真白だよ」


羽を震わせて、触覚揺らして。すごく美味しい信仰心のお返しに彼に祝福をさずける。

キラキラと光る鱗粉は彼に触れて、そのまま吸い込まれる用に消えていった。


「これからもその信仰心を大事にしてね」


そして少し背伸びをして耳の横の髪を撫でると、ベティは口を開けて硬直した。


あれ、喜んでくれないな。

首を傾げると後ろから羽ごと抱き寄せられた。

後ろを見上げると、銀流が人の姿になって私を捕獲していた。


「そこら辺にしといてやってください。神気に当てられますから」


「そうなの?」


「ええ。強すぎる神気に触れ続けるのは生き物にとっては毒にも等しいです」


「そうなの。ごめんねベティ」


「いっ、いえいえいえいえいえいえ!」


引かれるまま身を離すと、ベティは今度は首振り人形のように首を横に振りまくった。

どうしよう、もう壊れちゃったのかな。


「我が名は銀流だ。そうだ、ついでにお前。我らの名を他の種族どもにも教えてこい」


「マァシロ様にグンリュー様ですね!分かりました!」


壊れたベティは今度は縦に何回も振ると魔法まで使って飛んで去っていった。


マァシロ

グンリュー



グンリュー。


しばしぽかんとしてから急激に笑いが込み上げる。


「グンリューだって、銀流」


斜め上後ろを笑いながら見上げると、銀流はしっぶいかおをしていた。不本意と言う気持ちがめちゃくちゃ滲み出している。


「我らの言葉は発音しにくいのでしょう」


「私もグンリューって呼ぼうか?」


「やめてください」


楽しくて笑っていると、そのまま脇に手を差し込まれてひょっと持ち上げられてゆさゆさと揺すられる。

強制的に揺られて鱗粉を撒き散らしつつも、楽しくて仕方なくって私は笑いじゃくり。渋い顔をしていた銀流もやがて後ろで笑う気配を感じた。



余談だがその光景を隠れみていた者により、よりによって後ろ高い高いでじゃれる二柱の絵が宗教画として長く飾られていくことになり。


それを知ったとき銀流と二人で渋い顔になった。


「次はどこへ行きますか?」


「どこでも。私の活動範囲の外を見てみたいな」


「真白の活動範囲って住処の木とその下だけじゃないですか」


「最近気づいたんだけどね。術で動くの歩くのより効率が悪い気がするの」


「当たり前でしょう。普通は歩く方が楽なんですよ。真白は歩くのもぷるぷるしてて…可愛いですけど」


あ、今バカにされた。

身体をよじって降りて銀流の腹部を叩く。


「え、今の攻撃ですか?蛾が留まったのかと…留まったんですね」


「なんだと」


バランスが上手く取れないので体重をかけて手で寄りかかる意味合いも持って攻撃をするが銀流は楽しそうに笑うばかりで全く効いた様子もない。


むくれてプンプン怒っていると、サッと銀流がまた牛サイズの狐になってしゃがんだ。


『ほら乗って。一緒にあちこちを見るんでしょう?』


「うん」


ふわふわの毛並みに触れれば怒りはすっと消えて、一度抱きついてから尻尾に手伝って貰って上に乗る。




さあ、次はどこに行こうか。






惨劇は突然だった。


飢えた盗賊が、俺がいない間に村を襲ったのだ。


全滅だった。大人も子供も赤子も。


食料も命も全て失われて、家には火をつけられて。思い出も何もかも奪われてその場に崩れ落ちた。


「ターシャ!しっかろしろ!」


「…無理だろ」


なんで。



何故神は、人を救わないのか。

結界内に食料は潤沢にあるではないか!!!

人に分け与えてやればいいのに、何故人を拒むのか!!


結界が無ければ。

神がいなければ、みんな平和に暮らせるのに。


慟哭をあげた瞬間、身体にとてつもない魔力が迸るのがわかった。


「ターシャ…お前その髪…」


親友に言われて気づく。俺の髪のひと房に白と赤い…族長の証が現れていた。


ああ、親父も崩御したのか。


全部、全部失った。


今この時、力を失ったのはきっと天命だ。




邪悪な神を滅ぼせと。







狭い小さな世界しか知らぬ愚者は、狭い世界で感じた絶望のまま動き出す。


神より頂いた力で、神を殺すために。

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